2022.03.21
新京成8000形の43年間を振り返る。その2。
2021年11月に引退、形式消滅となった新京成8000形。惜別企画として同形式の43年間にわたる活躍を簡単に振り返ってみたいと思う。その1はこちら。
中途半端に終わったVVVFインバーター化改造
8000形も登場から28年が経った2007年、そろそろ更新が必要な時期に差し掛かっていた中で、制御装置のVVVFインバーター化改造が始まった。8506編成以降の界磁チョッパ車を対象に実施されたもので、8000形の延命が図られた。この田舎臭い見た目から当時最新鋭の三菱電機製IGBT-VVVFインバーターの近未来的な音が聞こえてくるのは衝撃であった。VVVFインバーター化改造された8000形を個人的には勝手に「サイボーグタヌキ」と呼んでいた。
これで8000形はしばらく安泰・・・とならなかったのは周知の事実である。2010年に5編成がVVVFインバーター制御となった時点で8000形の改造は打ち切られてしまった。8508編成と8516編成が中途半端に界磁チョッパ制御のままで残ることになった。
こちらもどうぞ:新京成8000形 走行音(VVVFインバーター車)
廃車始まる
N800形の増備と8800形の6両編成化が進む中で、いよいよ8000形にも廃車の手が迫ってきた。廃車は抵抗制御の8504編成(2010年度廃車)と8502編成(2011年度)から始まり、界磁チョッパ制御のまま残った8508編成と8516編成も2012年度に除籍された。
2013年度以降にはVVVFインバーター制御に改造された編成も廃車の対象となり、8506編成(2013年度)、8510編成(2015年度)、8514編成(2018年度)という具合に8000形は順調に数を減らしていった。制御装置を新しくした車両が、改造後わずか6年で廃車になるのは異例なこと。改造打ち切りを含めて途中で何らかの計画変更があったと見るべきであろう。なお、経年の浅い8000形のVVVFインバーター装置は、8900形で再利用されている。
8000形を置き換えた車両は次のとおり。8504編成←N828編成、8502編成←8808編成、8508編成←N838編成、8516編成←8812編成、8506編成←8816編成、8510編成←N848編成、8514編成←N858編成
ジェントルピンクの新塗装と最後のリバイバルカラー
8000形の廃車が進む一方、2017年4月に8518編成が、同6月に8512編成がそれぞれ最後の定期検査を施工した。ここで何より注目されたのはその塗装である。8518編成はジェントルピンクの新塗装に、8512編成は茶帯のリバイバルカラーにそれぞれお色直し。特にジェントルピンクの新塗装は、デビューから38年目にして第4のカラーリングになった。いやしかし、ここにきて本当に「パンダ」になるとは・・・。
いずれにせよ、8000形はキャンディピンクとマルーンのツートンカラーからジェントルピンクまで、4世代にわたるカラーリングを唯一知る形式1)となった。8518編成と8512編成が出場した時点ではストライプ帯の8514編成もまだ走っていたので、短期間ながら三者三様の8000形を楽しむことができた。
そして、引退へ
2編成残った8000形のうち、80000形80016編成の導入でまず8518編成が2020年1月に廃車になった。続いて翌2021年度に80026編成が導入され、8512編成も引退することとなるが、8512編成は検査回帰の関係で断続的な休車が続いており、特に6月末からはほとんど運用に入らずに事実上の引退状態となっていた。そんな中で最後の最後に休車が解除され、10月20日と11月1日に2回だけ運用入り。結果的に8512編成はこれをもって除籍となり、8000形は43年の歴史に幕を閉じた。
残念なのは最後にさよなら運転やさよならヘッドマークの類がなかったことであろう。2010年7月に引退した800形のような盛大なイベントを期待していたが、新型コロナウイルスの感染拡大という時世がそれを許さなかった。いちおう簡単な撮影会がくぬぎ山車両基地で催されたものの、引退への花道はやはり本線上で飾ってほしかったところではある。
◆ ◆ ◆
以上、新京成8000形の43年間にわたる活躍を簡単に振り返ってみた。新京成は8000形の後、8800形、8900形というそれぞれ当時の最新鋭の技術をふんだんに盛り込んだ意欲作を世に送り出していくが、これもひとえに8000形の成功があったからであろう。新京成車両史に大きく名を残した車両であることは間違いないはずだ。
そして、製造された全54両が大きな事故なく、全て老朽化で廃車となったことは、鉄道車両にとってたいへん幸せなことだろうと思う。
- 1)ただし、4つの塗装を全て経験した編成はいない。
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