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2020.02.15

京急線の座席指定サービス「ウィング・シート」に乗ってみた。

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京急2100形 ウィング・シート車内
2020.2.2/**

▲ある日の昼下がりの下り快特における「ウィング・シート」車両は、ものの見事に空気輸送状態であった。悔しいかな、私のほかに乗客が1名いたため、シティライナーの再来にはならなかった
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京急2100形 ヘッドカバー
2020.2.2/**

▲「ウィング・シート」のサービス開始に合わせて、2100形2号車のヘッドカバーが緑色のものに交換された。土休日の一部列車で「ウィング・シート」になることが書いてある

京急線にて2019年10月ダイヤ改正で新設された、座席指定サービス「ウィング・シート」。サービス開始からもうすぐ3ヶ月が経とうとしているが、利用者はあまりいるように見えない。SNSなどをのぞいてみてもその評判はすこぶる悪く、グーグル検索に至っては「ウィング・シート」と入力すると続けて「ガラガラ」というサジェストキーワードが出てきてしまう始末だ。

しかし、評判ばかりを見てもしょうがないので、実際のところどうなのか、試しに乗ってみた。その様子を簡単にレポートしよう。

座席指定サービス「ウィング・シート」の概要

京急電鉄は2019年10月ダイヤ改正より座席指定サービス「ウィング・シート」を開始した。土休日の日中に2100形で運転される泉岳寺〜三崎口の快特において、2号車を座席指定車両とするものである。京急によれば、「みさきまぐろきっぷ」や「よこすか満喫きっぷ」などの利用者をはじめとした三浦半島方面への旅行、沿線の利用者の横浜・都心方面へのお出かけの際の、より一層快適な移動の選択肢を提供するとしている。

京急では1990年代から運転している「イブニング・ウィング号」や2015年12月ダイヤ改正で設定された「モーニング・ウィング号」がある1)が、「ウィング・シート」はそれらに続く同社の座席指定サービス「ウィング」の第3弾という格好。利用が比較的好調な「イブニング・ウィング号」と「モーニング・ウィング号」に続くものとして、まさに"3匹目"のどじょうを狙わんとばかりに始まったサービスと言えよう。

2号車が「ウィング・シート」の対象となる快特は、下りは泉岳寺9時55分発から15時15分発まで、上りは三崎口11時16分発から15時56分発まで、それぞれ40分に1本の設定で、下り9本、上り8本。乗車可能駅は、下り:泉岳寺、品川、京急蒲田、京急川崎、横浜、上大岡、上り:三崎口、三浦海岸、京急久里浜、横須賀中央、金沢文庫、上大岡のそれぞれ6駅。降車はどこでも可能で、極端なことを言えば泉岳寺→品川だけでも利用できる。

「ウィング・シート」を利用するための座席指定券は300円で、京急電鉄の専用Webサイト「KQuick」のみで購入可能。「KQuick」にて会員登録とクレジットカードの登録をし、利用する。他社の座席指定サービスで見られるようなホーム上に設置された券売機はなく、いまのところ「KQuick」が座席指定券を購入するための唯一の手段になっている。

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京急2100形 ウィング・シート
2020.2.2/品 川

▲ウィング・シートの乗車口は2号車三崎口方のみ。品川方のドアも開くものの、写真のように横断幕が設置されて締切扱いになっている
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ウィング・シート 案内サイン
2020.2.2/品 川

▲駅のホームに掲示してあるウィング・シートの案内
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Wing Ticketの例(一部加工)

▲スマホ上で表示した座席指定券(Wing Ticket)の例(※一部加工済)。この画面を「ウィング・アテンダント」なる添乗の係員に見せて乗車する。なお、チケット購入後、この画面を表示した時点で払戻しが不可になる(ダイヤ乱れなどで列車が運休した場合を除く)
「ウィング・シート」に乗る

ってなわけで、「ウィング・シート」に乗ってみた。2月上旬のある日の昼下がり、品川からの乗車である。

はてさて、どれくらいの利用があるものかと期待していたものの、品川から「ウィング・シート」に乗車したのは私のみ。泉岳寺から乗車していた1名と合わせて、2名の利用で品川を出発した。冒頭の写真は車内の様子を撮影したものだが、ものの見事に空気輸送。比較的空いている時間帯の列車ではあったものの、哀しいかな、評判に違わない利用状況を見せつけてくれた。

上大岡までの乗車可能駅からの利用客はいなかったので、私が利用した列車における「ウィング・シート」の乗客は2名で確定となった。車内には、私ともう1名の乗客と「ウィング・アテンダント」という名のついた添乗の係員の3名のみ。おかげさまで、たいへん快適な移動をさせていただくことができた。ただし、座席指定のシステム上、特に利用条件を指定しない限り利用者を乗車口に近い座席から割り当てていくというふうになっているようで、ガラガラの車内で3人が乗車口近くに固まって乗車するというなんとも奇妙な状況が展開された。

途中駅では、やはり一般車両と勘違いして乗り込もうとしてくる人たちが後を絶たない。なんせ「ウィング・シート」と言えども、見た目はただの2100形。いちおう、車両の窓に申し訳程度に「ウィング・シート」と書かれた貼り紙をしてあるのだが、なかなか気づくのは難しいと思われる。各駅においても2号車が「ウィング・シート」であることを掲示したり列車接近時に案内したりしているはずだが、案内を見ない・聞かない人はどうしても一定数存在するので難しいところではある。

「ウィング・アテンダント」は、検札業務のほかにそういった人たちを「ウィング・シート」に乗車させないようにする役割も担っており、各駅停車時に座席指定券がないとこの車両に乗れない旨を大声を張り上げて案内していた。中には嫌な顔をして他の車両の方に移動する人もいることだろう。「ウィング・シート」の前後車両が余計に混雑し、遅延を生み出しているという問題もある。「ウィング・アテンダント」の心情を考えると、JRの2階建てグリーン車や京阪のプレミアムカーまでとは言わないまでも、車両が目の前に現れた時点で明らかに一般車両でないことが分かる仕掛けがあってもよさそうなところ。2号車が「ウィング・シート」と早く気づいてもらうことが、列車の遅延防止にもなるはずだ。

こうして「ウィング・シート」に乗らない人たちからのヘイトが溜まっていくわけだが、乗る方としては気分がよいものだ。たったの300円で1両まるごとほぼ貸切状態で使わせてくれるのには申し訳なさすらある。ただ、今後「ウィング・シート」に対する認知度が上がっていけば、こういったガラガラ状態は少なくなっていくだろう。「ウィング・シート」を貸切で堪能するなら今のうちである。

(つづく)

  • 1)もともとは座席定員制であった。2017年5月に座席指定制に変更。また、「イブニング・ウィング号」は2019年10月ダイヤ改正で「ウィング号」から名称を変更した。

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