2013.11.19
改めて、京成線から消滅した飛行機マークを追悼する。

都営5300形 5312編成
2001.8.23/高砂〜小岩
京急線羽田空港駅開業に伴う1998年11月ダイヤ改正は、都営浅草線をはじめとするいわゆる四直にとってとても大きな出来事だった。羽田空港と成田空港を結ぶ空港間直通特急の運転開始と、それに伴う都営浅草線内での通過運転開始。種別における飛行機マークの使用はここから始まった。京成としても空港間直通特急の一端を担うことから「(飛)特急」の種別を新設1)し、京成線内で飛行機マークの使用が開始された。それから15年が経ち、2013年10月ダイヤ修正にて京成線内での飛行機マークは使用取りやめで終焉となったわけだが、ここではその15年の京成における飛行機マークの変遷について簡単に辿ってみよう。
(注)本稿では飛行機マークを(飛)と表記している。
1998年11月18日ダイヤ改正
前述のように、本ダイヤ改正は京急線羽田空港駅開業に伴うものである。現在も京急と都営で使用されている飛行機マークが登場したという点において、四直的には歴史に残るであろう大きなダイヤ改正であった。京成としても従来の「特急」とは別に飛行機マークの付いた「(飛)特急」の種別を新設し、京成線内を飛行機マーク付き種別の列車が走るようになった。この時のダイヤにおいて、飛行機マークのない従来の「特急」と飛行機マークの付いた「(飛)特急」の使い分けは次のようであった。
- 羽田空港〜成田空港間の空港間直通特急は「(飛)特急」として運転(4往復、都営浅草線内エアポート快速特急)。
- 上野〜成田空港間の本線特急も「(飛)特急」として運転。
- 青砥で京成本線「(飛)特急」に接続する羽田空港〜青砥および高砂間の特急も「(飛)特急」として運転(都営浅草線内エアポート特急)。
- 青砥で空港間直通特急に接続する上野〜高砂間の区間特急も「(飛)特急」として運転。
- 上記以外は「特急」として運転。
基本的には日中時間帯に運転される成田空港発着の特急、およびそれに接続する区間特急が「(飛)特急」として運転されるようになった。羽田空港〜成田空港の空港間連絡特急だけでなく、上野〜成田空港を走る京成本線の特急も「(飛)特急」としたのが特徴である。本線特急はそのほとんどが成田空港発着であるため、結果的に日中時間帯における本線特急のほぼ全てが「(飛)特急」として走ることとなった。日中時間帯の上り本線特急も「(飛)特急上野行」として走るようになり、従来や今では当たり前のように走っている飛行機マークの無い「特急上野行」が、逆に平日2本のみの珍列車となってしまったことは特筆に値する2)。
一方、成田空港発着の特急でもラッシュ時間帯に運転される都営浅草線直通の列車は「(飛)特急」としなかったため、上野行と同じく「(飛)特急成田空港行」と「特急成田空港行」の飛行機マークありなしで2種類の列車が走ることになり、乗客にとってはいまいちピンとこない部分もあった。飛行機マークの純粋な意味を考えれば、上野行はともかくとして、成田空港行については全ての特急に対して飛行機マークを付けてもよかったように思われる。

京成3600形 3688編成
2001.7.16/ユーカリが丘〜うすい

京成3200形 3256編成
2002.8.8/上 野
2002年10月16日ダイヤ改正
1998年11月ダイヤ改正で華々しく登場した空港間直通特急だが、利用が芳しくなかったのか、はたまた車両運用の効率が悪かったのか、理由は様々あろうが、京成側で運行系統を整理することになり、消滅してしまった。日中時間帯における京成線からの羽田空港直通列車は、このダイヤ改正で新設した「快速」および「(飛)快速」が担うこととし、主に成田発着になった3)。「(飛)特急」の種別も、空港間直通特急ともども消滅となった。
飛行機マーク付きの「(飛)快速」は、押上から都営浅草線内エアポート快特となる上り快速のみが「(飛)快速」として走るという、非常にシンプルなルールになった。京成線内の飛行機マークの有無により、都営浅草線内で通過運転するかどうかが判断できるという仕組みである。エアポート快特は40分毎の運転のため、日中時間帯は「快速羽田空港行」と「(飛)快速羽田空港行」が20分おきに交互に走るということになった。しかし、京成にも成田空港という空港駅がありながら、種別上の飛行機マークは事実上羽田空港のための存在となっていたことは、やや腑に落ちない感じであった。

京成3500形 3532編成
2008.5.20/実籾〜八千代台
余談ながら、2002年10月ダイヤ改正時点の日中下り快速においては、京急の"意地"で空港間直通特急の名残として成田空港行が4本設定されていたのが面白かった。京急線内だけで見れば4本が設定されていたエアポート快特成田空港行は消滅していないというカラクリである。後年に作成される「成田空港方面佐倉」というわけのわからない方向幕と合わせて見るにつけ、京急としては羽田空港からの成田空港直通を強く意識していたものとみられる。このあと、空港間直通特急は2010年7月ダイヤ改正で成田スカイアクセス線経由として復活するわけだが、京急本当によかったねという感じである。
2010年7月17日ダイヤ改正
成田スカイアクセス線開業に伴う2010年7月のダイヤ改正では、日中時間帯における京成線からの羽田空港直通列車は同改正で新設された「アクセス特急」が担うことになった。日中時間帯のアクセス特急は押上から都営浅草線内エアポート快特となることから、「(飛)快速」の原理と同じように「(飛)アクセス特急」の飛行機マーク付き種別も合わせて新設された。2002年10月ダイヤ改正で消滅した空港間直通特急が成田スカイアクセス線経由で復活ということでもあるのだが、飛行機マークの使用は引き続き上り列車のみが対象となっている。

京急600形 602編成
2012.7.28/立石〜青砥
一方で「(飛)快速」は消滅かと思われたが、早朝に1本だけ押上から都営浅草線内エアポート快特となる快速が残ったため、この1本の列車のためだけに「(飛)快速」の種別は残存することとなった。
2013年10月26日ダイヤ修正
既報の通り、このダイヤ修正をもって京成における飛行機マーク付き種別は使用取り止めとなっている。15年にわたり使用されてきた京成線内の飛行機マークは終焉となった。
- 1)京成線内では飛行機マークは飾りでしかない(都営・京急のように「エアポート」と読まない)ので、「(飛)特急」の読みは「とっきゅう」である。同様に「(飛)快速」「(飛)アクセス特急」は「かいそく」「あくせすとっきゅう」。
- 2)この2本の列車は成田始発の特急だったため飛行機マークが付かなかった。
- 3)この運行系統は2006年12月ダイヤ改正より佐倉発着に短縮されている。
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