KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2020.03.09

さようなら、新逗子行。

D33460.jpg

京急新1000形 1457編成+1465編成
2020.2.2/金沢八景

▲新1000形のエアポート急行新逗子行。新逗子の逗子・葉山への駅名変更で、新逗子行は間もなく見納めになろうとしている

3月14日に予定されている京急線の駅名変更まで残すところ1週間。駅名変更は羽田空港国際線ターミナル(→羽田空港第3ターミナル)と同国内線ターミナル(→同第1・第2ターミナル)、産業道路(→大師橋)、花月園前(→花月総持寺)、仲木戸(→京急東神奈川)、新逗子(→逗子・葉山)の6駅で実施されるが、中でも影響が大きいのは新逗子であろう。逗子線の終着駅である新逗子の駅名が変わることは、長らく走ってきた新逗子行が消えてしまうことを意味する1)。新逗子は京急線の中でも基本的な行先のひとつ。いつも見ていた光景が変わってしまうのは寂しいものだ。

新逗子行が登場したのは1985年3月のこと。昭和ヒトケタ台に開通した逗子線の歴史からすると比較的最近のように思われるが、これは新逗子がもともとあった京浜逗子と逗子海岸の2駅を統合してできた駅であるため。逗子海岸が終着駅だった頃は、シンプルに「逗子」という省略形の方向幕が使用されていた。そして「新逗子」になり、まもなく「逗子・葉山」になろうとしているわけだが、行先表示的には35年ぶりの変更ということになる。

京急車における行先表示器の「逗子・葉山」への対応は既に実施済のようで、方向幕とLEDともに「羽田空港」の行先表示に飛行機マークが追加されているのがその証。「逗子・葉山」表示は逗子線区間運転用(通称:逗子ローカル)の「新逗子⇔金沢八景」の代わりに入れられた模様で、運転台にそのことをうかがわせる注意書きのテプラが貼ってある2)。京成車の対応状況は既報のとおり。都営車や北総車も順次対応しているようである。

D33628.jpg

都営5300形 5320編成
2020.3.7/生 麦

▲都営車の新逗子行。こちらももちろん14日から逗子・葉山行になる。直通運転は便利だが、直通先の車両や施設においても駅名変更に対応しなければならないので大変だ
D19679.jpg

京成3700形3848編成&北総7500形7501編成
2013.11.2/馬込車両検修場

▲京成車はかつて臨時列車として、北総車は定期列車として逗子線への乗入れがあったことから、「新逗子」の行先表示を備える。両者とも現行ダイヤでは新逗子行の設定はないが、これらも順次「逗子・葉山」表示に改修されている

新駅名となる逗子・葉山だが、実質的には現駅名に葉山の名前が追加された格好になっている。逗子なのに葉山。このことについて、地元の住民にとって違和感があるなどとして一部のTV番組などで取り上げられる事態にもなった3)が、結局、特に大きなムーブメントは起きずにそのまま駅名変更を迎えることになる。

新駅名について、京急は「ブランド力のある逗子と葉山を合わせた駅名に変更することで、三浦半島の更なるイメージ向上と定住人口・交流人口増により、地域活性化を図る」と説明している4)。古くより葉山を沿線観光地として売り出し、近年では「葉山女子旅きっぷ」なる企画乗車券を発売するなどしている京急にとって、葉山を駅名に組み入れるのはまさに企業的戦略にほかならない。ましてや、新逗子は現行ダイヤにおいて羽田空港を発着するエアポート急行の終着駅でもある。葉山という聞いたことはあるけどどこにあるかよくわからなかった場所が、駅名として路線図や行先表示に明示されるのだから、広告的効果は計り知れないわけだ。

X78940.jpg

新逗子駅 駅名標
2020.3.7/**

▲まもなく見納めになる新逗子駅の駅名標
A12254.jpg

京急線 停車駅のご案内
2020.3.7/**

▲こちらもまもなく全取替えになるであろう停車駅案内。ここに葉山の文字が現れるのだから宣伝効果は絶大だ
X78977.jpg

京急川崎駅 反転フラップ式発車表示器
2020.3.7/**

▲京急川崎の反転フラップ式発車表示器で表示される新逗子行。京急線では最後のパタパタとなるが、駅名変更を無事に乗り越えられようである
  • 1)羽田空港国内線ターミナルも終着駅だが、こちらは「羽田空港」の表記を行先表示等に用いており、駅名が変わってもそのまま羽田空港行として運転される。
  • 2)テプラには「行先『新逗子⇔金沢八景』使用禁止」とある。「新逗子⇔金沢八景」を設定すると、「逗子・葉山」の表示が出てしまうので使用禁止になっているものとみられる。
  • 3)TBS『噂の!東京マガジン』2019年3月24日放送回など。
  • 4)2020年3月に4駅の駅名を変更します - 京急電鉄の2019年01月25日付プレスリリース

関連記事

京急線 こんにちは逗子・葉山行

こんにちは、逗子・葉山行(9ヶ月遅れ)。3月14日、京急電鉄では以下の6駅について駅名変更を実施した。京急によれば、大師橋、花月総持寺、京急東神奈川、逗子・葉山の4駅は沿線地域の活性化に繋げる...

京急線 こんにちは逗子・葉山行
京成3000形など 「逗子・葉山」駅名変更に伴う行先表示の改修

3月14日に予定されている京急線の駅名変更に伴い、京成3000形などで行先表示器の改修(ROM更新)が行なわれている。行先表示器の改修について、現時点で確認できている内容は以下のとおり。合わせて...

京成3000形など 「逗子・葉山」駅名変更に伴う行先表示の改修
京急線 座席指定サービス「ウィング・シート」に乗る - 考察編

京急線の座席指定サービス「ウィング・シート」に乗ってみた。京急線にて2019年10月ダイヤ改正で新設された、座席指定サービス「ウィング・シート」。サービス開始からもうすぐ3ヶ月が経とうとして...

京急線 座席指定サービス「ウィング・シート」に乗る - 考察編
京急線 座席指定サービス「ウィング・シート」に乗る - 乗車編

京急線の座席指定サービス「ウィング・シート」に乗ってみた。京急線にて2019年10月ダイヤ改正で新設された、座席指定サービス「ウィング・シート」。サービス開始からもうすぐ3ヶ月が経とうとして...

京急線 座席指定サービス「ウィング・シート」に乗る - 乗車編
京急2000形のエアポート急行

まだまだ頑張る京急2000形。早いもので、京急2000形に3ドア、ロングシートの車両が現れてからもうすぐ20年が経とうとしている。2000形の登場が1982〜87年、3ドア化+ロングシート化...

京急2000形のエアポート急行

最新記事

北総7300形 臨時特急「ほくそう春まつり号」運転(2024年)

今年も春がやってきた。4月21日、北総鉄道が主催する「ほくそう春まつり」の開催に合わせて臨時特急「ほくそう春まつり号」が運転された。昨年、京成本線の八千代台始発として5年ぶりに運転された当列車...

北総7300形 臨時特急「ほくそう春まつり号」運転(2024年)
千葉シーサイドバス路線図 2024年4月1日版

当Webサイトでは、2023年3月の「千葉シーサイドバス路線図 2023年3月1日版」と題する記事にて千葉シーサイドバスの路線図を公開していたところであるが、約1年ぶりに改訂版を発行する。千葉...

千葉シーサイドバス路線図 2024年4月1日版
京成グループ 車両の動き(2023年度)

京成グループにおける2023年度の車両の動きをまとめてみよう。まずは京成。ここ数年は列車無線のデジタル化に伴う予備車の存在や2度にわたる脱線事故の影響などでイレギュラーな車両の動きが続いていたが...

京成グループ 車両の動き(2023年度)
北総7500形 「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマーク

北総線開業45周年記念。北総鉄道では、3月上旬より7500形おいて「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマークの掲出を行っている。表題のとおり北総1期線(新鎌ヶ谷〜小室)の開業45周年を記念した...

北総7500形 「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマーク
タイ国鉄 フアランポーン駅の現在

クルンテープ・アピワット中央駅に続いて、かつての中央駅、フワランポーン駅も訪ねてみた。2023年1月にバンコクの中央駅の地位をクルンテープ・アピワット中央駅に譲ったフアランポーン駅。中央駅の移転...

タイ国鉄 フアランポーン駅の現在