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エトセトラ

2018.11.19

1998年11月18日の京急線羽田空港駅1)開業に伴うダイヤ改正は、都営浅草線をはじめとするいわゆる四直にとってとても大きなものであった。その核となるのは、何と言っても羽田空港ならびに成田空港に直結する速達列車、エアポート快特の登場であろう。20周年を迎えたエアポート快特を祝して、同列車のこれまでの歩みを簡単にまとめてみようと思う。

注:以下、本稿では飛行機マークを(飛)と表記している。

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京成3700形 3818編成
2001.7.26/平和島

▲今年で20周年を迎えたエアポート快特。京急線羽田空港駅の開業に伴うダイヤ改正で登場したもので、運転開始当初は1日に4往復のみの設定であった
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京成3700形 行先表示「(飛)快特成田空港」
2001.3.14/**

▲空港間直通特急の新種別は飛行機マークを用いた独自のものが採用され、京急線と都営浅草線ではこれを「エアポート」と読むことにした。新種別の名前は既に存在していた種別との兼ね合いや列車のイメージなどからなかなか決まらず、ダイヤがほぼほぼ完成した後にようやく決定されたという
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京急線 停車駅案内(一部)

▲(飛)特急と(飛)快特の種別が記載された、1998年11月当時の京急線停車駅案内の一部分。都営浅草線で初めて通過運転を行なうことになった

(飛)快特の登場について京成電鉄の関係者が業界団体の機関誌への寄稿2)で明らかにしたところによれば、まず最初に決まったのは羽田空港〜成田空港間を都営浅草線内においても通過運転を行なう直通特急にて100分程度で結ぶということだけだったという。そこから各社局におけるダイヤ作成、あるいは社局間における調整を経て、空港間を直通する特急列車は以下のように運転されることになった。

  • 列車の種別名は従来の特急、快特に飛行機マークを付した(飛)特急・(飛)快特とする。(飛)特急と(飛)快特は都営浅草線内で通過運転を行なう。
  • (飛)快特の停車駅は、羽田空港、京急蒲田、品川、泉岳寺、三田、新橋、日本橋、東日本橋、浅草、押上とする。
  • (飛)特急の停車駅は、京急線内と京成線内は特急と同一、都営浅草線内は(飛)快特と同一とする。
  • 羽田空港〜成田空港間直通の(飛)快特を80分おきに運転する。京成線内は(飛)特急として運転する。運転本数は平日ダイヤ・土休日ダイヤともに日中時間帯に4往復。
  • (飛)快特の合間に羽田空港〜高砂間を走る(飛)特急を80分おきに運転する。

(飛)特急と(飛)快特の設定にあたっては、京急線〜都営浅草線内は従来羽田〜押上間で運転していたものを格上げ、京成線内は上野発着の本線特急を80分に1本の割合で羽田空港発着とし、これらのスジを繋げることで実現させている。高砂発着となる(飛)特急も青砥で上野発着の京成本線特急に接続することとなり、(飛)快特の区間便的な存在である(飛)特急でも1回の乗換えで羽田・成田の両空港へ行けるようダイヤが組まれた。また、京成線内では羽田空港発着の(飛)特急に接続する区間特急を上野〜高砂間で設定し、上野発着である本線特急の減少分を補った。

1998年11月18日ダイヤ改正

かくして1998年11月18日を迎え、日本初となる空港間直通特急の運行が開始されたのである。羽田空港を発着する(飛)快特と(飛)特急に係わる列車の運行番号は、京急側の都合で01H〜、01T〜、01K〜というふうに他の列車とは別に付番され、空港間直通特急は四直におけるフラッグシップ的な列車にして、その列車番号からも特別感が漂うものであった。

そして、何より趣味的に面白かったのはその車両運用であった。新しく設定された空港間直通特急は、要するに空港間直通の(飛)快特と高砂発着の(飛)特急がそれぞれ80分おきに運転されるという、時刻表上はたいへんシンプルなもののように見えた。ところが、ふたを開けてみれば都営車、京急車、京成車が各線を入り乱れて走りまくるという状況が発生していたのである。

その原因は、羽田空港と成田空港両駅における列車の折返し方にあった。例えば、羽田空港発成田空港行の(飛)快特→(飛)特急は、そのまま羽田空港行として折返すのが最もシンプルな方法である。しかし、羽田空港から成田空港にやってきた(飛)特急は、さまざまな制約から上野行として折返せざるを得なかった。空港間直通特急には京成車のほかに京急車と都営車も使用されていたが、これは京急車と都営車が上野まで乗入れることを意味した。これにより、いわゆる上野線区間を初めて京成車以外の車両が走ることにもなった。

また、羽田空港における(飛)快特と(飛)特急も、折返しで(飛)快特あるいは(飛)特急とはならずに、急行成田行で折返すことになった。したがって、空港間直通特急に使用される車両は、空港間直通特急だけでなく羽田空港〜成田・東成田の急行と上野〜成田空港の京成本線特急という3つの運行系統を縦断的に走り回るという、まさに複雑怪奇という言葉がふさわしい運用が組まれたのだった。

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京急600形 601編成
2002.7.31/新三河島

▲上野線の高架区間を行く京急600形の(飛)特急上野行。さまざまな制約から成田空港行の空港間直通特急は成田空港で上野行として折返すものとされ、複雑な運用を生じさせることになった

この当時の運用がどれくらい複雑だったかというと、以下を見ればおわかりになっていただけよう。1998年11月のダイヤのおける、(飛)快特あるいは(飛)特急に係わる運用の一部を書きだしてみたものである。

  • 【平日】77→1H→11TH→77/41TH
    神奈川新町○、677X回送(京急蒲田行)→(77運行で空港線往復)→901H(飛)特急/(飛)快特成田空港行→1100H(飛)特急上野行→1301H普通高砂行、高砂△。高砂○、1510TH急行羽田空港行→(77運行で空港線往復)→1841TH急行/普通印西牧の原行→2040TH普通/急行羽田空港行→(77運行で空港線往復)→2476普通羽田空港行、羽田空港△。
  • 【土休日】59H→19H→1H→7H→19TH→59H
    久里浜工場信号所○、559H回送(堀ノ内行)→558H特急三崎口行→659H特急/普通青砥行→818H普通/特急羽田空港行→901H(飛)特急/(飛)快特成田空港行→1100H(飛)特急上野行→1301H普通高砂行、高砂△。高砂○、1406H(飛)特急羽田空港行→1519TH急行成田行→1718TH回送、宗吾参道△。宗吾参道○、1819TH回送(成田行)→1818TH急行高砂行→1958H普通/特急三崎口行→2259特急神奈川新町行、神奈川新町△
  • 【平日】31T/03T
  • 西馬込○、631T急行成田行→830T急行上野行→1031T(飛)特急成田空港行→1102T(飛)特急/(飛)快特羽田空港行→1331T急行成田行→1530T急行西馬込行→1731T普通青砥行→1930T普通西馬込行→(西馬込〜泉岳寺往復)→2031T西馬込行、西馬込△。
  • 【土休日】31T/05T→69T
    西馬込○、731Ta普通泉岳寺行→730T普通西馬込行→731Tb急行成田行→930T回送、宗吾参道△。宗吾参道○、1131T普通東成田行→1230T急行羽田空港行→1405T(飛)特急高砂行1504T(飛)特急羽田空港行→1731T急行高砂行→1868T普通/特急三崎口行→2069T特急京急久里浜行→回送、久里浜工場信号所△
  • 【平日】51K→05K→A01
    宗吾参道○、651K回送(成田行)→650K特急西馬込行き→851K急行東成田行→1050K急行羽田空港行→1205K(飛)特急/(飛)快特成田空港行→14A00(飛)特急上野行→16A01(飛)特急成田空港行→17A00(飛)特急上野行→19A01急行宗吾参道行、宗吾参道△。
  • 【土休日】A03→03K→55K
    宗吾参道○、6A03普通成田空港行→6A02(飛)特急上野行→8A03(飛)特急成田空港行→9A02(飛)特急上野行→11A03(飛)特急成田空港行→1202K(飛)特急/(飛)快特羽田空港行→1455K急行成田行→1754K急行西馬込行→1955K急行成田行→2154K回送、宗吾参道△

京成車が典型的な例で、最初は都営浅草線・京急線直通の急行として走っていたのに、空港間直通特急を挟んで京成本線特急の運用に移行している(その逆も然り)。京成車ならこれでもよいのだけれど、都営車と京急車がこのパターンで京成本線特急の運行系統に入った場合、放っておくとそのまま京成本線を走り続けることになってしまう。このため、都営車と京急車の京成本線特急を上野到着後に普通列車と車両交換的に振替え、その後さらに高砂でも京成車6両ないし4両編成と振替えて高砂検車区に入庫させることで、都営車と京急車を京成本線からむりやり離脱させた3)

京成本線の普通列車をも巻き込んだ車両のやりくりは、結果的にこれらが高砂で分断されるという弊害を生むことになった。今では考えられないことだが、日中時間帯におけるかなりの本数の普通列車が高砂止となり、乗換えを強いられていたのである。このほかにも京急線側では(飛)快特が設定されたおかげで、京急蒲田付近の単線区間の制約から、本来は羽田空港発着で運転されるはずの北総線系統列車の一部が京急川崎発着となるなどの強引さも見られた。このように、エアポート快特が設定された最初のダイヤは、空港間直通特急の運行を優先するあまりに、他の部分でさまざまな犠牲が生じていたという印象は否めなかった。

1999年1月15日ダイヤ修正

早朝5時台に泉岳寺始発羽田空港行の(飛)快特(平日516TH、土休日516T)が新設された。この列車が快特ではなく(飛)快特とされたのは、当時はまだ空港線内に快特の設定がなかったため。京急線内で完結するというイレギュラーな(飛)快特がさっそく登場した。

1999年7月31日ダイヤ改正

京急線の1999年7月ダイヤ改正は、日中時間帯の優等列車を快特に統一した上で快特と普通車の割合を基本的に1:2とする、今日の京急線のダイヤの基礎となる大改正であった。このダイヤ改正では青砥・高砂発着の(飛)特急が全て(飛)快特に格上げされ、合わせて都営浅草線でも(飛)特急として運転していた列車を(飛)快特での運転に変更した。このため、京急線と都営浅草線では早々に(飛)特急が廃止されることになった。

また、このダイヤ改正で京急線の快特が快速特急の省略形から正式に快特とされたため、(飛)快特もエアポート快速特急からエアポート快特になった(ただし、都営浅草線では引き続きエアポート快速特急の名称を使用)。

2000年7月22日ダイヤ改正

運用が一部変更された。

2000年12月12日に、都営大江戸線環状部の開業に伴って(飛)快特の停車駅に大門が加えられた。

2001年9月15日ダイヤ改正

京成側でダイヤが変更され、従来は羽田空港駅において東成田始発の急行列車の折返しで(飛)快特となるようにしていたものを、高砂始発の普通列車(押上から急行)からの折返しとした。このため、北行の(飛)快特については、高砂→羽田空港→成田空港→上野→高砂で完結する運用となり、ダイヤが多少組みやすくなった。

また、(飛)快特専用の運行番号(01H〜、01K〜、01T〜)の使用を取りやめ、前後の列車の運行番号のまま運転とした。

(つづく)

  • 1)羽田空港駅は2010年10月に改称し、現在は羽田空港国内線ターミナル駅となっている。
  • 2)運転協会誌1999年3月号『我が社のダイヤ』。
  • 3)もちろんこの逆パターンもあった。高砂から普通上野行で出庫し、上野で折返し(飛)特急で成田空港へ。そこから(飛)特急→(飛)快特羽田空港行の空港間直通特急として走った。
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