2016.05.18
4月中旬のある日、ちょいとぶらり静岡に行ってきましたよっ。例によって静岡鉄道を見てきたので、2016年春における静岡鉄道の様子を報告していこう。最近の静岡鉄道におけるトピックと言えば、何と言っても新型車両A3000形の登場であろう。もちろんA3000形もがっつりと見てきたので、まずはA3000形を中心に取り上げる。

静岡鉄道A3000形 A3001編成
2016.4.16/日吉町〜音羽町
静岡鉄道では新型車両A3000形を導入した。同社における新型車両の導入は1000形以来で、約40年ぶりの出来事になる。40年ぶりの新車とあって、なおかつ今後それと同じくらいの期間で静岡清水線の顔となる車両になることから、これでもかというくらいにコンセプトを詰め込んだこだわりまくりの車両となった。まずはA3000形の概要を見ていこう。
まずA3000形という形式からしてこだわりのあるものとなっている。1000形の後継車なのだから順当に行けば2000形となりそうなところだが、Activate(活性化させる)、Amuse(楽しませる)、Axis(軸)というAが頭文字の3つの言葉がA3000形たる由来とのこと。新型車両の導入によってこれらのことが実現されることを目指すという静岡鉄道の思いが込められており、A3000形にかける静鉄の情熱が伝わってくる。編成は新静岡方からクモハA3000+クハA3500の2両編成で、付随車の付番が+500となっているのは1000形と同じである。
車両は東急車輛で製造された1000形に引き続き、東急車輛の系譜である総合車両製作所横浜事業所が担当。車体はE235系と同じ、車内のロールバーが特徴の新しい構体のステンレス車両になった。このタイプのステンレス車体は私鉄では初めての採用1)で、雨樋の露出しないスッキリとした外観はまさしく次世代の通勤型車両という雰囲気。A3000形の発表時には未定だったカラーリングは、shizuoka rainbow trainsの名前の下に各編成を異なる色とすることになった。各色は静岡が誇るいろんな"いちばん"をモチーフとしており、先ごろデビューしたA3001編成のクリアブルーは富士山がモチーフである。shizuoka rainbow trainsは静岡鉄道創業100周年の2019年度にレインボーカラーの7色が揃う予定で、ここらへんの演出もなかなかニクいところ。また、レインボーカラーが出揃った後に導入されるA3008編成以降は一般色となる予定で、こちらもどうなるか今から楽しみである。

静岡鉄道A3000形 A3001編成
2016.4.16/日吉町〜音羽町

静岡鉄道A3000形 車内
2016.4.16/**
続いて、走行機器類を見ていこう。制御方式はVVVFインバーター制御で、これはもちろん静鉄では初めての採用。VVVFインバーターは東洋電機製になっており、2両編成でMT比が1M1Tとなることから1C2Mの2群構成として冗長性を持たせている。主電動機は全密閉タイプのものになっているようで、従来のものよりメンテナンス性や静粛性の向上を図った。パンタグラフはこれもまた静鉄初となるシングルアーム式を採用、モハA3000に1基が搭載されている。これだけ新しいものが詰め込まれる一方で、台車は軸箱支持がペデスタル式というやや古臭いものになっている。これは1000形が履いているTS-812/813台車に準じたものとみられ、保守の面から1000形で実績のあるものを引き続き採用するといった一面もみられる。
このほか、行先表示はフルカラーLED式になり、車両側面においても種別と行先が表示できるようになった。車内のドア上カモイ部に千鳥状に設置された32インチハーフサイズのLCD案内表示器と合わせて、旅客に対する案内の内容が格段に向上されている。このほか前照灯を含めた灯具類はすべてLEDになっており、消費電力の低減を図った。

静岡鉄道A3000形 行先表示「普通新静岡」
2016.4.16/**

静岡鉄道A3000形 LCD案内表示器
2016.4.16/**

静岡鉄道A3000形 LCD案内表示器
2016.4.16/**
約40年ぶりとなる新車は、他社の車両を徹底的に研究して、その良いところばかりを集めたんじゃないかというくらい、かなりの完成度の高さを感じさせられる。前述のようにコンセプトからして気合い入りまくりな状態となっているが、気合いが空回りしてコンセプトだけが先走ることなく、車両そのものがとても良いものに仕上がっているように見える。A3000形は技術の進歩よる新しいものと1000形で実績のある旧来のものがバランスよく採用されており、まさしくA3000形は1000形の後継車である。
他方、趣味的に残念なのは前面の副標識ステーが省略されてしまったところだ。1000形では2011年10月ダイヤ改正の急行運転復活時に副標識ステーが設置され、「急」や「教習車」などの副標識掲出が実用的にも趣味的にも面白いものとなっていたが、行先表示のLED化で必要なくなってしまったということなのだろうか。また、ヘッドマークについてもA3000形のツルツルな前面では取付けが難しそうな雰囲気だし、なにより尾灯の位置からして1000形でよく見られる大型のものの掲出は不可能といってよさそう。広告ラッピング電車もラッピングをしてしまうとそれはshizuoka rainbow trainsのコンセプトから外れたものとなってしまう。いちおうラッピング電車についてはshizuoka rainbow trainsの各色に準じた色のものをするという考えも静鉄にはあるようだが、ここらへんがどのように運用されていくのか注目される。
- 1)試作車としての性格が強い東急5050系サハ5576を除く。
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