2016.01.03
前回に引き続きタイ国鉄のローカル線、メークロン線に乗る。まずはマハーチャイ線区間のマハーチャイまで向かう。
車両はTHN系と呼ばれる日本製のディーゼルカー1)。前面の表情や側面のコルゲートなど、日本で走っていてもあまり違和感がなさそうな雰囲気の車両である。本線系では以前ご紹介したようなディーゼル機関車牽引の客車列車が走っているが、メークロン線・マハーチャイ線ではこの日本製のディーゼルカーで統一されているとのこと。 乗車した列車はエアコンなし3等車だけをつなげた3両編成であった。列車によってはエアコン付の2等車が連結されており、時刻表にその旨の表示がしてある。時刻表によればマハーチャイ線の列車全17往復中5往復の列車にエアコン付の2等車が連結されているようである。
タイ国鉄では列車ごとに運賃を徴収しているようなので、きっぷはとりあえずマハーチャイまで購入する。マハーチャイ線を含めてメークロン線は各駅停車のみの運行となっているので、運賃は3等車の扱いで15バーツであった。ウォンウィエンヤイからマハーチャイまでは距離にして約30km、時間にして1時間ほどだが、それでいて日本円にして約55円の運賃ってのはだいぶ安いと言える。
6時30分、列車は5分ほど遅れてウォンウィエンヤイ駅を発車。車内は座席が埋まり、立ち客がちらほら見える程度の乗車率である。さすがにこんな朝っぱらからローカル線に乗るなどという酔狂な観光客はほぼ皆無で、我々が地元の乗客に混ざる形となった。
ウォンウィエンヤイ駅を出発した列車はかなり飛ばしている。飛ばしているといってもその速さはせいぜい50〜60km/h程度だと思うのだが、線路の保線状態があまりよろしくない上に、単線の線路際ギリギリまで迫った民家の軒先をかすめるようにして走るので、スピード感は抜群だ。そして、エアコンがないゆえに窓は全開。窓から手や顔を少しでも出していたならば、線路際にある何かにぶつかってしまいそうで怖い。先頭車両の方からやたらと警笛の音が聞こえてくるが、軌道内立ち入りやいわゆる勝手踏切を警戒してのことなのだろう。保安装置は特に設置されておらず、本線上に出ている列車が互いに無線でやりとりしながら運行しているとのことで、なかなかスリリングな乗り物である。
駅は比較的こまめに設けられており、列車は日本の大都市圏の電車のように走っては停まるを繰り返している。そして、意外にも各駅で乗客の入れ替わりがある。通勤客はもちろん、大量の荷物をかかえた行商とおぼしきおばちゃんや学生が乗ってきたりしていて、あわただしい朝の風景が展開している。途中駅で交換したバンコク方面行の列車も混雑しているのが見えた。年がら年中遅延しまくってるタイ国鉄の列車で通勤や通学なんて大丈夫なのか? と思ったが、マハーチャイ線は短距離かつ独立した線区ゆえにそれなりの定時運行ができているらしい。列車の本数もそこそこ多く、マハーチャイ線が地元の人々の足として定着している姿を見ることができた。
7時30分、列車は少しだけ遅れを取り戻し、3分遅れでマハーチャイ駅に着いた。これから川を渡ってメークロン線のメークロン側に乗り換える。スケジュールを立てる段階では列車の遅延等でうまく乗り継げるかどうか心配だったが、この分だと上手いこといきそうな感じ。
- 1)THNとは、東急車輛と日立製作所、日本車両それぞれの頭文字をとったものだそう。メークロン線で使われているディーゼルカーは、より正確にはTHN系の中のNFK形という形式とのことである。
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