KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2010.10.28

ウィーンでは観光に路面電車、地下鉄、バスをガッツリと使ったので、それぞれ気がついたことを書いてみよう。

路面電車

オーストリアの首都であるウィーンも、ブダペストと同様に市中を路面電車が縦横無尽に走りまわる都市である。2010年現在の系統数は29で、世界で最も大きな路面電車の路線網を持つ都市の1つとなっているようだ。市民の足として定着しているだけでなく、ウィーン市内を観光するのにも便利で、街並みを眺めながらの移動はそれだけで旅行者を優雅な気分にさせてくれる。

D07952.jpg

ウィーン交通局 Type E
2010.9.16/Dr-Kerl-Renner-Ring

▲ウィーン市電の主力車両であるType E
D07982.jpg

ウィーン交通局 Type A
2010.9.16/Julius-Raab-Platz

▲1995年から導入されている超低床車両Type A

車両は大きく分けて2種類のものが走っているようで、見るからに昔から走っているであろうと思われる丸みを帯びた赤と白の車両と、バリアフリー対応の低床車両である。前者はType Eと呼ばれる車両で、これは1966年から90年にかけて製造された車両のようだ(というわけで実は意外と新しいのもいる)。上の写真のように、動力を持つ連接車に動力を持たない単車がぶら下がるような、いわゆる親子電車状態で走っていることが多い。行先表示がLEDに改修されている車両もあって、これには思わず日本の土佐電鉄を連想してしまう。後者は1995年に導入された車両で、Type A(5モジュール)あるいはType B(7モジュール)と呼ばれる超低床車である。Ultra Low Floorの頭文字をとってULFと通称されることもあるようで、地面と車両の床面までの差はわずか18cm、これは世界一の低床だそう。車両の製造はSiemensで、デザインは自動車で有名なポルシェ社が担当している。

そして、車両に関して特徴的なのが、運転台が片方の先頭部にしかないことである。上の2枚の写真を見て、ドアがないことにお気づきだろうか。車両の進行方向が常に同じなので、ドアがバスのように片側にしかないのである(本当はドアのある側を撮影すればよかったのだが)。そのため、系統の終端部では必ずループ状に線路が敷設してあり、終点に到着した車両はループ線を走って、いわゆるエンド交換せずにそのまま反対方向に折返すようになっている。そのため複数系統のターミナルとなる箇所は配線が複雑になりがちで、特に6つの系統が集まるウィーン西駅電停周辺の配線はもはやカオスの様相を呈していた。

D07947.jpg

ウィーン交通局 ウィーン西駅電停周辺の様子
2010.9.16/**

▲複雑怪奇な配線となっているウィーン西駅電停周辺

観光客が最もお世話になるのは、ウィーンの都市史を語る上では外せない、かつ観光名所が点在しているRing(リング)と呼ばれる環状通りに乗入れる1、2、D系統であろう。かつてはこのRingのみを走る系統もあったようだが、現在は走っていない。その代わり、Ringのみを走るものとしてVienna Ring-Tram(ウィーン・リングトラム)という観光専用の黄色い車両が走っているが、このVienna Ring-Tramは通常の路面電車とは料金体系が異なるので注意が必要である。この他、ウィーンとウィーン郊外のバーデン地方を結ぶバーデン線と呼ばれる私鉄が、市電の1、62系統を走る路線に乗入れてRingのすぐそばまで走ってきている。

D07977.jpg

ウィーン交通局 Type E車内
2010.9.16/**

▲Type Eの車内の様子
バス

基本的には地下鉄と路面電車だけで事足りたので、バスに乗る機会は少なかったのだが、Ringの内側には路面電車が走っていないので、風景を楽しみながら移動するとなるとここはバスという選択になる。交通当局もこのことをよく判っているようで、Ring内側の観光名所を中心に回る明らかに観光客向けと思われる3つの系統(1A、2A、3A系統)を設定している。この3つの系統のうち、実際に乗ってみて、ぜひともオススメしたいのは1A系統である。1A系統のみ通常の大型車両が使用されており(2A、3A系統は小型車両)、ドイツMAN製のノンステップ車が狭隘な石畳の旧市街を右に左に走るこの系統は乗り応えも十分だ。

P11257.jpg

ウィーン交通局 8437号車
2010.9.17/Schottentor

▲1A系統に使用されるドイツMAN製のバス

◆ ◆ ◆

長くなってしまったので、地下鉄については別の機会にて。

関連記事

中央ヨーロッパ交通見聞録 6 - チェコ地方都市の路線バス

České Budějovice(チェスケー・ブジェヨヴィツェ)からチェコのある田舎町まで、今度はバスで移動する。バスに乗るまでの少しの時間に、バスターミナルにやってくるバスを観察してみた...

中央ヨーロッパ交通見聞録 6 - チェコ地方都市の路線バス
中央ヨーロッパ交通見聞録 5 - 中距離普通列車に乗る

次なる目的地に移動するため、まずはチェコ南部の都市チェスケー・ブジェヨヴィツェ(České Budějovice)に向かう。ウィーンとチェスケー・ブジェヨヴィツェを直通する列車はないので...

中央ヨーロッパ交通見聞録 5 - 中距離普通列車に乗る
中央ヨーロッパ交通見聞録 4 - ウィーン地下鉄

前回に続き、ウィーンの公共交通について見てみよう。今回は地下鉄を取り上げる。ウィーンの地下鉄はドイツ語圏のためメトロでもなくサブウェイでもなくU-Bahn(ウー・バーン)と呼ばれる。2010年...

中央ヨーロッパ交通見聞録 4 - ウィーン地下鉄
中央ヨーロッパ交通見聞録 2 - オーストリア連邦鉄道 特急「Railjet」

ブダペストを後にした私は、国際特急列車でオーストリアの首都ウィーンに向かったのであった。ヨーロッパ主要都市間の移動は鉄道が便利だ。「TGV」や「ICE」をはじめとした高速鉄道が多く整備されている...

中央ヨーロッパ交通見聞録 2 - オーストリア連邦鉄道 特急「Railjet」
中央ヨーロッパ交通見聞録 1 - ブダペスト市電

当Webサイト始まって以来、初の海外篇。今月の中旬に所用と旅行を兼ねて中央ヨーロッパを訪れたので、現地で体験した中央ヨーロッパの交通事情を簡単にご紹介しよう。まず最初はハンガリーの首都ブダペスト...

中央ヨーロッパ交通見聞録 1 - ブダペスト市電

最新記事

京成電鉄 モーニングライナー・イブニングライナーの特急料金を改定

京成線、モーニングライナーとイブニングライナーを実質値上げ。11月23日、京成電鉄では京成本線で運行している座席指定制の特急列車モーニングライナーとイブニングライナーの特急料金の改定を実施した...

京成電鉄 モーニングライナー・イブニングライナーの特急料金を改定
四直珍列車研究 136 - 平日 720T

唯一、かつ初めての羽田空港行。京成線や北総線、都営浅草線では、23日にダイヤ修正が実施される。ダイヤ修正前日の記事として、今回も消えてしまう珍列車を取り上げてみよう。平日720Tレ特急羽田空港行...

四直珍列車研究 136 - 平日 720T
京成線 2024年11月23日ダイヤ修正

京成電鉄では、11月23日にダイヤ修正を行う。今回のダイヤ修正について、プレスリリースや15日発売の京成時刻表Vol.33などで明らかになっている情報を基に、その内容を見てみよう。本稿では...

京成線 2024年11月23日ダイヤ修正
四直珍列車研究 134 - 平日 1681K

京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K
京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)

空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...

京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)