KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2016.02.17

バーンレーム駅に着いてきっぷを買っていると、折返し9時5分発メークロン行の列車がやってきた。だいぶヘロヘロな線路の上をTHN系ディーゼルカーが車体を盛大に揺らしながらこちらに向かって走ってくる。これはやばい。はたして保線という概念はあるのだろうか。バラストはどこかに流されてすでに無い。

D23515.jpg

タイ国鉄 メークロン線の様子
2015.2.13/บ้านแหลม

▲線路がすごくヘロヘロしてるだろ。本線なんだぜ
D23518.jpg

タイ国鉄 メークロン線のTHN系ディーゼルカー
2015.2.13/บ้านแหลม

▲メークロン方面からやってきたTHN系ディーゼルカー

以前の記事でも何度か触れているとおり、メークロン線のメークロン側バーンレーム〜メークロン間は1日3往復のみの運行となっている。単純に乗客が少ないから列車の本数が少ないのかと思っていたのだが(実際に少ないのだが)、どうやらそうでもないらしい。むしろ乗客が多かろうが少なかろうが、3往復がこの区間の限度のようなのである。その理由は次の通り。

  • 列車交換設備のない単線で、全線が1つの閉塞となっている(全線で2本の列車を同時に運転できない)。
  • 線路の状態が悪すぎて列車のスピードが出せない。

実は、少し前まで列車の運行は1日4往復あったそうなのだ。ところが、線路の状態が悪すぎてスピードが出せず、ダイヤ通りの運転ができていなかったらしい。なんせ全線で1閉塞なもんだから、1つの列車が遅れれば折返しの列車にも影響し、遅延は雪だるま式に増えてしまう。1日に3往復という運行は、このような実態を反映してダイヤ通りに走れるようにしたダイヤということである。バーンレーム〜メークロン間のたかだか約30kmを各駅停車とはいえ1時間40〜45分もかけて走るのだから、どれだけどいひーな状況なのかおわかりになっていただけよう。

車両は前述のとおりTHN系のディーゼルカーが使用されている。マハーチャイ側では3両編成だったが、こちらは2両編成。いずれもエアコンなしの3等車である。他線区とは一切線路の接続のないメークロン線のメークロン側には2連2本のTHN系気動車が閉じ込められており、適宜車両交換を行ないながら運行している模様。車両交換はバーンレーム駅に設けられている短い側線を使って行なわれている。

◆ ◆ ◆

9時5分、列車は概ね定刻通りに発車。乗客は地元の人がちらほらといった程度で、ガラガラである。列車はのんびりと加速した後、すぐさま惰性走行に移行。沿道を走るスクーターにすらあっさりと追い抜かれる有り様なので、せいぜい30km/h出てるかどうかという感じ。車両は上下左右、あらゆる方向にとにかく揺れまくり! こんな状態でも走るだけなら走れてしまうんだから、鉄道ってタフな乗り物だよなあと逆に感心してしまう。メークロン線メークロン側の車窓は単調で、特にこれといったものもないので、メークロンまでの1時間40分はやばすぎる線路状態と列車の激しすぎる揺れにひたすら耐えるのみ。しかしこれはこれで超楽しいぞ。

D23572.jpg

タイ国鉄 メークロン線の車窓
2015.2.13/**

▲車窓はこんな感じの風景が続く
D23523.jpg

タイ国鉄メークロン線 列車内の様子
2015.2.13/**

▲すっごく揺れるよ! (注:脱線してません)

何駅目かに停車して、発車しようとした時だったか、我々の乗っている車両が白い煙をあげながらエンストしてしまった。すぐさま職員が復旧しようとするも、ぜんぜんダメ。おいおいこんな何もないところで運転打ち切りかよと不安がよぎったが、もう1両の方のエンジンはちゃんと動いていたので、結局"キハ+キサハ"状態で運行再開となった。それでも列車の遅れは特に発生しなかったし、どうせハナからスピードも出しやしないので、なんだったら最初からその状態の方がお財布にも環境にもやさしいんでないかい。

途中の小駅からの利用もちらほら見られ、ガラガラだった車内もメークロンに近づくにつれて座席が少しずつ埋まってきた。1日3往復の運行では乗客もそんなに多くないだろうと思っていたので、意外な姿であった。そして列車はいよいよメークロン線最大の山場に突入する・・・!

関連記事

タイ国鉄の旅 7 - メークロン線 メークロンの線路市場

バーンレーム駅からのんびりと列車に揺られること1時間40分、列車はまもなくメークロン駅に到着する。メークロン駅手前の数百メートルがメークロン線の最大の山場・・・! 列車が市場の中を通過するのだ...

タイ国鉄の旅 7 - メークロン線 メークロンの線路市場
タイ国鉄の旅 5 - マハーチャイ駅からバーンレーム駅へ

タイ国鉄メークロン線その3。メークロン線のマハーチャイ〜バーンレーム間は大きな川によって線路が分断されており、この区間は徒歩と渡船にて連絡を行なう。メークロン側にて乗る予定なのはバーンレーム駅...

タイ国鉄の旅 5 - マハーチャイ駅からバーンレーム駅へ
タイ国鉄の旅 4 - マハーチャイ線の通勤列車

前回に引き続き、メークロン線に乗る。まずはマハーチャイ線区間のマハーチャイまで向かう。車両はTHN系と呼ばれる日本製のディーゼルカー。前面の表情や側面のコルゲートなど、日本で走っていてもあまり...

タイ国鉄の旅 4 - マハーチャイ線の通勤列車
タイ国鉄の旅 3 - 早朝のバンコク=ウォンウィエン・ヤイ駅

タイ国鉄その3。前回、前々回は華やかな本線系の様子を取り上げたが、それとは別にメークロン線というローカル線に乗ってきたので、こちらもご紹介しよう。タイ国鉄メークロン線は、バンコクとメークロンを...

タイ国鉄の旅 3 - 早朝のバンコク=ウォンウィエン・ヤイ駅
タイ国鉄の旅 2 - 特急"スプリンター"9レに乗る

タイ国鉄の旅、前回はフワランポーン駅の様子を紹介したが、フワランポーン駅に来たのは他でもない、列車に乗るためである。アユタヤ王朝の遺跡群で有名な、古都アユタヤへ向かう。ボロの客車列車に後ろ髪を...

タイ国鉄の旅 2 - 特急

最新記事

2025.03.31

新京成線 新津田沼駅の0キロポスト

歴史の証人。まもなく終わりを迎える新京成線。そんな同線の歴史を開業から見守り続けてきたものがある。新津田沼駅に設置されている、0キロポストだ。新京成線の距離上の起点が、ここ新津田沼にあることを...

新京成線 新津田沼駅の0キロポスト

2025.03.28

京成3500形 3556編成など6両が営業運転終了

京成3500形に廃車が発生。新型車両3200形の導入に伴い、3500形に廃車が発生している。廃車となったのは、3556〜3553と3552、3551で、導入された3200形と同数となる6両...

  • 京成
  • タグはありません
京成3500形 3556編成など6両が営業運転終了

2025.03.24

京成3200形 営業運転開始

まさに「令和の赤電」。2月22日、京成電鉄の新型車両3200形デビューした。2024年度導入分の6両が、3204+06-05という編成を組んで6両編成として運用に入っている。遅ればせながら...

京成3200形 営業運転開始

2025.03.17

さようなら JR東日本E217系

さようなら、E217系。3月15日、JR各社を始めとした3月の全国的なダイヤ改正が実施された。列車や車両が新しく生まれ、または消えていく。そんな季節が今年もやってきた。JR東日本の横須賀・総武...

さようなら JR東日本E217系

2025.03.12

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

京急600形と2100形、側面の行先表示器がLEDになる。京急600形と2100形で、側面の行先表示器のLED化が進んでいる。2024年10月下旬にLEDとなった602編成と607編成、2157...

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化