KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2010.12.01

次なる目的地に移動するため、まずはチェコ南部のチェスケー・ブジェヨヴィツェ(České Budějovice)という都市に向かう。ウィーンとチェスケー・ブジェヨヴィツェを直通する列車はないので、オーストリア・チェコ国境の駅チェスケー・ヴェレニツェ(České Velenice)で普通列車を乗り継ぐことにする。

チェスケー・ヴェレニツェ行の列車は、リングのやや北にあるフランツ・ヨーゼフという駅から出ている。駅名となっているフランツ・ヨーゼフとは調べてみれば、オーストリア=ハンガリー帝国のオーストリア皇帝でありハンガリー国王であった人物の名前だそう。こんだけ大層な駅名なのだから、どれだけ立派な駅舎が待っているのだろうとワクワクして行ってみたら、ホームが地下に隠れているような何とも地味なターミナルであった。ちょっとがっかり。

P11237.jpg

オーストリア連邦鉄道1116形 81号機
2010.9.16/Franz Josef

▲オーストリア鉄道1116形電気機関車"Taurus"

列車の発車時刻に合わせてホームに行くと、目の前に止まっていたのはRailjetでも世話になった1116形"Taurus(タウルス)"を先頭にした客車列車であった。都市内で完結する近郊列車は日本で多く走っているようないわゆる動力分散式の電車の場合が多いが、都市間を結ぶ普通列車ではこのような客車列車が中心だ。これに乗ってチェスケー・ヴェレニツェまで向かう。気分は完全に世界の車窓から、否が応でも頭の中を溝口肇によるテーマ曲が流れる。オーストリアの公共交通は全体的に質がよく、CityShuttleと名付けられた中距離普通列車も車内は清潔。なおかつ保線もしっかりしており、チェスケー・ヴェレニツェまでの2時間半はとても快適な列車の旅であった。

列車は終点のチェスケー・ヴェレニツェの1つ前の駅、グミュント(Gmünd)で5分ほど停車する。グミュントはオーストリア・チェコ国境のオーストリア側の街で、この駅を過ぎるとチェコに入国となる。グミュントとチェスケー・ヴェレニツェの駅間は1kmにも満たない距離で、まさに国境を越えるためだけの1駅といった感じ。現在はウィーンからの列車がチェスケー・ヴェレニツェまで直通しているが、以前はそれがグミュントまで、出入国管理の関係でグミュントでグミュントとチェスケー・ヴェレニツェだけを走る列車にわざわざ乗換えていたらしい。

グミュントを出発した列車はゆっくりとチェスケー・ヴェレニツェに向かう。国境越えのはずだが、どこが国境だかよくわからなかった。気づけばチェコのチェスケー・ヴェレニツェの街に入っていた。陸地は続いているにもかかわらず、目では見えない境界を越えてしまうと言語も文化も通貨も異なる領域に入るという感覚は、日本国内を旅行しているだけでは決して味わうことのできない、何とも不思議な感じであった。ちなみに、オーストリア、チェコともにシェンゲン協定への加盟国(両国だけでなくユーロ圏のほとんどが加盟国)であり、両国間を移動する場合は煩わしいイミグレーション等の検査をすることなく出入国することができる。気軽に国境を越えることができるようになっているので、ヨーロッパを旅行する場合は、周遊旅行という形で各国の文化の違いを触れながら旅をするのもよいだろう。

P11261.jpg

チェコ鉄道242形 216号機
2010.9.17/České Velenice

▲チェスケー・ヴェレニツェにて。チェコ鉄道の普通列車。なんかボロいぞ・・・

チェスケー・ヴェレニツェでチェコの普通列車に乗換える。約7分ほどで接続しており、スムーズな乗継ぎだ。海外の鉄道は時間にルーズだというハナシをよく聞くが、今回は幸いにも定刻で乗換することができた。ここからはチェコ鉄道である。車両は242形電気機関車+客車3両・・・なのだが、機関車も客車もこれまで乗ってきたオーストリア鉄道のそれと比べてしまうといかにも古臭い。国の違いによる鉄道の質の差を見てしまったようである。ここからさらに列車に揺られること約50分、ウィーンから3時間半かかってチェスケー・ブジェヨヴィツェに着いた。

◆ ◆ ◆

オーストリア鉄道1116形"Taurus"の走行音を録ってきたので掲載してみよう。Siemens製のこの電気機関車は同社製のGTO-VVVFを搭載しており、この時点で勘の良い方は気づくと思われるが、京急2100形や新1000形などと同じく"歌う"のである。駅のホームなどからTaurusの発車風景を撮った動画はYouTubeなどでよく見かけるが、車内からこの機関車の音を録った走行音は珍しいと思われる。

オーストリア鉄道1116形96号機 発車〜加速〜惰性

1駅間が半端無く長いので、今回は加速から惰性走行までで区切ってある。機関車のすぐ後ろの車両で収録したので、連結器の軋み等の雑音はご容赦いただきたい。なお、日本の機関車にありがちな鈍い加速ではなく、高い加速力でのキビキビとした走りなので、各駅停車の客車列車と言えどもストレスはさほど感じない。

オーストリア鉄道1116形96号機 惰性〜減速〜停車

こちらは惰性走行から減速、停車までである。途中で回生失効しなければ、E501系同様停車直前にいわゆる逆音階を聞くことができる。

なお、この1116形電気機関車はSiemensがヨーロッパ各国向けに開発した汎用電気機関車の一種類であり、同型の電気機関車はドイツ国鉄やハンガリー国鉄などでも見ることができる。

関連記事

中央ヨーロッパ交通見聞録 6 - チェコ地方都市の路線バス

České Budějovice(チェスケー・ブジェヨヴィツェ)からチェコのある田舎町まで、今度はバスで移動する。バスに乗るまでの少しの時間に、バスターミナルにやってくるバスを観察してみた...

中央ヨーロッパ交通見聞録 6 - チェコ地方都市の路線バス
中央ヨーロッパ交通見聞録 4 - ウィーン地下鉄

前回に続き、ウィーンの公共交通について見てみよう。今回は地下鉄を取り上げる。ウィーンの地下鉄はドイツ語圏のためメトロでもなくサブウェイでもなくU-Bahn(ウー・バーン)と呼ばれる。2010年...

中央ヨーロッパ交通見聞録 4 - ウィーン地下鉄
中央ヨーロッパ交通見聞録 3 - ウィーンの路面電車・バス

ウィーンでは観光に路面電車、地下鉄、バスをガッツリと使ったので、それぞれ気がついたことを書いてみよう。オーストリアの首都であるウィーンも、ブダペストと同様に市中を路面電車が縦横無尽に走りまわる...

中央ヨーロッパ交通見聞録 3 - ウィーンの路面電車・バス
中央ヨーロッパ交通見聞録 2 - オーストリア連邦鉄道 特急「Railjet」

ブダペストを後にした私は、国際特急列車でオーストリアの首都ウィーンに向かったのであった。ヨーロッパ主要都市間の移動は鉄道が便利だ。「TGV」や「ICE」をはじめとした高速鉄道が多く整備されている...

中央ヨーロッパ交通見聞録 2 - オーストリア連邦鉄道 特急「Railjet」
中央ヨーロッパ交通見聞録 1 - ブダペスト市電

当Webサイト始まって以来、初の海外篇。今月の中旬に所用と旅行を兼ねて中央ヨーロッパを訪れたので、現地で体験した中央ヨーロッパの交通事情を簡単にご紹介しよう。まず最初はハンガリーの首都ブダペスト...

中央ヨーロッパ交通見聞録 1 - ブダペスト市電

最新記事

最新記事

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K

京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K
京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)

空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...

京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)
都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える

都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で...

都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える
船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」

「ふなっしー」なバスが走る。船橋新京成バス2741号車が特別仕様「ふなっしー号」として走ってる。「ふなっしー」といえば千葉県船橋市を中心に暴れている同市で人気の非公認キャラクターだが、2023年...

船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」
北総車の京急線内特急運転が復活

約19年ぶりに復活した北総車の京急線内特急運転を見る。京急線に大きな変化をもたらした2022年11月ダイヤ改正。京急自ら「23年ぶりの大改正」としたこのダイヤ改正では、特に日中時間帯の運行...

北総車の京急線内特急運転が復活