KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2024.06.16

​コロナ禍後のメークロン線路市場を訪ねる。

X86056.jpg

タイ国鉄 THN系気動車
2023.10.20/**

▲タイ国鉄メークロン駅付近の線路市場を行くメークロン線のTHN系ディーゼルカー。こうした奇天烈な光景を目当てに世界中から観光客が集う
X86019.jpg

タイ国鉄 メークロン線路市場
2023.10.20/**

▲列車が来ていない時の市場の様子。メークロン線は2015年から2016年にかけて線路を敷き直すレベルのリフレッシュ工事が実施されたが、工事から7年が経過して新しい線路はすっかりと市場に馴染んでいた

乗るはずだったバスが路線ごと廃止になっていることを知ったのは、朝7時のバスターミナルであった。この時点でこの日の旅程は崩壊。案内係のおばちゃんに近くまで行くと乗せられた代わりのバスで流れ着いたのがメークロンであった。もっとも、当初行く予定だったのがボッタクリで有名な水上マーケットだったから、そこには行くべきではないという神(タイなので仏かもしれない)のお導きだったのかもしれない。

何はともあれメークロンである。正確には、この町はサムットソンクラームと言う。サムットソンクラームはバンコク都心から南西に約70kmほど、メークロン川の河口付近にある小さな町だが、ここを有名たらしめているのは線路市場の存在である。タイ国鉄メークロン線の終点、メークロン駅手前500mほどの軌道上に市場が形成されており、列車がその中を突っ切るというどう考えてもおかしい光景が毎日展開されている。

メークロンを訪れるのは2015年2月以来、2度目だ。だからこそ当初の予定に組み込んでなかったのだが、来てしまったのだからしょうがない。せっかくなので、市場の様子と列車の往来を見ていくことにした。

X86013.jpg

タイ国鉄 THN系気動車
2023.10.20/**

▲線路市場の混雑のピークはやはり列車の通過する前後の時間。狭い市場内に観光客の渋滞が発生する
X86054.jpg

タイ国鉄 THN系気動車
2023.10.20/**

▲線路市場は別名タラート・ロム・フッブ(傘をたたむ市場)とも呼ばれる。列車接近のアナウンスとともに日除けテントが折りたたまれ、まさに列車が市場に入線しようとしているところ。安全のため(?)列車は最徐行で進入する
X86060.jpg

タイ国鉄 THN系気動車
2023.10.20/**

▲列車と列車にスマホを向ける観光客たち。このディーゼルカー、ひょっとすれば、世界で最も多く撮られている鉄道車両なのかも??
X86065.jpg

タイ国鉄 THN系気動車
2023.10.20/**

▲この距離感である。やっぱりおかしい

2020年の初頭から感染が広がった新型コロナウイルスは、世界に暗い影を落とした。特に、観光立国を掲げているタイにおいては、そのダメージは計り知れないものであった。メークロン線(バーンレーム〜メークロンの区間)も所定では1日4往復の運行のところ、2往復に減便。観光客で溢れていた線路市場には閑古鳥が鳴き、見るに耐えない惨憺たる状態だったという。

さて、2023年10月、コロナ禍後のメークロン市場はどうなっていたか。・・・それは、掲載した写真の通りである。右を向いても左を向いても観光客。むしろ、混雑は以前訪れた時よりも酷くなっているような・・・? 2015年に乗車した時には2両編成だった列車は3両編成に増強されており、こちらも観光客を満載していた。線路際から列車を撮る観光客と列車から車窓を撮る観光客とで、互いに互いを撮り合っている状況は相変わらずだった。

線路際には明らかに観光客を意識した土産屋やオシャンティなカフェなんかもできちゃったりなんかして、テーマパーク然としている。そうするともはや風情もへったくりもないのだが、しかし、これはこれでよいのだと思う。行きたいところに行って、面白いものを見たり美味しいものを食べたりする、こうしたことを自由にできるのはなんと幸せなことか。コロナ禍の時のような、移動が制限された世界はもう味わいたくない。そんなようなことを、私を含めて観光客だらけのメークロンで感じたわけである。

列車を見物した後は近くの食堂のカオマンガイで腹を満たし、ロットゥで大きな仏塔のある街へ向かった。

関連記事

タイ国鉄 フアランポーン駅の現在

クルンテープ・アピワット中央駅に続いて、かつての中央駅、フワランポーン駅も訪ねてみた。2023年1月にバンコクの中央駅の地位をクルンテープ・アピワット中央駅に譲ったフアランポーン駅。中央駅の移転...

タイ国鉄 フアランポーン駅の現在
タイ国鉄 動き始めたクルンテープ・アピワット中央駅

​タイの首都バンコクにおける新たな中央駅、クルンテープ・アピワット中央駅を訪ねてみた。バンコクの交通事情において、近年最も大きなできごとは中央駅の移転であろう。クルンテープ・アピワット中央駅と...

タイ国鉄 動き始めたクルンテープ・アピワット中央駅
タイ国鉄 レッドラインに乗る

タイの首都バンコクで2021年11月に開業したレッドラインに乗ってみた。タイの首都バンコクでは、ここのところ鉄道路線網が急速に拡大している。ここ5年だけでもBTSスクンヴィット線やMRTブルー...

タイ国鉄 レッドラインに乗る
国鉄型車両を訪ねて 25 - タイ国鉄キハ183系

国鉄型車両を訪ねて、初めての海外編はタイを走るキハ183系をば。2023年春のダイヤ改正で定期運用を終了したJR北海道のキハ183系。その一部がタイ国鉄へ譲渡され、熱帯の気候の中を走っていること...

国鉄型車両を訪ねて 25 - タイ国鉄キハ183系
タイ国鉄の旅 7 - メークロン線 メークロンの線路市場

バーンレーム駅からのんびりと列車に揺られること1時間40分、列車はまもなくメークロン駅に到着する。メークロン駅手前の数百メートルがメークロン線の最大の山場・・・! 列車が市場の中を通過するのだ...

タイ国鉄の旅 7 - メークロン線 メークロンの線路市場

最新記事

京成3000形 「京成グループ花火ナイター号」(2024年)

今年も夏がやってきた。京成電鉄では、6月中旬より「京成グループ花火ナイター号」の運転を行っている。7月13日にZOZOマリンスタジアムで行われる千葉ロッテマリーンズvsオリックス・バファローズの...

京成3000形 「京成グループ花火ナイター号」(2024年)
新型車両 京成3200形を考察する

5月20日付けのプレスリリースでついにベールを脱いだ京成電鉄の新型車両、3200形。これまでに明らかになっている情報を基に、3200形がどういった車両なのか、また3200形の導入で起こりうる車両...

新型車両 京成3200形を考察する
タイ国鉄メークロン線 コロナ禍後のメークロン線路市場

コロナ禍後のメークロン線路市場を訪ねる。乗るはずだったバスが路線ごと廃止になっていることを知ったのは、朝7時のバスターミナルであった。この時点でこの日の旅程は崩壊。案内係のおばちゃんに近くまで...

タイ国鉄メークロン線 コロナ禍後のメークロン線路市場
新京成8800形8805編成 営業運転終了

新京成8800形8805編成が営業運転を終了、廃車となる。2022年度より置き換えが進められている新京成8800形だが、また1編成に廃車が発生した。4月に実施した80000形80056編成の導入...

新京成8800形8805編成 営業運転終了
北総9800形 「千葉ニュータウン中央駅開業40周年記念」ヘッドマーク

紆余曲折を経て40年。北総鉄道では、3月下旬より「千葉ニュータウン中央駅開業40周年記念」ヘッドマークの掲出を行っている。2024年3月19日に同駅が開業40周年を迎えることを記念したもので...

北総9800形 「千葉ニュータウン中央駅開業40周年記念」ヘッドマーク