2023.09.04
京急線の普通列車の走り方を見る。
京急線で2022年11月26日に実施されたダイヤ改正。日中時間帯の運行パターンの刷新は、京急自ら「23年ぶりの大幅ダイヤ改正」と表現するほど大きなものであった。同改正についての内容は以前の記事でもお伝えしているところであるが、ここでは特に日中時間帯の普通列車について着目し、改正前後で走り方にどのような変化が生じているのか見てみよう。
普通列車の走り方の変化
以下に、始発駅を12時前後に発車する、ダイヤ改正前後におけるそれぞれの品川発下り列車と浦賀発上り列車の運転時刻を掲載する。各駅上の数字は到着時刻、下の数字は発車時刻。併記してある種別は待避相手の列車種別で、括弧でくくってあるものは通過追い抜き、括弧なしは接続。
改正前後で比べてみて目立つのは、やはり優等列車との接続機会の増加だ。旧ダイヤでは下り列車は京急蒲田での空港線直通快特との接続を除けば京急川崎と金沢八景、堀ノ内のみ、上り列車は堀ノ内と金沢文庫で快特と接続した後は京急鶴見でのエアポート急行との接続だけだったのが、平和島や神奈川新町、上大岡でもきっちりと緩急接続を行うようになった。
京急の普通列車と言えば、優等列車の走りを優先させるあまりに逃げられるところまでひたすら逃げて待避の繰り返しだったが、列車の接続を優先させた新たな待避パターンは普通列車に生じた大きな変化と言えよう。
一方、緩急接続を重視したことによって普通列車の所要時間は増大しており、品川〜浦賀の全区間で下り列車では10分、上り列車では20分の増となっている。もちろん、乗り通す利用者がほとんどいない普通列車で全区間の所要時間を見る意味はないが、各待避駅ごとに見ても停車時間は増加傾向にあり、ここらへんは利用の仕方によって明暗が分かれそうなところだ。
例えば、平和島。新しいダイヤでは特急と快特(あるいはエアポート快特)を1本ずつ待避するため、10分近く停車するようになった。旧ダイヤにおいても快特を待避していたわけだが、旧ダイヤではわずか2分強の停車時間で快特に華麗に道を譲っていたため、待避によるストレスはほとんど感じられなかった。それが一転して10分弱も停車するようになった影響は大きい。
このように待避駅を挟んだ区間の利用者にとっては使いづらくなったが、緩急接続を行うことで新たに生まれた利便性も存在する。全部が便利になるとは限らないのがダイヤ改正の難しいところだが、今回は緩急接続による利便性の向上を主眼に置いたダイヤであり、こちらのほうを優先させたということである。
エアポート急行の減便=リソースの再配分
前述のように普通列車は全区間において下りで10分、上りで20分それぞれ所要時間が増えており、往復では30分も余計に時間がかかるようになっている。普通列車は10分おきに走るので、ダイヤ改正による所要時間増で使用する編成は3本増加したことになる。
このほかにも、今回のダイヤ改正ではSH快特のH特急化と羽田空港~北総線系統の特急化でそれぞれ1本ずつ使用する編成が増えているほか、2本の編成を使用する日中時間帯の逗子ローカル新設で、運用数は普通列車と合わせて7本の増となっている。この数字はエアポート急行の減便による運用数の減(14本→7本)と一致しており、このことから一見するとスリム化したように思える日中時間帯の大幅な運行パターン変更は、実はリソースの再配置という事実が見えてくる。
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