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エトセトラ

2020.10.19

銚子電気鉄道に乗ってきた。

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銚子電鉄3000形 3001編成
2020.10.11/犬吠〜外川

▲2006年に導入された3000形は京王から伊予鉄道を経てやってきた中古の中古車。爽やかな青系の塗装はかつて走っていたトロッコ車両ユ101を復刻したもので、2代目「澪つくし号」を襲名している

10月のある日曜日、ふと思い立って銚子電鉄に乗ってきたので簡単にレポートしよう。

銚子から外川まで6.4kmを結ぶ銚子電鉄。銚子電鉄と言えば、とにかく聞こえてくるのは経営のヤバさである。国内の交通事業者に打撃を与えている新型コロナウイルス感染症の影響は銚子電鉄においても例外ではなく、1日の運賃収入が5000円に満たない日もあったとか。借金は4億以上にも膨らみ、まさに自転車操業を地で行っているという格好。最近やたらとメディアでお見かけする同社の竹本社長は「電車なのに自転車」とか言って笑い飛ばしているが、その実はかなり大変そうである。

お金がないので、駅名からバラストから鉄道部品から廃札になった乗車券、終いには音の風景まで売れるものはなんでも売ってしのいでいる。このほかにも、ぬれ煎餅の二匹目のドジョウを狙ってまずい棒なるお菓子を開発したり、YouTubeを始めてみたり。とにかくいろいろなことをやっている。自社を舞台にした『電車を止めるな』というどこかで聞いたことがあるような名前の映画を製作しているのには思わず大丈夫かよと思ったものだが、それも話題作りのため。鉄道の灯を絶やすわけにはいかないと奮闘するその姿こそが、銚子電鉄の魅力を作り出している原動力なのだ。

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銚子電鉄3000形 3001編成
2020.10.11/犬 吠

▲バブル時代の産物であるポルトガル調の犬吠駅を後にする3000形電車。アズレージョふうの駅名標も今となっては・・・だが、土産屋を併設した犬吠駅は銚子電鉄観光の拠点になっており、観光客でにぎわっている

そんな銚子電鉄だが、この日は観光客で賑わいを見せていた。2両編成の列車に対して、3〜4割の座席が埋まっていたかと思う。もっと閑散としている状態を想像していた私にとって、これは意外な姿であった。日曜日ではあるもののあまり天気はよくなく、かつ新型コロナウイルスの感染拡大で旅行自体を控える動きがある中でこういった状態なのだから、気候や世の中のコンディションがよければより活況を呈していることであろう。

タブレットを活用した自動放送では次駅のアナウンスのほかに沿線紹介も行っており、観音〜笠上黒生の"緑のトンネル"やテレビの企画でヒロミがリノベーションした本銚子駅の大正モダン風駅舎の案内が入る。見どころを予習しないで訪れても、こういった案内をしてくれるのは助かるところだ。時おり、かみのけくろはえだの上り調子本調子だのわけのわからないことを言い出すが、そんなようなこともローカル感が漂っていてなんだか楽しい。

観光客はどこからかやってきて銚子電鉄に乗り、どこかへと散っていくわけだが、銚子電鉄に乗ることが銚子を観光する際のひとつのアクティビティになっている。半ば観光鉄道の様相を呈しているが、銚子電鉄の一面を垣間見ることができた。

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銚子電鉄 仲ノ町車庫の車両群
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▲仲ノ町車庫の車両群。右端の2000形は無事に検査に入ったようで、台車や連結器が車体から外されていた。真ん中は元銀座線の1000形で、保存車となっている
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銚子電鉄2000形 2002編成
2020.10.11/仲ノ町

▲仲ノ町で休憩中の2000形。日中運用に使用されない車両はこの位置に留置される。できれば3000形じゃなくてこちらの車両に動いていて欲しかった・・・
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銚子電鉄 硬券乗車券
2020.10.11/**

▲乗車券は昔ながらの硬券が現役。入鋏はスタンプで代用しているが、それでもエモエモのエモである

出札窓口の駅員氏に○○までと言って紙の切符を出してもらい、電車に乗る。何気ないやりとりだが、なんかいいなと感じてしまった。もはや自動券売機すら使わず、改札機にスマホをかざすだけで電車に乗れてしまうこの令和の時代だからこその感想かもしれないけど、これを体験するだけでも銚子電鉄に乗る価値があるというものである。機会があればまた乗りにいきたいと思うので、廃線にならないでほしい。

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