2019.03.06
東京都交通局、京成電鉄(芝山鉄道)、京急電鉄、北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)の様々な車両が入り乱れ、百花繚乱の直通運転を行なっている"四直"。その中でも、唯一無二の形態を持つ車両たちが我々をさらに楽しませてくれている。そんな「四直の異端車たち」を適当に紹介していこう。
栄えある(?)異端車その1は、都営5300形のラストナンバー、5327編成である。27編成が在籍していた5300形はどの編成もほぼほぼ同じように見えるけれど、5327編成だけはちょっと特別な存在。5300形の中でも、この5327編成だけが120km/h運転に対応した性能を持っている。ほかの5300形と何が違うのだろうか。
5327編成が製造されたのは1997年度のこと。1990年度にデビューした5300形は95年度までに26編成が出揃っていたが、5327編成の登場はそれから2年後のことであった。当時在籍していた5200形が6両編成2本から8両編成1本に組み換えられることになり、これに伴う車両不足分の補充として増備されたのが5327編成だった。
5327編成は前述の通り120km/h運転に対応した車両として製造されている。これは当時、京急線内の快速特急にて都営車の120km/h運転が検討されていたためということのよう。従来の5300形も120km/hを出すには出せたようだが、高速域の加速が悪いらしくスジに乗れる性能ではなかったのである。5327編成は主電動機の増強(従来の165kWから180kW)とこれに対応した制御装置を搭載し、従来の5300形の弱点を補う格好で120km/h運転に対応した。
実際に都営車の120km/h運転が実施されたかどうかは、その後の状況を見れば明らか。結果的に都営車の120km/h運転は見送られ、せっかくの5327編成も現在はほかの5300形とともに110km/hが運行上の最高速度である。なお、都営車の120km/h運転の実施を検討するにあたり、5327編成以外の5300形を120km/h運転対応に改修する計画もあったようである。この時に都営車の120km/h運転が実現していたならば、5300形がアクセス特急で成田スカイアクセス線を走る姿を見ることができていたかもしれない。
さて、ほかの5300形とは少し異なる足回りとなっている5327編成は、それがゆえの特徴を持っている。その特徴とは・・・うるせぇ!!!! ・・・いや、本当にうるさいのである。ただでさえやかましい5300形にあって、5327編成はそれに拍車をかけたやかましさ。特に、低速域の加減速時に発する爆音は、その音だけで「これは5327編成だな」と分かるほど。5300形はその独特な加減速音から"白い悪魔"などと称されることがあるが、5327編成はもはや大魔王である。
都営5300形5327-8 大久保→実籾
都営5300形5327-8 志津→ユーカリが丘
5300形では実現しなかった都営車の120km/h運転だが、後継となる5500形はしっかりと120km/h運転に対応しており、近い将来にも都営車の120km/h運転が現実のものになるとみられる。先が長くないであろう5327編成も120km/h運転を後輩に託すことで、安心して引退できるというものである。
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