KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2017.10.23

昨年の秋に訪れたバンコクで開通したばかりのMRTパープルライン1)に乗ってきてみたので、そこらへんのことをレポートしたいと思う。

X63075.jpg

バンコクMRT バープルラインの車両
2016.10.24/**

▲MRTパープルラインを走る車両。われらが日本の総合車両製作所製である。GKインダストリアルデザインによるデザインで非常にかっこよいのだが、高々架を走る上に全駅でホームドア完備かつホーム端に階段がある構造だもんで、車両の外観はこの程度しか撮れず(泣)

2016年8月6日に開通したパープルラインは、MRTとしてはブルーラインに次いで2つ目の路線となるものである。今回新しく開通したのはタオプーン~クロンバンパイ間の16駅20.9kmで、バンコクの縁から郊外方面に向かって走っていくような区間。そのため、路線のほとんどは実はバンコクではなく、バンコクの北西に隣接するノンタブリーというところを走る。路線の建設には日本のODAによる資金援助がなされているほか、日本の企業連合(丸紅、東芝、JR東日本)が車両を含めた鉄道システム一式を受注。日本が海外における鉄道システムを丸ごと納入するのは初めての事例になるそうだ。このように日本が大きく関わっているところがこの路線の見どころのひとつであろう。

前述のように車両も日本製で、JR東日本傘下の総合車両製作所が製造を担当。車体は総合車両製作所が得意とするステンレス製で、同社で展開している「sustina」ブランドの車両としては海外向けの第一号になった。バンコクの都市鉄道(BTS、MRT、ARL)でステンレスの車両が導入されるのは初めてで、運行開始間もないピカピカでギラギラのステンレス車がパープルラインの高々架を行く姿は何となくバンコクの都市交通における新時代の幕開けを感じさせる。車両の製造には鉄道車両のデザインでおなじみのGKインダストリアルデザインも参画しており、車体にその旨の表記(Designed by GK Industrial Design)が入る。

X63085.jpg

バンコクMRT パープルラインの車両
2016.10.24/**

▲先頭車両の乗務員室の上あたりにDesigned by GK Industrial Designの表記が見られる
X63065.jpg

バンコクMRT パープルラインの車両
2016.10.24/**

▲シンプルにまとめられたパープルラインの車内。アクセントになっている紫色の座席はFRP製。座席は片持ち式だが、テロ対策のため蹴込み部分がカバーが設けられている
X63067.jpg

バンコクMRT パープルラインの車両
2016.10.24/**

▲各ドア上のカモイ部にはパッとビジョンのような横長サイズのLCDが設置されており、写真のように路線図を表示する

車両はMc-T-Mcという3両編成2)で、全部で21本が在籍している。制御装置には東芝製のVVVFインバーター(1C2M×2群)が採用され、各Mc車に搭載。車両はいちおうE231系をベースにしているということだが、VVVFインバーターを始めとした走行に必要な機器類の配置も台車の形状も見た目も全然違うし、実車からするとE231系をベースにしたという話がにわかには信じられないくらいである。総合車両製作所によれば、E231系をベースにしながらも、車体のサイズがそもそもE231系より一回り大きい上に、現地の各種基準をクリアするための大幅な変更や新規設計部分もかなりあったようで、非常に苦労されたという。ここらへんは「sustina」の海外向けの第一号ならではの逸話になりそうだ。

片側4ドアのステンレス車両と書くと日本ではおなじみの仕様のように見えるが、車両の規格は現地で既に走っているBTSやMRTブルーラインのものに合わせたのか確かにやや大ぶりで、車内の空間は日本の通勤型車両よりも気持ち広めという印象。側扉は外吊り式で、見た目の印象も日本の通勤型車両とはだいぶ異なる。さらに、座席を含めていたるところにFRP製のパーツが多用されており、全体的に日本製という雰囲気はあまり感じられなかった。日本製なのに日本っぽくない、何とも不思議な車両である。

◆ ◆ ◆

パープルラインの開業から遅れること1年、2017年8月11日にブルーラインがバンスー駅からタオプーンまで1駅だけ延伸してパープルラインと接続するようになったが、私が訪れた2016年10月の時点ではブルーラインはバンスーまでで、パープルラインは孤立した路線であった。そんな状態のパープルラインでは、伝わってくるのはガラガラだとか閑古鳥が鳴いているだとかあまりよろしくない情報ばかり・・・。はたして本当にそうなのか? 私は真実を確かめるべく、バンスー駅からシャトルバスに乗ってパープルラインのタオプーン駅へ向かったのであった。

(つづく)

X63098.jpg

バンコクMRT 無料シャトルバス
2016.10.24/**

▲ブルーラインのバンスー駅からパープルラインのタオプーン駅で運行していた無料シャトルバス。運行はBMTAが担当しており、いすゞ製のユーロ2バスが使用されていた。無料シャトルバスはブルーラインがタオプーン駅まで延伸したことでその役割を終え、現在は運行を終了している
  • 1)パープルラインの正式名称はチャローン・ラチャタム線。ブルーラインはチャルーム・ラチャモンコン線。
  • 2)車両番号はタオプーン側より1000(奇数)-3000-1000(偶数)というふうに振られている(例:1001-3001-1002)が、この付番法則はブルーラインの車両と全く同じで、MRTとしてこれらをどのように管理しているのか謎。

関連記事

タイ バンコク交通見聞 2016年秋 3 - MRTパープルラインに乗る その2

昨年の秋に訪れたバンコクで開通したばかりのMRTパープルラインに乗ってきてみたので、そこらへんのことをレポートしたいと思う。後編。パープルラインのバンコク側の今のところの起点となっているタオプーン駅はブルーラインとの接続駅。パープルラインもブルーラインも地上区間はBTS...

タイ バンコク交通見聞 2016年秋 3 - MRTパープルラインに乗る その2
タイ バンコク交通見聞 2016年秋 1 - バンコク都バス モーチット2車庫

ちょうど1年前のことになってしまったのだが、タイに行ってきましたよっ。バンコクを中心にブラついてきたので、例によって備忘録的にあれこれ記していきたいと思う。さて、今回はバスネタから。前回の...

タイ バンコク交通見聞 2016年秋 1 - バンコク都バス モーチット2車庫
タイ 灼熱のバンコク交通見聞 6 - バンコクのバスあれこれ2

バンコクの交通見聞、前回に引き続き戦勝記念塔の大ロータリーにて撮影したバンコクのバスをご紹介。直営エアコンバス(ユーロ2バス) BMTA直営のエアコンバスである。1998年から2000年代初頭に...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 6 - バンコクのバスあれこれ2
タイ 灼熱のバンコク交通見聞 5 - バンコクのバスあれこれ

というわけで、バンコクでも適当にバスを撮ってみた。帰りの飛行機までの時間調整を兼ねてバンコクの交通における要所の1つ、戦勝記念塔(Victory Monument)の大ロータリーに行ってみた...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 5 - バンコクのバスあれこれ
タイ 灼熱のバンコク交通見聞 4 - バンコクの路線バスに乗る

というわけで、バンコクの路線バスに乗ってみよう。バンコクで最初に乗ったのは48番のバスであった。48番は、スクンヴィット通りからBTS2線が交わるサイアム駅を経由して、観光地として定番の...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 4 - バンコクの路線バスに乗る

海外の鉄道新線開業 海外