2015.12.10
タイ国鉄その3。前回、前々回は華やかな本線系の様子を取り上げたが、それとは別にメークロン線というローカル線に乗ってきたので、こちらもご紹介しよう。
タイ国鉄メークロン線
タイ国鉄メークロン線は、バンコクとメークロンを結ぶ路線である。バンコクより西へ60kmほどのびるローカル線で、フアランポーン駅を発着する本線系と線路の接続が一切ない独立した線区となっている。路線は途中のマハーチャイ〜バーンレーム間で大きな川によって分断されており、バンコク〜マハーチャイとバーンレーム〜メークロンという2つの区間でそれぞれ列車が走っている。このうち、バンコク側を特にマハーチャイ線と呼ぶこともあるようだ。
バンコク側のターミナルはチャオプラヤ川の西側にあるウォンウィエン・ヤイ駅。どうにもウェーイ系な駅名だが、タイ語で大きな円という意味らしい。駅の近くにタークシン大王1)の立派な像の立つ大きなロータリー(ラウンドアバウト)があるが、ウォンウィエン・ヤイとはそれのことのようである。かつてはチャオプラヤ川により近いクローンサーンというところまで線路がのびていたそうだが、バンコク都内の道路交通事情の悪化により1960年代に廃止され、現在のウォンウィエン・ヤイを起点とした運行形態になっている。
メークロン線のうち、マハーチャイ線側はバンコクの近郊輸送を担っているということでそれなりに列車本数も多いのだが、メークロン側の運行は1日に3往復だけという、ドのつくほどのローカルっぷり。そんなわけで行程はメークロン側の列車に合わせて組まざるを得ず、ウォンウィエン・ヤイ駅6時25分発の列車に乗ることになった。
早朝のウォンウィエン・ヤイ駅
BTSのウォンウィエン・ヤイ駅から歩くこと十数分、大通りから路地を少し入ったところにマハーチャイ線のウォンウィエン・ヤイ駅はあった。注意していないと気づかずに通り過ぎてしまうんじゃないかという佇まいである。駅は中間駅だった名残で1面1線。終着駅としては小規模だが、ホームには露店が立ち並んでいて独特な雰囲気を醸し出している。
駅は周辺の街と同化していて、駅という感じがしない。駅そのものがただの路地となっているかのようである。この時期の朝6時のバンコクはまだ空が明るくなりきっていないが、街はすでに起きていて、人々はそれぞれ1日の活動をスタートさせている。こんな朝っぱらからメシ屋が営業していたりするが、タイの人はあまり自分で料理をしないらしいので、朝ごはんはこういうところで済ませているのだろう。
列車が来るまで適当に駅構内をうろついてると、早朝のタイならではの光景を見ることができた。人々が次々に僧侶に食料を寄付をしている。なるほど、これが「地球の歩○方」に書いてあった托鉢2)ってやつ! 露店を覗くと僧侶に喜捨するためのお弁当セット(?)が売られていたりしていて、たいへん興味深い。タイの生の風景を垣間見ることができて、朝から得した気分になった。
そんなタイの風景を見ていると列車がやってきた。とりあえずマハーチャイまで1時間ほど乗車となる。
- 1)1734〜1782。ビルマに占拠された当時の王都アユタヤを奪還したり、トンブリー王朝をつくったりしたスゴい人。
- 2)一切の生産活動を禁じられている僧侶の世界では、食料は人々からの喜捨によってまかなわれているとのことで、僧侶は食料を集めるために鉢を持って早朝の街へ出るそうである。一方、僧侶でない人は寺院や僧侶に喜捨するなどの"徳を積む"ことがよい行いとされており、僧侶とそうでない人々との間でウィンウィンな関係がつくられている。
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