2023.12.22
さようなら、エアポート急行。
11月25日に実施されたダイヤ改正で急行への名称変更に伴い運行を終了した京急線のエアポート急行。惜別企画として、約13年半にわたり運行されたエアポート急行を簡単に振り返ってみよう。
エアポート急行という種別
エアポート急行が登場したのは2010年5月のことで、京急蒲田付近の上り線高架化に伴い実施されたダイヤ改正で設定された種別である。最大の特徴は種別名のとおり原則として羽田空港発着の列車に限定したことで、品川方面の列車と横浜方面の列車が完全に別系統として運転された。運行図表上でもこれらのスジは異なる色で描かれており、あたかも同じ名前を名乗る2つの種別が共存しているかのようであった。
この時に注目されたのは、やはり横浜方面の列車。飛行機マークが冠されていたものの、1999年7月ダイヤ改正で運行されなくなっていた急行の事実上の復活であった。もとよりこの区間には羽田空港〜新逗子(現・逗子・葉山)または浦賀間を京急川崎まで特急、京急川崎から金沢文庫まで快特に併結、それ以遠を普通として走る特殊な運転をしていた通称:D特急があったが、エアポート急行はこれを1本の列車として置き換えた格好である。登場当初は日中時間帯を中心に20分間隔の運転で、平日の1本を除いて全て8両編成であった。
ところで、なぜエアポート急行は飛行機マークを冠したのか。これはもちろん、羽田空港を発着する列車だからだが、単なる急行でもよかったはずだ。これについては、エアポート急行を1999年7月まで走っていた旧急行と異なる停車駅設定としたことで生じた、エアポート急行の停まらない旧急行停車駅の利用者への配慮とも言われている。結局、品川方面を走っていた急行も横浜方面の事情に合わせる格好でエアポート急行に名称を変更することとなり、この時点で京急から急行がいったん消滅することとなった。
2012年10月ダイヤ改正
エアポート急行に大変革が起きたのは、京急蒲田付近の高架化完成に伴う2012年10月ダイヤ改正である。それまで20分間隔だった横浜方面の列車が10分間隔になったほか、朝や夕方以降の時間帯にも走るようになり、本数が一気に増加した。6両編成の列車が多く走るようになったり、新逗子を発着する都営車のエアポート急行が登場したりしたのもこの時である。一方、品川方面は日中時間帯の列車が快特に格上げされたため、エアポート急行が見られるのは朝か夕方以降となった。
10分間隔の運転になった一方、準速達列車としての中途半端さや使いづらさは否めなかった。特に日中時間帯は上大岡で快特に追い抜かれるため、快特の混雑に対してエアポート急行は明らかに空いていた。そのようなことも理由のひとつだったのであろう、2022年11月ダイヤ改正で日中時間帯の運行パターンが見直されることとなり、その中でエアポート急行の減便を実施。結局、2012年10ダイヤ改正以前の20分間隔に逆戻りすることになった。ただし、京急蒲田〜金沢八景で無待避となり、使い勝手は増している。
車両運用
特に横浜方面の列車は京急線内で完結していたため、車両運用は比較的ゆるゆるだった。800形と2000形の4+4両編成以外は何でも充当したと言ってもよい。また、A快特が泉岳寺発着となったことで日中時間帯に仕事を失っていた2000形の8両編成が輝く場所でもあった。1000形1890番台「Le Ciel」も、日中時間帯はエアポート急行として走った。
他社局の車両については、都営車が前述の通り横浜方面の列車としても走ったほか、京成車と北総車は品川方面でエアポート急行が見られた。
なお、エアポート急行が登場した2010年は、京急蒲田上り線高架化のほかに京成成田スカイアクセス線の開業(7月)と羽田空港国際線ターミナル駅開業(10月、現・羽田空港第3ターミナル駅)という大きな出来事が重なった年。このため、他社局の車両については行先表示の改修が5月の時点では行われず、しばらく急行表示のエアポート急行が走るという、新しい種別の登場にして少しばかり格好悪いスタートになってしまった。同様のことは今回のエアポート急行の急行への改称でも起きており、逆にエアポート急行表示の急行が見られている。歴史は繰り返す??
◆ ◆ ◆
以上、簡単ながらエアポート急行について振り返ってみた。ダイヤ改正直前に走った「さようならエアポート急行」列車が盛況のうちに終わったのも、エアポート急行が利用者に愛されていたことの証左であろう。エアポート急行は結果的に約13年半というやや短命な種別に終わったものの、その精神は新・急行に引き継がれているはずである。
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