KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2015.04.15

半ば恒例化してきた海外の交通事情シリーズ、今回はタイの首都バンコクである。2月のある数日間、バンコクとその周辺を訪れたので、備忘録も兼ねてあれこれ記したいおきたいと思う。

X54007.jpg

バンコクBTS
2015.2.15/ชิดลม

▲バンコク名物の渋滞を横目に高架を行くBTS
BTS(スカイトレイン)

バンコクの都市鉄道と言えば、まずはBTSであろう。バンコクの中心部を走る高架鉄道である。1999年に最初の区間が開業したBTSはその後も運行区間の延伸を続け、バンコクの都市内における輸送の根幹を担っている。都市の中のビルの合間を縫って走る姿は、バンコクに行ったことがなくとも写真や映像等で見かける機会も多いと思われる。王宮や寺院などの観光地に行くにはちょっと不便だが、都心部の繁華街を結んでいることもあって、今回のバンコク滞在では一番お世話になった乗りものであった。現在、スクンビット線とシーロム線という2路線が営業運転を行っており、2路線が接続するサイアム駅周辺は巨大なショッピングモールが集積するバンコク随一の繁華街になっている。スカイトレインとも言われているようだが、道路の直上に建設された高々架を走るBTSは確かに空中を行き交っているように見えて、なるほど言い得て妙だなと思った。

車両は、ドイツのシーメンス製のものと中国の長春軌道客車というメーカー製の2種類が走っている。いずれも4両編成で、車両運用は見た感じ共通のようである。シーメンス製車両はメルセデス・ベンツが、中国製車両はポルシェがデザインを担当しているとのことで、それぞれなかなかにカッコイイ。白地に赤と青の車体は、いわずもがなタイの国旗をモチーフにしたものである。都市の中を走るBTSもまた都市の景観をつくる一要素として、デザインにも力が入っているということがうかがえる。これには同じく都市の中の高々架を走るのに予算の都合でタダの箱のような乗り物になった日暮里舎人ライナーに、BTSの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぞ・・・。

X54004.jpg

バンコクBTS
2015.2.15/หมอชิต

▲メルセデス・ベンツによるデザインのシーメンス製の車両
D23951.jpg

バンコクBTS
2015.2.15/สยาม〜ราชดำริ

▲サイアム付近の2層高架を行くJR東日本のラッピング電車
D23942.jpg

サイアム駅 2階ホーム
2015.2.15/**

▲乗換駅であるサイアム駅のホーム様子。スクンビット線とシーロム線が対面で乗換えられる便利な構造

BTSの高架ホームは、高架であるということに加えて、壁がほとんど無いためにとても開放的である。最も寒い時期の平均気温ですら25℃という熱帯ならではの構造だが、スコールの時はちょっと大変そう。ホームドアは設置されている駅とそうでない駅が混在していたので、現在進行形で設置が進んでいるものと思われる。それにしても、駅や車両に広告だらけなのが東南アジアの都市鉄道ならではだ。日本企業も積極的に広告を出稿していて、JR東日本によるラッピング電車が走ってるほか、タイで流行っているらしいドラえもんがやたら目についた。

運賃は距離制を採用しており、路線図に書かれた運賃分のきっぷを券売機で買って、自動改札を通ってホームへ上がるという、要は日本とほとんど変わらないシステム。券売機できっぷを買うよりも割引な運賃が適用されるラビットカードというIC乗車券も存在している1)。130バーツの1日乗車券もあるが、初乗り運賃が15バーツで最も長い距離を乗っても52バーツであることを踏まえると、これはけっこう頑張って乗らないと元が取れなさそう。ちなみに15バーツは日本円で55円くらい(2015年4月現在)だから、日本の公共交通と比較すると運賃はだいぶ安いと言える。このほか、30-Day SmartPassという30日間有効の回数券のようなきっぷもあるようだが、さすがにこれは観光客とは無縁のものだろうと思う。

X54639.jpg

ラビットカード(大人用)

▲ウサギをデザインに用いたBTSのIC乗車券、ラビットカード。ちなみに、ラビットカードに付帯するポイントサービスの名称をキャロットポイントという。ウサギに人参、、、ネーミングのセンスが冴えてる!
  • 1)ただし、デポジットが50バーツであるほか、さらに発行手数料として50バーツとられるので、購入される場合はこれらを考慮されたい。

関連記事

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 2 - BTSスカイトレイン走行音篇

バンコクその2。BTSの走行音と、BTS以外の軌道系交通の紹介をば。BTSには2種類の車両が走っているのは前回の記事でご紹介したが、上の2つがSIEMENS製の車両、下の2つが中国製の車両の...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 2 - BTSスカイトレイン走行音篇
スペイン バルセロナ交通散歩 1 - バルセロナの交通あれこれ

当サイトとしては3本目の海外特集(?)である韓国ソウル篇が進んでいるが、並行してスペイン・バルセロナの様子も紹介したい。バルセロナはスペインの北東部、地中海に面する都市で、カタルーニャ州の州都で...

スペイン バルセロナ交通散歩 1 - バルセロナの交通あれこれ
韓国 ソウル首都圏の交通事情 1 - 韓国高速鉄道KTX@ソウル駅

3月のある数日間、お隣の国、韓国に行ってきたので。韓国の、特に首都ソウル周辺の交通事情について適当に記しておきたいと思う。ソウルの空の玄関口、仁川(インチョン)国際空港を降り立った私は。その足で...

韓国 ソウル首都圏の交通事情 1 - 韓国高速鉄道KTX@ソウル駅
中央ヨーロッパ交通見聞録 4 - ウィーン地下鉄

前回に続き、ウィーンの公共交通について見てみよう。今回は地下鉄を取り上げる。ウィーンの地下鉄はドイツ語圏のためメトロでもなくサブウェイでもなくU-Bahn(ウー・バーン)と呼ばれる。2010年...

中央ヨーロッパ交通見聞録 4 - ウィーン地下鉄
中央ヨーロッパ交通見聞録 1 - ブダペスト市電

当Webサイト始まって以来、初の海外篇。今月の中旬に所用と旅行を兼ねて中央ヨーロッパを訪れたので、現地で体験した中央ヨーロッパの交通事情を簡単にご紹介しよう。まず最初はハンガリーの首都ブダペスト...

中央ヨーロッパ交通見聞録 1 - ブダペスト市電

最新記事

2025.09.15

北総9200形 「北総線沿線活性化トレイン」運転(2025年)

北総線沿線の魅力がぎゅっと詰まった電車。北総鉄道では、7月中旬より「北総線沿線活性化トレイン」の運転を行っている。同企画は、北総線沿線地域の更なる活性化を資することを目的に、北総と沿線自治体...

北総9200形 「北総線沿線活性化トレイン」運転(2025年)

2025.09.10

京成線 まだまだ頑張る3600形

1982年に営業運転を開始した3600形。2016年度より廃車が始まり、現在では3668編成と3688編成の2編成を残すのみとなっているが、3668編成は2025年8月に、3688編成は...

京成線 まだまだ頑張る3600形

2025.09.05

京成AE形 「スカイライナーご利用6000万人記念」ヘッドマーク

祝、6000万人。京成電鉄では、7月末よりAE形AE6編成において「スカイライナーご利用6000万人記念」ヘッドマークの掲出を行っている。2010年7月の成田スカイアクセス線開業による新型...

京成AE形 「スカイライナーご利用6000万人記念」ヘッドマーク

2025.08.31

宇都宮ライトレール 2025年夏 その2

6月末に宇都宮に行く機会があったので、話題の路線、宇都宮ライトレールに乗ってみた。その2。6月末のある日、宇都宮ライトレールに乗ってみた。宇都宮駅東口から終点の芳賀・高根沢工業団地まで単純に...

宇都宮ライトレール 2025年夏 その2

2025.08.26

宇都宮ライトレール 2025年夏

6月末に宇都宮に行く機会があったので、話題の路線、宇都宮ライトレールに乗ってみた。人口減少下の時代に突入した本邦にあって、国内の鉄道事情と言えばやれ減便だの廃線だの何かと暗い話題が先行している...

宇都宮ライトレール 2025年夏