KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2016.01.03

前回に引き続きタイ国鉄のローカル線、メークロン線に乗る。まずはマハーチャイ線区間のマハーチャイまで向かう。

D23492.jpg

タイ国鉄 THN系気動車
2015.2.13/สถานีรถไฟมหาชัย

▲マハーチャイの車庫で休憩中のTHN系気動車

車両はTHN系と呼ばれる日本製のディーゼルカー1)。前面の表情や側面のコルゲートなど、日本で走っていてもあまり違和感がなさそうな雰囲気の車両である。本線系では以前ご紹介したようなディーゼル機関車牽引の客車列車が走っているが、メークロン線・マハーチャイ線ではこの日本製のディーゼルカーで統一されているとのこと。 乗車した列車はエアコンなし3等車だけをつなげた3両編成であった。列車によってはエアコン付の2等車が連結されており、時刻表にその旨の表示がしてある。時刻表によればマハーチャイ線の列車全17往復中5往復の列車にエアコン付の2等車が連結されているようである。

タイ国鉄では列車ごとに運賃を徴収しているようなので、きっぷはとりあえずマハーチャイまで購入する。マハーチャイ線を含めてメークロン線は各駅停車のみの運行となっているので、運賃は3等車の扱いで15バーツであった。ウォンウィエンヤイからマハーチャイまでは距離にして約30km、時間にして1時間ほどだが、それでいて日本円にして約55円の運賃ってのはだいぶ安いと言える。

X53723.jpg

タイ国鉄 THN系気動車の車内
2015.2.13/**

▲プラスチック製の座席が並ぶTHK系気動車の車内

6時30分、列車は5分ほど遅れてウォンウィエンヤイ駅を発車。車内は座席が埋まり、立ち客がちらほら見える程度の乗車率である。さすがにこんな朝っぱらからローカル線に乗るなどという酔狂な観光客はほぼ皆無で、我々が地元の乗客に混ざる形となった。

ウォンウィエンヤイ駅を出発した列車はかなり飛ばしている。飛ばしているといってもその速さはせいぜい50〜60km/h程度だと思うのだが、線路の保線状態があまりよろしくない上に、単線の線路際ギリギリまで迫った民家の軒先をかすめるようにして走るので、スピード感は抜群だ。そして、エアコンがないゆえに窓は全開。窓から手や顔を少しでも出していたならば、線路際にある何かにぶつかってしまいそうで怖い。先頭車両の方からやたらと警笛の音が聞こえてくるが、軌道内立ち入りやいわゆる勝手踏切を警戒してのことなのだろう。保安装置は特に設置されておらず、本線上に出ている列車が互いに無線でやりとりしながら運行しているとのことで、なかなかスリリングな乗り物である。

駅は比較的こまめに設けられており、列車は日本の大都市圏の電車のように走っては停まるを繰り返している。そして、意外にも各駅で乗客の入れ替わりがある。通勤客はもちろん、大量の荷物をかかえた行商とおぼしきおばちゃんや学生が乗ってきたりしていて、あわただしい朝の風景が展開している。途中駅で交換したバンコク方面行の列車も混雑しているのが見えた。年がら年中遅延しまくってるタイ国鉄の列車で通勤や通学なんて大丈夫なのか? と思ったが、マハーチャイ線は短距離かつ独立した線区ゆえにそれなりの定時運行ができているらしい。列車の本数もそこそこ多く、マハーチャイ線が地元の人々の足として定着している姿を見ることができた。

7時30分、列車は少しだけ遅れを取り戻し、3分遅れでマハーチャイ駅に着いた。これから川を渡ってメークロン線のメークロン側に乗り換える。スケジュールを立てる段階では列車の遅延等でうまく乗り継げるかどうか心配だったが、この分だと上手いこといきそうな感じ。

D23496.jpg

タイ国鉄 マハーチャイ駅
2015.2.13/**

▲雑然としたマハーチャイ駅構内
  • 1)THNとは、東急車輛と日立製作所、日本車両それぞれの頭文字をとったものだそう。メークロン線で使われているディーゼルカーは、より正確にはTHN系の中のNFK形という形式とのことである。

関連記事

タイ国鉄の旅 5 - マハーチャイ駅からバーンレーム駅へ

タイ国鉄メークロン線その3。メークロン線のマハーチャイ〜バーンレーム間は大きな川によって線路が分断されており、この区間は徒歩と渡船にて連絡を行なう。メークロン側にて乗る予定なのはバーンレーム駅...

タイ国鉄の旅 5 - マハーチャイ駅からバーンレーム駅へ
タイ国鉄の旅 3 - 早朝のバンコク=ウォンウィエン・ヤイ駅

タイ国鉄その3。前回、前々回は華やかな本線系の様子を取り上げたが、それとは別にメークロン線というローカル線に乗ってきたので、こちらもご紹介しよう。タイ国鉄メークロン線は、バンコクとメークロンを...

タイ国鉄の旅 3 - 早朝のバンコク=ウォンウィエン・ヤイ駅
タイ国鉄の旅 2 - 特急"スプリンター"9レに乗る

タイ国鉄の旅、前回はフワランポーン駅の様子を紹介したが、フワランポーン駅に来たのは他でもない、列車に乗るためである。アユタヤ王朝の遺跡群で有名な、古都アユタヤへ向かう。ボロの客車列車に後ろ髪を...

タイ国鉄の旅 2 - 特急
タイ国鉄の旅 1 - バンコク・フアランポーン駅の喧騒

バンコクの交通事情に引き続き、タイ国鉄のあれこれを取り上げていこう。まずはバンコクの中央駅、フアランポーン駅の様子をば。フアランポーン駅はタイ国鉄の主要幹線、タイ北部最大の都市チェンマイに向かう...

タイ国鉄の旅 1 - バンコク・フアランポーン駅の喧騒
タイ 灼熱のバンコク交通見聞 6 - バンコクのバスあれこれ2

バンコクの交通見聞、前回に引き続き戦勝記念塔の大ロータリーにて撮影したバンコクのバスをご紹介。直営エアコンバス(ユーロ2バス) BMTA直営のエアコンバスである。1998年から2000年代初頭に...

タイ 灼熱のバンコク交通見聞 6 - バンコクのバスあれこれ2

おすすめの記事

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K

京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K
京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)

空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...

京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)
都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える

都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で...

都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える
船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」

「ふなっしー」なバスが走る。船橋新京成バス2741号車が特別仕様「ふなっしー号」として走ってる。「ふなっしー」といえば千葉県船橋市を中心に暴れている同市で人気の非公認キャラクターだが、2023年...

船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」
北総車の京急線内特急運転が復活

約19年ぶりに復活した北総車の京急線内特急運転を見る。京急線に大きな変化をもたらした2022年11月ダイヤ改正。京急自ら「23年ぶりの大改正」としたこのダイヤ改正では、特に日中時間帯の運行...

北総車の京急線内特急運転が復活