KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2015.12.10

タイ国鉄その3。前回前々回は華やかな本線系の様子を取り上げたが、それとは別にメークロン線というローカル線に乗ってきたので、こちらもご紹介しよう。

D23477.jpg

タイ国鉄 ウォンウィエン・ヤイ駅
2015.2.13/**

▲早朝のバンコク=ウォンウィエン・ヤイ駅
タイ国鉄メークロン線

タイ国鉄メークロン線は、バンコクとメークロンを結ぶ路線である。バンコクより西へ60kmほどのびるローカル線で、フアランポーン駅を発着する本線系と線路の接続が一切ない独立した線区となっている。路線は途中のマハーチャイ〜バーンレーム間で大きな川によって分断されており、バンコク〜マハーチャイとバーンレーム〜メークロンという2つの区間でそれぞれ列車が走っている。このうち、バンコク側を特にマハーチャイ線と呼ぶこともあるようだ。

バンコク側のターミナルはチャオプラヤ川の西側にあるウォンウィエン・ヤイ駅。どうにもウェーイ系な駅名だが、タイ語で大きな円という意味らしい。駅の近くにタークシン大王1)の立派な像の立つ大きなロータリー(ラウンドアバウト)があるが、ウォンウィエン・ヤイとはそれのことのようである。かつてはチャオプラヤ川により近いクローンサーンというところまで線路がのびていたそうだが、バンコク都内の道路交通事情の悪化により1960年代に廃止され、現在のウォンウィエン・ヤイを起点とした運行形態になっている。

メークロン線のうち、マハーチャイ線側はバンコクの近郊輸送を担っているということでそれなりに列車本数も多いのだが、メークロン側の運行は1日に3往復だけという、ドのつくほどのローカルっぷり。そんなわけで行程はメークロン側の列車に合わせて組まざるを得ず、ウォンウィエン・ヤイ駅6時25分発の列車に乗ることになった。

D23498.jpg

タイ国鉄メークロン線 時刻表
2015.2.13/**

▲2015年2月現在のメークロン線の時刻表。左側の時刻がマハーチャイ線で、列車はそれなりの本数が走っていることがわかる。右側がメークロン側の時刻。4往復分の時刻が出ているが、実際には3往復の運行に改正されており、最新の情報に更新されていない。しっかりしてくれ〜
早朝のウォンウィエン・ヤイ駅

BTSのウォンウィエン・ヤイ駅から歩くこと十数分、大通りから路地を少し入ったところにマハーチャイ線のウォンウィエン・ヤイ駅はあった。注意していないと気づかずに通り過ぎてしまうんじゃないかという佇まいである。駅は中間駅だった名残で1面1線。終着駅としては小規模だが、ホームには露店が立ち並んでいて独特な雰囲気を醸し出している。

駅は周辺の街と同化していて、駅という感じがしない。駅そのものがただの路地となっているかのようである。この時期の朝6時のバンコクはまだ空が明るくなりきっていないが、街はすでに起きていて、人々はそれぞれ1日の活動をスタートさせている。こんな朝っぱらからメシ屋が営業していたりするが、タイの人はあまり自分で料理をしないらしいので、朝ごはんはこういうところで済ませているのだろう。

列車が来るまで適当に駅構内をうろついてると、早朝のタイならではの光景を見ることができた。人々が次々に僧侶に食料を寄付をしている。なるほど、これが「地球の歩○方」に書いてあった托鉢2)ってやつ! 露店を覗くと僧侶に喜捨するためのお弁当セット(?)が売られていたりしていて、たいへん興味深い。タイの生の風景を垣間見ることができて、朝から得した気分になった。

X53719.jpg

タイ国鉄 ウォンウィエン・ヤイ駅
2015.2.13/**

▲そろそろ列車がやってくる頃合になり、人が集まってきた。空もだいぶ明るくなっている

そんなタイの風景を見ていると列車がやってきた。とりあえずマハーチャイまで1時間ほど乗車となる。

  • 1)1734〜1782。ビルマに占拠された当時の王都アユタヤを奪還したり、トンブリー王朝をつくったりしたスゴい人。
  • 2)一切の生産活動を禁じられている僧侶の世界では、食料は人々からの喜捨によってまかなわれているとのことで、僧侶は食料を集めるために鉢を持って早朝の街へ出るそうである。一方、僧侶でない人は寺院や僧侶に喜捨するなどの"徳を積む"ことがよい行いとされており、僧侶とそうでない人々との間でウィンウィンな関係がつくられている。

関連記事

タイ国鉄の旅 4 - マハーチャイ線の通勤列車

前回に引き続き、メークロン線に乗る。まずはマハーチャイ線区間のマハーチャイまで向かう。車両はTHN系と呼ばれる日本製のディーゼルカー。前面の表情や側面のコルゲートなど、日本で走っていてもあまり...

タイ国鉄の旅 4 - マハーチャイ線の通勤列車
タイ国鉄の旅 2 - 特急"スプリンター"9レに乗る

タイ国鉄の旅、前回はフワランポーン駅の様子を紹介したが、フワランポーン駅に来たのは他でもない、列車に乗るためである。アユタヤ王朝の遺跡群で有名な、古都アユタヤへ向かう。ボロの客車列車に後ろ髪を...

タイ国鉄の旅 2 - 特急
タイ国鉄の旅 1 - バンコク・フアランポーン駅の喧騒

バンコクの交通事情に引き続き、タイ国鉄のあれこれを取り上げていこう。まずはバンコクの中央駅、フアランポーン駅の様子をば。フアランポーン駅はタイ国鉄の主要幹線、タイ北部最大の都市チェンマイに向かう...

タイ国鉄の旅 1 - バンコク・フアランポーン駅の喧騒
タイ 灼熱のバンコク交通見聞 6 - バンコクのバスあれこれ2

バンコクの交通見聞、前回に引き続き戦勝記念塔の大ロータリーにて撮影したバンコクのバスをご紹介。直営エアコンバス(ユーロ2バス) BMTA直営のエアコンバスである。1998年から2000年代初頭に...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 6 - バンコクのバスあれこれ2
タイ 灼熱のバンコク交通見聞 5 - バンコクのバスあれこれ

というわけで、バンコクでも適当にバスを撮ってみた。帰りの飛行機までの時間調整を兼ねてバンコクの交通における要所の1つ、戦勝記念塔(Victory Monument)の大ロータリーに行ってみた...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 5 - バンコクのバスあれこれ

最新記事

京急線 2022年11月の大幅ダイヤ改正を見る

京急線、約23年ぶりの大幅ダイヤ改正。京急線で2022年11月26日に実施されたダイヤ改正は、京急自ら「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」と表現するほど大きなものであった。その中でもとりわけ大きな内容...

京急線 2022年11月の大幅ダイヤ改正を見る
京成本線 実籾〜八千代台間の線形改良が完了

京成本線実籾〜八千代台間、実籾カーブの線形改良が完了。京成電鉄が進めている本線実籾〜八千代台間の線形改良工事に大きな動きが生じている。5月19日終電後から翌20日未明にかけて上り線の切り替え工事...

京成本線 実籾〜八千代台間の線形改良が完了
京成線 駅別乗降人員ランキング(2022年度)

2022年度の京成線の駅別乗降人員ランキング! 京成線の全69駅において、どの駅の利用が多いのか少ないのか。京成電鉄が毎年公表しているデータを基に、2022年度の駅別乗降人員をランキング形式で見て...

京成線 駅別乗降人員ランキング(2022年度)
京成電鉄「2023年度 鉄道事業設備投資計画」を読む

今年も大型連休が終わり、鉄道各社から設備投資計画が発表される季節がやってきた。京成電鉄でも18日に発表があったところなので、これを読んで今後の動きを探ってみよう。2023年度における鉄道事業の...

京成電鉄「2023年度 鉄道事業設備投資計画」を読む
ちばレインボーバス197号車 リゾートカラーの日野ブルーリボン

リゾートカラーのちばレインボーバスが登場。北総線沿線の印西市に本社を構えるちばレインボーバスは、自社導入の車両のほか、京成バスグループ各社からの経年の移籍車で営業を行っている。同社の移籍車に...

ちばレインボーバス197号車 リゾートカラーの日野ブルーリボン