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さようなら JR東日本E217系

2025.03.17

さようなら、E217系。

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JR東日本E217系 横クラY-24編成+Y-146編成
2021.8.4/物井〜佐倉

▲横須賀・総武快速線のE217系。E217系はダイヤ改正をもって運用を終了した

3月15日、JR各社を始めとした3月の全国的なダイヤ改正が実施された。列車や車両が新しく生まれ、または消えていく。そんな季節が今年もやってきた。JR東日本の横須賀・総武快速線では、長らくE235系による置き換えが進められていたE217系が、ダイヤ改正をもって引退を迎えたようだ。現時点でJR東日本から公式的な発表はないものの、ネット上で公開されている労働組合の資料1)において、ダイヤ改正以後、E217系を使用する予定がないことが明らかになっている。

JRに関しては、いつもはあまり縁のない車両の惜別記事ばかり書いているが(ぉぃ)、E217系は紛れもなくお世話になった車両のひとつだ。横須賀・総武快速線ユーザーだったというわけではないけれど、仕事やら旅行やら何やらで同線を利用する際に必ず出迎えてくれたのは、E217系であった。

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JR東日本E217系 横クラY-35編成+Y-106編成
2022.4.8/下総中山

▲総武線内の複々線を行くE217系。市川から西船橋にかけては線形が良く、E217系の本気の走りが味わえる数少ない区間のひとつだった
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JR東日本E217系 車内
2022.2.9/**

▲E217系のクロスシート。写真は座席に掴み棒が設置されている初期タイプのものである。クロスシートって聞くとなんだか座りたくなっちゃうけど、E217系のクロスシートは狭くて座り心地が悪かったのであまり好きではなかった。私がよく利用したのはクロスシート脇の2人がけシートのクロスシート側の座席で、編成内で1両だけのクロスシートかつモハである3号車に乗車することが多かった

E217系が登場したのは私が小学生のころ。今みたいに情報が溢れておらず、鉄道のことなんて自分の目で見たものがほぼ全てだった小学生の私にとって、初めて見たE217系は衝撃そのものであった。113系という古臭い電車しか走っていないあの総武線の快速に、銀色の新しい電車が走っている?? しかも4ドア??? なにせ緩行線にしても、103系や201系といった車体に色が塗られた電車がまだまだ現役で走っている時代。ステンレスの車体をギラつかせながら軽やかに走るE217系の姿は、子どもの私にも総武線における新しい時代の到来を感じさせるのに十分であった。

同時に、日常の光景が永遠に続かないことも気づかせてくれたのもE217系だったかもしれない。E217系の登場に歓喜する一方で、あれだけ大量に当たり前に走っていた113系が消える運命にあることはちょっと信じられなかった。世の中は常に変化していくという現実のはかなさもまた、E217系に教えてもらったような気がする。

高校生のころにはE217系の投入は完了しており、新たな日常となっていた。こうなると人間とは勝手なもので、E217系には特に何の感情も湧かず、乗車するにしても乗って降りるだけである。しかし、E217系以降、JR東日本では通勤型と近郊型の概念が薄まり、E231系から共通形式になってしまった中で、最後の正統派近郊型であるE217系にいつでも乗れるのは横須賀・総武快速線だけという、謎の誇りと優越感はあった。

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JR東日本E217系 横コツF03編成+F53編成
2008.2.22/藤沢〜辻堂

▲2004年10月ダイヤ改正で実施された湘南新宿ラインの増発に伴う運用数の関係で、数編成が国府津車両センターに転属。湘南色をまとって東海道線を走るE217系が登場した。東京〜熱海(来宮)で限定限定されていたことから、東海道線開業120周年の際には、E231系を差し置いて記念ヘッドマークの掲出対象になるという栄誉にあずかっている。東海道線のE217系は2015年3月ダイヤ改正まで続いた

それから十数年、今度はE217系が置き換えられる番になるのだから、時間の流れは残酷である。横須賀・総武快速線でE235系の投入が始まった当時、当Webサイトでは「E217帝国崩壊の始まり」という記事を上梓したが、これから約4年、帝国はついに終焉を迎える。この数年、E235系が増えていく中で、乗車する際にだんだんとE217系に当たりにくくなっていくのには寂しさを覚えたが、変化は受け入れなければならぬ。私ももう大人である。

最後に、E217系で素晴らしいのは、不慮の事故や故障で1両も欠けることなく、運用を全うしたことだろう。もちろん、形式単位でそういった前例はあると思うが、E217系の745両という数字で見れば快挙と言ってよいはずだ。長い間、おつかれさまでした。

  • 1)「JR東労組Yokohama」、第113号(2024年12月27日発行)

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