KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2023.09.04

京急線の普通列車の走り方を見る。

D34449.jpg

京急1500形 1593編成
2020.7.21/立会川

▲日中時間帯は品川〜浦賀を走る京急線の普通列車。2022年11月ダイヤ改正は普通列車の走り方はどのように変化しただろうか

京急線で2022年11月26日に実施されたダイヤ改正。日中時間帯の運行パターンの刷新は、京急自ら「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」と表現するほど大きなものであった。同改正についての内容は以前の記事でもお伝えしているところであるが、ここでは特に日中時間帯の普通列車について着目し、改正前後で走り方にどのような変化が生じているのか見てみよう。

普通列車の走り方の変化

以下に、始発駅を12時前後に発車する、ダイヤ改正前後におけるそれぞれの品川発下り列車と浦賀発上り列車の運転時刻を掲載する。各駅上の数字は到着時刻、下の数字は発車時刻。併記してある種別は待避相手の列車種別で、括弧でくくってあるものは通過追い抜き、括弧なしは接続。

Z01126.jpg

京急線 普通列車の走り方(下り)

▲ダイヤ改正前1224と改正後1120の運転時刻
Z01127.jpg

京急線 普通列車の走り方(上り)

▲ダイヤ改正前1245と改正後1243の運転時刻

改正前後で比べてみて目立つのは、やはり優等列車との接続機会の増加だ。旧ダイヤでは下り列車は京急蒲田での空港線直通快特との接続を除けば京急川崎と金沢八景、堀ノ内のみ、上り列車は堀ノ内と金沢文庫で快特と接続した後は京急鶴見でのエアポート急行との接続だけだったのが、平和島や神奈川新町、上大岡でもきっちりと緩急接続を行うようになった。

京急の普通列車と言えば、優等列車の走りを優先させるあまりに逃げられるところまでひたすら逃げて待避の繰り返しだったが、列車の接続を優先させた新たな待避パターンは普通列車に生じた大きな変化と言えよう。

X85652.jpg

京急線 京急川崎駅での緩急接続
2023.8.1/**

▲ダイヤ改正で新たに京急川崎で緩急接続を行うようになった上り普通列車(左)。緩急接続を増やしたことで所要時間の増を招いている

一方、緩急接続を重視したことによって普通列車の所要時間は増大しており、品川〜浦賀の全区間で下り列車では10分、上り列車では20分の増となっている。もちろん、乗り通す利用者がほとんどいない普通列車で全区間の所要時間を見る意味はないが、各待避駅ごとに見ても停車時間は増加傾向にあり、ここらへんは利用の仕方によって明暗が分かれそうなところだ。

例えば、平和島。新しいダイヤでは特急と快特(あるいはエアポート快特)を1本ずつ待避するため、10分近く停車するようになった。旧ダイヤにおいても快特を待避していたわけだが、旧ダイヤではわずか2分強の停車時間で快特に華麗に道を譲っていたため、待避によるストレスはほとんど感じられなかった。それが一転して10分弱も停車するようになった影響は大きい。

このように待避駅を挟んだ区間の利用者にとっては使いづらくなったが、緩急接続を行うことで新たに生まれた利便性も存在する。全部が便利になるとは限らないのがダイヤ改正の難しいところだが、今回は緩急接続による利便性の向上を主眼に置いたダイヤであり、こちらのほうを優先させたということである。

エアポート急行の減便=リソースの再配分

前述のように普通列車は全区間において下りで10分、上りで20分それぞれ所要時間が増えており、往復では30分も余計に時間がかかるようになっている。普通列車は10分おきに走るので、ダイヤ改正による所要時間増で使用する編成は3本増加したことになる。

このほかにも、今回のダイヤ改正ではSH快特のH特急化と羽田空港~北総線系統の特急化でそれぞれ1本ずつ使用する編成が増えているほか、2本の編成を使用する日中時間帯の逗子ローカル新設で、運用数は普通列車と合わせて7本の増となっている。この数字はエアポート急行の減便による運用数の減(14本→7本)と一致しており、このことから一見するとスリム化したように思える日中時間帯の大幅な運行パターン変更は、実はリソースの再配置という事実が見えてくる。

D38192.jpg

京急1000形 1301編成
2021.10.19/生 麦

▲ダイヤ改正で列車の本数が半減した日中時間帯のエアポート急行。エアポート急行が減った分は、他の運行系統の全体的な鈍足化による運用増でチャラになっている
  • 京急
  • タグはありません

関連記事

京急線 2022年11月の大幅ダイヤ改正を見る

京急線、約23年ぶりの大幅ダイヤ改正。京急線で2022年11月26日に実施されたダイヤ改正は、京急自ら「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」と表現するほど大きなものであった。その中でもとりわけ大きな内容...

京急線 2022年11月の大幅ダイヤ改正を見る
京急車の京成押上線内快速特急運転

京急車が京成線内を快速特急で走る。京成線で2022年2月に実施されたダイヤ改正は、スカイライナー青砥停車の正式ダイヤ化や日中時間帯の京成本線特急の快速への格下げなど、新型コロナウイルスの感染拡大...

京急車の京成押上線内快速特急運転
京急久里浜線 平日日中時間帯の減便を実施

京急電鉄では、10月18日にダイヤ修正を実施した。ダイヤ修正は平日のみ実施され、日中時間帯の久里浜線(京急久里浜〜三崎口間)を減便、20分間隔での運転とするためのものとなっている。久里浜線で...

京急久里浜線 平日日中時間帯の減便を実施
京急線 平和島始発の普通品川行を見る

平和島始発の普通品川行を見る。新型コロナウイルス感染症の影響による利用状況の変化への対応や、夜間における保守作業時間の確保を目的として実施された2021年3月27日ダイヤ改正。そのダイヤ改正に...

京急線 平和島始発の普通品川行を見る
京急線 2021年3月27日ダイヤ改正

京急電鉄では、3月27日にダイヤ改正を行う。今回のダイヤ改正について、京急電鉄や直通各社局のプレスリリース、16日に公式Webサイトで公開された全線時刻表などを参照しながら、その内容を見てみよう...

京急線 2021年3月27日ダイヤ改正

最新記事

京成線 京成成田駅にイラスト入り駅名標が登場

京成成田駅にイラスト入りの駅名標が登場。京成線の京成成田駅にイラスト入りの駅名標がお目見えしている。登場したのは、3月末あるいは4月頭の模様。成田と言えば真言宗智山派の大本山のひとつ成田山新勝寺...

京成線 京成成田駅にイラスト入り駅名標が登場
北総7300形 臨時特急「ほくそう春まつり号」運転(2024年)

今年も春がやってきた。4月21日、北総鉄道が主催する「ほくそう春まつり」の開催に合わせて臨時特急「ほくそう春まつり号」が運転された。昨年、京成本線の八千代台始発として5年ぶりに運転された当列車...

北総7300形 臨時特急「ほくそう春まつり号」運転(2024年)
千葉シーサイドバス路線図 2024年4月1日版

当Webサイトでは、2023年3月の「千葉シーサイドバス路線図 2023年3月1日版」と題する記事にて千葉シーサイドバスの路線図を公開していたところであるが、約1年ぶりに改訂版を発行する。千葉...

千葉シーサイドバス路線図 2024年4月1日版
京成グループ 車両の動き(2023年度)

京成グループにおける2023年度の車両の動きをまとめてみよう。まずは京成。ここ数年は列車無線のデジタル化に伴う予備車の存在や2度にわたる脱線事故の影響などでイレギュラーな車両の動きが続いていたが...

京成グループ 車両の動き(2023年度)
北総7500形 「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマーク

北総線開業45周年記念。北総鉄道では、3月上旬より7500形おいて「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマークの掲出を行っている。表題のとおり北総1期線(新鎌ヶ谷〜小室)の開業45周年を記念した...

北総7500形 「北総1期線開業45周年記念」ヘッドマーク