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2016.03.10

バーンレーム駅からのんびりと列車に揺られること1時間40分、列車はまもなくメークロン駅に到着する。メークロン駅手前の数百メートルがメークロン線の最大の山場・・・! 列車が市場の中を通過するのだ。ここは人呼んで"折りたたみ市場"1)

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タイ国鉄 メークロン線のTHN系ディーゼルカー
2015.2.13/บางกระบูน〜แม่กลอง

▲市場の中を通過するメークロン線の列車(with大量の観光客)

こんなわけのわからない風景があると知ってしまったら行ってみるしかないべ、ということで来てみましたとさ。何を隠そう、このために早朝からローカル線に揺られてきたわけなのである。これぞタイという国の真骨頂。列車が通る場所っていうレベルじゃねぇぞ!!

もともとこの市場は線路に隣接したところにあったようなのだが、どういうわけだかいつの間にやら線路上にも侵食、線路そのものが市場になってしまったということらしい。ここで普通の感覚なら鉄道の敷地内は危険だから云々で排除されるはずだが、これがタイという国のお国柄なのか、今やタイを代表する観光地になっているのだからわけがわからない。列車が市場の中を走るというデンジャラスな光景はネットを通じて世界に拡散され、人々の興味を大いに刺激したのであった。ここには世界中から観光客が集まり、列車が通るたびにその光景を見ては喜んで帰っていくということが繰り返されている。

その観光客の多さには私も驚いたのだが、バンコクのウォンウィエンヤイの時点ではあまり見かけることがなかった観光客はいったいどこから現れたのだろうか。結局はタイ国鉄の列車よりも便利で速いロットゥー(ワゴン車を使用したミニバスのようなもの)やツアーによる観光バスで来てしまうようだ。彼らはまさにこの市場を通る列車を見るためだけにメークロンを訪れているというわけ。だが、ちょっとよく考えてみてほしい。メークロン線あってのメークロン市場なんじゃないかい。ぜひここはウォンウィエンヤイから列車にギシギシと揺られながら訪れてみてほしい。列車と渡船を乗り継ぐ約3時間の道のりが作り出す場末感が、この市場の光景をより魅力的なものにさせるはず2)

◆ ◆ ◆

さて、列車が通らない時の市場の雰囲気はというと・・・。

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タイ国鉄メークロン線 メークロンの線路市場
2015.2.13/**

▲メークロンの線路市場の風景
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タイ国鉄メークロン線 メークロンの線路市場
2015.2.13/**

▲メークロンの線路市場の風景その2

これは線路ではなく、間違いなく市場である。・・・が、通路の中央で鎮座するレール2本がかろうじてここが本来は列車の通る鉄道の敷地内ということを物語っている。市場まるごと線路なうである。

メークロン駅の方から「まもなく列車がやってくるぞ〜(意訳)」という大音量のアナウンスが流されると、市場は動き出す。列車の通る"空間"を作るのだ。商品を載せていた台がひっこまされ、線路ごと市場を覆っていたビニールの屋根が次々と折りたたまれる。列車が通る空間があっという間にできあがっていく。冒頭の"折りたたみ市場"とはまさにこのこと。

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タイ国鉄メークロン線 メークロンの線路市場
2015.2.13/**

▲列車が来る直前の様子。列車の通る空間ができあがっている
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タイ国鉄 メークロン線のTHN系ディーゼルカー
2015.2.13/บางกระบูน〜แม่กลอง

▲列車がやってきた
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タイ国鉄 メークロン線のTHN系ディーゼルカー
2015.2.13/บางกระบูน〜แม่กลอง

▲この距離感である。近すぎるってば

いよいよ列車がやってきた。線路上にいろいろと置かれていたものをどかすものの、本当に列車が通る空間分しか空けないもんだから、通過する列車と商品との距離はわずか数センチ! ここの人たちは伊達に長く線路上で市場をやっているだけあって、列車との距離感が研ぎ澄まされている。列車の方も観光客がさほどいなければそれなりのスピードで突っ込んでくる。いやはや改めてめちゃくちゃな光景である。

列車が通った後はすぐさま折りたたまれていた傘が元に戻り、商品も元の位置に戻され、市場としての姿に戻っていく。その手際よさたるや、我々観光客にとっては非日常でも、ここではこれが日常なのだ。

◆ ◆ ◆

そんなメークロン線だが、タイ国鉄としてもいよいよ線路の状態がヤバいんじゃね? と気づいたのか、2015年5月からリフレッシュ工事のためバーンレーム〜メークロン間が全列車運休となっているようだ。リフレッシュ工事は既存の軌道をいったん全て撤去し、新しく線路を敷き直すという大がかりなもの。現在はバスによる代行輸送が行われている模様である。当初、運行再開は11月上旬の予定だったが、工事の遅れのため今年4月に延期したとのこと。この情報の通りなら運行再開はまもなくのはずだが、タイのことからしてさらに遅れる可能性も大いにあるので、もしメークロンへ行かれる予定があるならば注意されたい。

実は私が2015年2月に乗車した際にも、一部区間の線路際に大量のバラストとコンクリート製のマクラギが準備してあるのが見えたので、近々工事が始まる雰囲気を匂わせていた。タイに訪れるのがあと3ヶ月遅れていたならヘロヘロ状態のメークロン線には乗れなかったわけで、まことにラッキーであった。

(完)

  • 1)タイ語でตลาดร่มหุบ(タラート・ロム・フープ)、直訳すると「傘たたみ市場」。
  • 2)・・・と偉そうなことを言ったものの、私もバンコクへの帰路はロットゥーを利用したのであった(戦勝記念塔まで1時間強)。1日に3往復しかないメークロン線の運行で、乗るのと市場を走る光景を見るのを両立させるのは時間的なロスが大きすぎるわけで・・・(結局だから皆さんロットゥーや観光バスで来るんだよな)。

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