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エトセトラ

2020.12.31

2020年がまもなく終わろうとしている。というわけで、「2020年四直界隈10大ニュース」と題して2020年に都営浅草線を筆頭とした京成線、京急線、北総線のいわゆる四直界隈で起こったできごとを、当Webサイトで扱いきれなかったものも含めてまとめてみた。なお、10大ニュースの選定については筆者の趣味や嗜好、独断、偏見に満ち溢れているが、異論はいっさい受け付けませんっ(ぉ

京急線、6駅の駅名を変更(3月)
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京急新1000形 1217編成
2020.10.20/金沢八景

▲3月14日に実施された駅名変更により新逗子行に代わって新しく走り出した逗子・葉山行

2020年、最初の大きなできごとは3月14日に実施された京急線の駅名変更であろう。駅名が変更されたのは、産業道路(→大師橋)と花月園前(→花月総持寺)、仲木戸(→京急東神奈川)、新逗子(→逗子・葉山)、ならびに羽田空港国際線ターミナル(→同第3ターミナル)、同国内線ターミナル(→同第1・第2ターミナル)の6駅。前者4駅が創立120周年記念事業の一環で沿線地域の活性化を目的とした変更、後者2駅が羽田空港旅客ターミナルの名称変更に伴う変更となっている。

駅名変更した6駅の中での1番の注目は「逗子・葉山」だった。新逗子改め逗子・葉山は逗子線の終着駅であることから、従来の新逗子行に代わって逗子・葉山行が新しく走り出した。新逗子の行先表示は京急車だけでなく都営車や京成車、北総車にもあるので、これらの車両も逗子・葉山の表示に改修された。

京成線でタブレット端末を活用した自動放送始まる(3月)

3月末より京成線でタブレット端末を活用した自動放送の使用が開始された。対象となるのは芝山鉄道線を含む京成本線系統の全ての列車。これまで京成線で自動放送を実施していたのはスカイライナーなどのライナー系列車とアクセス特急のみだったが、その範囲が一気に広がった。

自動放送の開始に合わせて、京成上野や京成船橋など京成が頭に付く駅名について、京成を含んだ正式名称を表記・呼称するようになった。従来、これらの駅では京成の部分を省略し、単に上野、船橋などと案内されていたので、大きな方針転換である。路線図や車両の行先表示も京成入りの表記に改められており、うすいといった特徴ある表記も京成臼井になった。ある意味では、上記の京急線の駅名変更以上の大変革と言える。

スカイライナーの一部運休と青砥臨時停車(4月~)
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スカイライナー青砥一部停車 ポスター
2020.5.1/**

▲スカイライナーの青砥停車をPRするポスター。当面の間というあいまいな実施期間が異例の事態であることを象徴している

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるった2020年、とりわけ散々だったのはスカイライナーだった。海外との往来が制限される中で、国際空港へのアクセス列車であるスカイライナーの利用者数は激減。特に政府から不要不急の外出自粛が要請された4月には、有料特急の運輸収入が前年比で約1割(約9割の減)という驚異的な数字を記録している。

こうした状況の中、京成では4月より利用者の減少に対応した施策としてスカイライナー一部列車の青砥停車と運休を実施した。スカイライナーと言えば2019年10月ダイヤ改正で終日20分間隔での運転を実現したばかりだったが、その運転本数を再度減らす決断がどれほどキツいものであるかは想像に難くない。ジャニーズのタレントを起用した広告だけが今もむなしく20分間隔であることを謳い続けている。

京成本線青砥駅構内における列車脱線事故(6月)

6月12日10時15分ごろ、京成本線青砥駅構内で脱線事故が発生した。事故車両は北総7800形7818編成で、1022N普通羽田空港行として青砥駅に進入する場面であった。事故の原因については運輸安全委員会の調査が待たれるところだが、状況とその後の対応からして台車の不具合に起因したものである可能性が高い。事故の当該となった7818編成は現在も復帰できておらず、印旛車両基地で留置される日々が続いている。

この事故により、京成線と直通各線では大幅にダイヤが乱れた。この混乱の中で、5500形が京成上野と芝山千代田に初入線したほか、3050形と3100形のアクセス車が京成本線を走るなどした。事故現場の復旧のため実施された一部区間の運休では、千住大橋行や市川真間行、八広行が運転された。翌13日の7時30分ごろ、ようやく現場区間が開通した。

京成3600形3688編成がファイアーオレンジ塗装になる(7月)
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京成3600形 3688編成
2020.10.14/西登戸~新千葉

▲新型車両の導入でその去就が注目される3600形。そんな中、3688編成がリバイバルカラーとなって重検出場した

3100形の導入でかねてより去就が注目されていた3600形だが、3688編成が重要部検査に合わせてファイアーオレンジ塗装となり、リバイバルカラーとして出場した。ファイアーオレンジの3600形は実に27年ぶりの復活。廃車が進行している界磁チョッパ制御の3600形が生き延びたという点でも大きなできごとであった。暗い話題が多かった2020年の中でも、ピカイチに明るいニュースだったと思う。

その3688編成、リバイバルカラーになった直後の8月こそ勢いよく運用に入っていたが、どういうわけか次第にフェードアウト。宗吾車両基地で予備として待機する日が多くなっている。イベント列車として走らせたときのレアリティを高めるためなのではという噂がまことしやかに囁かれているが、真相はいかに。いずれにせよ、せっかくリバイバルカラーにしたのだからもうちょこっと多めに運用に出してくれると嬉しい。

京成3500形、3600形、3400形が成田スカイアクセス線を走る(7月〜)
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京成3600形 3688編成
2020.9.22/成田湯川

▲3600形が成田スカイアクセス線を快走する。今年はさまざまなイベント列車が走った

新型コロナウイスル感染症の影響で各鉄道事業者が意気消沈する中、ひときわ荒ぶっていたのが京成であった。グループ会社の京成トラベルサービスとタッグを組んで鉄道ファン向けのツアーを矢継ぎ早に開催。スカイライナーで大損こいてる分のお金を稼ぐんぢゃ~~と言わんばかりにイベント列車の運転を乱発した。

その中で実現したのが3500形と3600形、3400形の成田スカイアクセス線入線である。今年で開業10周年を迎えた成田スカイアクセス線は3700形以降の車両しか入線の実績がなく、3500形と3600形、3400形はいずれも初入線となった。成田スカイアクセス線のイベント列車はスカイライナーが40分間隔になったからこそ実現したものであり、まさにピンチをチャンスに変えたというわけだった。

この手の有料ツアーは京成だけでなく他の事業者でも実施されており、ひとつのトレンドが形成されつつある。鉄道趣味の裾野が広がって趣味者の人口が増す中で、お金を出してくれる真のファンにプレミアムな体験を提供するという流れは今後も続いていくのだと思う。

京成3400形に初の廃車が発生(8月)
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京成3400形 3408編成
2020.2.4/大佐倉〜京成酒々井

▲8月に廃車となった3408編成。3400形では初めての廃車となっている

3600形が3688編成のファイアーオレンジ塗装で脚光を浴びたのに対し、明暗が分かれたのが3400形である。3100形3153編成の導入により3408編成が営業運転を離脱、廃車になった。3400形に廃車が発生するのは初めてのことで、3408編成がその第1号になってしまった。

京成では現在8両編成の置換えが進められているところで、3600形に続いて3400形にも淘汰の波がきてしまった格好。3100形の導入ペースや列車無線更新のスケジュールなどを考えると、3400形にも終わりが近づいてきている・・・?

京成線、印旛日本医大始発「臨時ライナー」運転開始(10月)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大で低調が続くスカイライナーだが、10月1日より「臨時ライナー」なる臨時列車の運転が始まった。上り列車1本のみの設定で、印旛日本医大を6時55分に出発し、京成上野に7時51分に到着するというもの。北総線経由のモーニングライナー的存在になっている。

私としても以前よりスカイライナーの回送を活用した北総線経由のモーニングライナーがあればいいのになあと妄想していたが、このような格好で実現するとは思いもよらなかった。有料列車の利用者を少しでも増やそうという施策であることは明白で、スカイライナーがいかに苦戦しているかということが伝わってくるというものである。

京成AE形が千原線に入線(11月、12月)

ツアーの開催により初入線系のニュースが相次ぐ中、ついにAE形が動き出した。AE形が11月1日と12月19日の終電後、2度にわたり千原線に試運転で入線した。AE形は昨年10月に運転されたイベント列車で千葉中央までの入線は果たしていたが、その先のちはら台まで入るのは初めてのこと。千原線に8両編成が走るというのも珍事中の珍事と言える。

試運転はイベント列車運転のための入線確認とみられるが、試運転の状況がいまいちよろしくなかったのは当該の記事でレポートしたとおりである。これまで通りなら試運転の後にツアーの開催が発表されるところだが、AE形の千原線入線については音沙汰がない。ぜひともAE形でちはら台まで行くツアーの開催を期待したいものである。

大晦日の終夜運転を中止(12月)

今年は最後まで新型コロナウイスル感染症に翻弄された1年だった。10月下旬から感染拡大の第3波が続いていることから、国土交通省や自治体からの要請等により毎年恒例の大晦日終夜運転の中止が決定された。運行が計画されて実施が確定し、一般へ広報された後の中止という点でも異例な事態となっている。

ともに寺社仏閣への参拝輸送をルーツとしながら空港アクセス鉄道に発展した京成と京急にとって、大晦日の終夜運転は言わば両社の原点に立ち返って輸送を行う年に1度のイベントである。大晦日の終夜運転が始まったのは戦前とも終戦直後とも言われているが、終夜運転の中止はその長い歴史の中できわめて重大なできごとと言えるだろう。

◆ ◆ ◆

こうして1年を振り返ってみても、文章の至るところにコロナ、コロナ、コロナ・・・。それだけ今年は新型コロナウイルス感染症に振り回された1年だったということを改めて実感するところである。本来であれば東京オリンピック・パラリンピックも開催され、成田・羽田の両空港アクセス輸送の要である四直各線はウハウハなはずだった。2020年がこんな1年になると誰が予想できただろうか。

そうは言っても、こうなってしまった以上この困難を乗り越えるしかないのである。2021年はぜひともよい1年になることを願って文章を〆る。

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