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2015.08.24

さて、今年の8月24日をもってつくばエクスプレスの開業10周年ということで、つくばエクスプレスがまだ常磐新線として計画されていた頃に作られたパンフレットを見てみよう。もとはTwitterに掲載したものだが、ウケが比較的よかったので、こちらでも改めてご紹介したく思う。

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常磐新線 リーフレット表紙(原寸は100mm x 200m)

▲謎の車両が描かれた表紙

パンフレットと言うか、厳密には観音折のリーフレットである。表紙には常磐新線の顔になるであろう車両のイメージが描かれているが、実際に走っている車両とはずいぶんと趣が異なる車両である。車体の断面が北総9100形のように曲線となっているだけでなく、床下機器はカバーで覆われている。なんともバブリーな設計だ。おまけに、このリーフレットでは先頭車両しかその様子は分からないが、他の資料等によれば2両目と3両目には2階建て車両が連結されているらしい。現在のつくばエクスプレスに2階建て車両が連結されていたならば、ラッシュ時の混雑に耐えられていただろうか・・・考えるだけでも恐ろしい。本気でこのような車両を作ろうとしていたのか、それともただ物好きな職員による落書き程度のものだったのか、そこらへんは知る由もない。

その中身は、常磐新線の目的や計画路線図、事業スキームなどいたってありきたりなことなので省略するが、面白いのが裏表紙。まだ正式な駅名などもちろん決まっていない中、仮称駅名のままで簡単な沿線マップが掲載されている。

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常磐新線 リーフレット裏表紙(原寸は100mm x 200m)

▲沿線マップが描かれた裏表紙

秋葉原から南流山までは、元浅草が新御徒町、新浅草が浅草となった程度であり、概ね仮称駅名がそのまま正式な駅名となっている。新御徒町は先に開通していた都営大江戸線に合わせた恰好だが、浅草は銀座線と都営浅草線の浅草からだいぶ離れていることを考えれば、仮称のままの新浅草の方がよかったのかもしれない。

千葉県内は、仮称の駅名としても独特だ。既に武蔵野線の駅のある南流山はおいといて、流山運動公園、流山新市街地、柏北部中央、柏北部北といった具合である。第三セクターであるつくばエクスプレスに沿線自治体として出資をしている千葉県として、つくばエクスプレスと一体となった新しいまちづくりを推進しており、それぞれの計画地区名をそのまま仮称駅名に充てた格好である。とても行政的な仮称駅名と言える。これら4駅の正式な駅名は、流山セントラルパーク、流山おおたかの森、柏の葉キャンパス、柏たなかとなり、いかにも新しい街ですといった雰囲気を出している。

一方、茨城県内の仮称駅名は駅予定地の元来の地名を使っており、守谷、伊奈谷和原、萱丸、島名、葛城、つくばとなっていた。先に関東鉄道の駅のあった守谷とつくばエクスプレス終着駅のつくばはそのまま正式な駅名となったが、他の4駅はそのまま使うとつくばエクスプレスのイメージとしてはばかられるのか、みらい平、みどりの、万博記念公園、研究学園となった。歴史があるであろう地名を無視するのはけしからんことだが、イメージというのもあるだろうし、そこらへんはいかんともしがたいところである。

こうしてみてみると、沿線1都3県東京都、埼玉県、千葉県、茨城県で仮称駅名に傾向があるのが興味深い。それぞれの自治体が第三セクターとして事業の当事者となっているがゆえの現象であろう。また、仮称駅名がほぼそのまま正式な駅名となった東京都内と埼玉県内に対し、千葉県内と茨城県内ではことごとく新しい名前が正式な駅名となったのも対照的で面白い。既存の市街地を走る東京都内と埼玉県内に対して、これから駅を中心した新しい街が形成されるであろう千葉県内と茨城県内といった、沿線の空間的な違いが見て取れる。

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