2021.02.28
さようなら、ムーンライトながら。
1月22日、JR東海は春の臨時列車の運転計画の中で臨時快速「ムーンライトながら」の運転終了を発表した1)。人々の行動様式の変化による列車の使命の薄れや使用車両の老朽化が理由だという。SNS等では青春18きっぷ利用者を中心に残念がる声が多く挙がった。私としても何度かお世話になった列車なので、記憶の整理を兼ねて思い出を記したいと思う。
1度だけ利用した救済臨
青春18きっぷ利用期間中に運転されていた東京〜大垣間の臨時普通列車、通称「大垣夜行救済臨」。後述のムーンライト91号・92号の前身となる列車だが、1度だけ利用したことがあった。高校の頃、友人と青春18きっぷを利用して関西方面に出かけた折、これに乗って東京に帰ってきた。当時、ムーンライトながらという存在もよく知らなかった中で、時刻表をめくっているうちにこの列車を見つけ、18きっぷだけで乗れるし朝に東京に着くならちょうどいいよねとなったのがきっかけだったと思う。
車両は165系であった。この列車についてよく知らなかった当時の私は、急行型の車両に乗れるのかよと驚いた記憶がある。165系のボックスシートで過ごす6時間はキツかったはずだが、ほとんど覚えていない。旅行の最終日だったし、爆睡しているうちに東京に着いたのだと思う。私が165系に乗ったのは後にも先にもこれだけだった。
自由席に特攻して地獄を見る
大学生になって行動範囲が広がると、青春18きっぷを使って遠くに出かけるようになった。その中で、ムーンライトながらを利用するようになるのは自然の流れであった。
最初にムーンライトながらを利用したのは大学1年の夏休みだったかと思う。この時はムーンライトながらという存在をナメていた。というか、よくわからなかった。そんなこともあって座席指定券を取ろうとしたのはこともあろうに旅行当日、券売機を叩いてみても指定席は満席だった。当たり前ながら、18きっぷ期間中の同列車は押しも押されもせぬ人気列車。乗車日に指定券を取ろうなんてのはただのアホである。よほど運が良くない限り無理な話である。
当時のムーンライトながらは、9両のうち7〜9号車が小田原から自由席となっていた。したがって、小田原からなら指定券を持たずとも飛び乗ることができた。指定券を持っていない私はどうしたかというと、小田原から乗車すればなんとかなるだろうと思ってしまったのだ。
ところが、小田原までの指定席が売り切れているということは、その時点で満席であることは自明の理。かつ、ノーショーで空いていた座席も旅慣れた猛者によってたちまちに埋まってしまう。私みたいなペーペーが座席にありつけるわけがなかった。なんとかならなかったわけである。
かくして、初めてのムーンライトながら乗車は小田原から名古屋まで立ちっ放しとなった。控えめに言っても地獄である。今度からこの列車を利用するときはきちんと指定券を取るぞという何ら当たり前の決意をし、旅行初日にもかかわらずふらふらになりながら名古屋で下車したのだった。
ムーンライトながら91号・92号
ムーンライトながらには定期列車と18きっぷ利用期間のみ運転されるムーンライトながら91号・92号という臨時列車があった。後者は2003年の夏から救済臨に代わって設定された列車で、車両は田町車両センターの183系・189系を使用していた。
私はどちらかというとムーンライトながら本体よりも臨時91号のほうを好んで乗っていた。その理由は単純で、豊橋からほとんど各駅停車になる定期列車に対し、91号は豊橋以降もすっとばして運転してくれたから。定期列車の豊橋から停車駅が増えるの、あれ地味にきついっすよマジで。品川をほぼ同時に出ていた両列車だが、大垣に着くころには1時間ほどの差が生じていた。旅行先の1時間は非常に大きい。
本体でも91号でも小田原から乗車することが多かったように思う。小田急線で小田原まで行き、小田原で18きっぷに日付を入れてもらうのが(確か)最安とかいう貧乏くさい理由である。あとは、あのしんどい列車に長く乗っていたくないというのもあった気がする。小田原から乗車すれば名古屋まで4時間強、大垣まで5時間弱なので、多少は気が楽だった。
静岡始発普通東京行338M
東海道線普通321M・338M。青春18きっぷをよく利用していた人で、この列車を知らないのはモグリである。321M東京始発普通静岡行と338M静岡始発普通東京行は、ムーンライトながらの送り込み運用として373系で運転されていた、いわゆる乗り得列車であった。
普通乗車券のみで特急型の373系に乗れるというのもさることながら、東京〜静岡を直通してくれるのも大きかった。私が特に利用したのは上りの東京行。338M普通東京行に乗ると日付が変わるか変わらないかくらいに帰宅できるというちょうどよさから、名古屋を夕方ごろに出てこの列車に接続するような行程もよく組んだし、静岡で遊んだ時もこの列車で帰ることが多かった。クモハの車端寄りの山側座席に陣取り、東芝GTO-VVVFのサウンドを堪能しながら夜の東海道線を上るのが私の中での定番であった。
321M・338Mは2009年3月のムーンライトながら定期列車廃止後も生き残ったが、2012年3月ダイヤ改正で列車が沼津で分割されることになり、結局は消滅してしまった。本当によく利用した列車だったので、ムーンライトながらの定期廃止よりもこちらがなくなる方が悲しかった。
◆ ◆ ◆
・・・とまあ、ムーンライトながらについての思い出はこんな感じである。あくまでも移動の手段として乗っていたので印象が薄いのと、基本的にしんどい列車なのであまりいい思い出がない。大垣行に乗るときは旅行のワクワクで、東京行に乗るときは旅行の疲れで乗り切っていたのだと思う。あとは若さというのもあったか。また乗りたいか? と問われてももう乗りたくねぇって感じだが、列車の廃止が決まってしまった今となっては、ああいった列車で旅行する経験ができたのはよかったのかもとも思っている。
2010年以降はムーンライトながらを利用する機会もほとんどなくなったので、状況についてはよくわからない。特に、末期の185系を使用した列車は乗らず終いだった。しかし、シーズンごとに運転日がどんどん減らされていったのはいろいろと情報が流れてくる中で知っていた。列車が廃止に向かっていたのは明らかであった。
そうして、冒頭のとおりJR東海より運転終了の発表があったわけだが、臨時列車にありがちないつの間にか消えていたというパターンではなく、きちんと廃止が明示されたのは幸いなことであっただろう。
- 1)"春"の臨時列車の運転計画について[PDF] - JR東海の2021年1月22日付プレスリリース。なお、同列車が運転されたのは2020年の春が最後。以降は新型コロナウイルス感染症の影響もあって運転日が設定されなかった。
- JR東海
- 廃止
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