2018.07.09
京急電鉄と東京都交通局、京成電鉄では、6月に三社局の相互直通運転50周年を迎えたことからこれを記念したキャンペーンを実施しているところである。このキャンペーンではこれまでに花電車の展示やスタンプラリーなどが行われているが、7月7日、8日および8月18日、19日には臨時列車「成田山号」と「城ヶ島マリンパーク号」のリバイバル運転が実施された。
「成田山号」と「城ヶ島マリンパーク号」は、1970年代に運転されていた臨時列車である。三浦海岸発成田行を「成田山号」、成田発三浦海岸行を「城ヶ島マリンパーク号」として、合わせて1日4往復もの列車が行楽シーズンに走っていたという1)。都営浅草線を介して三浦半島から成田山まで線路が繋がっていることの象徴とも言えるこの臨時列車は、鉄道趣味誌の特集などで都営浅草線系統の直通運転を回顧するにあたっては必ずと言っていいほど取り上げられるものなので、リアルタイムで見たことがなくともその存在はよく知られていることかと思う。そして今回、その歴史上の列車が平成最後の夏に蘇ることになった。「成田山号」と「城ヶ島マリンパーク号」は1978年を最後に運転されなくなってしまっていたようなので、実に40年ぶりの復活2)ということになるだろうか。
車両は京急1500形1707編成と京成3000形3038編成が使用された。列車は「成田山号」と「城ヶ島マリンパーク号」ともに各日1本ずつの運転とされ、1707編成は7月7日の「成田山号」と同8日の「城ヶ島マリンパーク号」に、3038編成はその逆に充当。その際、1707編成は京成の宗吾車両基地に、3038編成は京急の久里浜車両管理区にそれぞれ停泊し、互いの車両が2日間で1往復するように設定されている。8月の運転でも同様であった。往時の「成田山号」と「城ヶ島マリンパーク号」においても京急車と京成車が半分ずつ担当していたそうなので、今回のリバイバル運転ではそういったところも踏襲する格好になった。
以下、今回の「成田山号」と「城ヶ島マリンパーク号」がどのように運転されたか、簡単にまとめてレポートとする。
成田山号
ダイヤ:三崎口8:18→泉岳寺9:35→押上9:59→成田11:19。「成田山号」はもとより定期列車として設定されている881Hレ特急高砂行を成田まで延長したものとして運転された。定期列車としての881Hレは品川より普通となるが、「成田山号」を運行するにあたっては始発の三崎口から種別行先を特急成田行とし、終着の成田まで特急のまま走った。このため、「成田山号」は881Hレの本来の停車駅である曳舟、八広、四ツ木、立石に臨時停車、さらにダイヤの都合で後続の快速に追い抜かれる小岩にも臨時停車し、ドア扱いを行なった。
7月8日と8月19日の「成田山号」は京成車が京急車の定期列車を受け持つ格好となったことから、列車番号を881HKレとして運行された。
城ヶ島マリンパーク号
ダイヤ:成田7:10→押上8:32→泉岳寺8:57→三浦海岸10:07。列車番号は798Kレ(798Hレ〜798SH)、京成線内は特急、都営浅草線・京急線内は快特として運行。
何と言っても特筆すべきは京成車。6月中旬に発表されたプレスリリースでは使用車両への言及がなかったため、三浦海岸の行先表示を持っていない京成車がはたしてこの列車に充当するのかどうかの注目が集まっていた。そして当日、蓋を開けてみれば3038編成がなんと三浦海岸の行先表示を備えて登板。金町行のデータをわざわざ書き換えて対応した模様だが3)、これには京成なかなかやるなあ! と思わずにはいられないところである。この三浦海岸の行先表示は設定器できちんと設定できるように改修されており、車内のLCD案内表示機もしっかりと動作していた4)。
また、京成車の定期運用の範囲外である京急蒲田以南に営業列車として入ったというのも大きなできごとと言えるだろう。特に、三崎口まで入線するのは7年ぶりのこと。その7年前というのは2011年3月12日、東日本大震災翌日の混乱の中でのできごと5)だった。したがって、今回の臨時列車により「京成車が最後に三崎口まで入線した」のが「東日本大震災直後の混乱」から「3社局直通50周年記念」という明るい話題に書き換わったのである。こういった点においても、たいへん意義のある企画だったように思われる。
「成田山号」「城ヶ島マリンパーク号」運転に伴う運用変更
881Hレが881HKレとして運行された日(すなわち京成車の「成田山号」が走った7月8日と8月19日)については、その前運用である780Hレ回送〜781Hレ特急堀ノ内行〜780HXレ特急三崎口行も全て81HK運行として京成車で運転した。これにより、京成車の特急堀ノ内行と特急三崎口行が見られた。特急堀ノ内行については、京成3000形に堀ノ内の行先表示が備わっていないため、行先表示を特急のみとして京急側が用意した堀ノ内の行先板を貫通扉の窓ガラスに装着して運行した。
また、前述のように「成田山号」は高砂行の定期列車を成田まで延長した格好となったので、本来の行路で高砂到着後に折返しで走る1080Hレ普通三崎口行に使う車両がいなくなってしまう。そこで、新町検車区から8両編成1本を97H運行として高砂まで臨時回送し、これを1080Hレより81H運行に充当させた6)。
◆ ◆ ◆
長距離の臨時列車を同時に2本、2日連続で走らせるという四直では近年稀に見る大ネタとなった「成田山号」「城ヶ島マリンパーク号」のリバイバル運転。これはまさに、50年という長い時間で築いてきた三社局の強固な関係によって実現したものと言えるだろう。
8月18日と19日にも同一の内容でこれらの臨時列車が運行される予定である。
※8/20更新
- 1)当初は三浦海岸発着だったが、1975年の三崎口駅開業でこれらの列車も三崎口発着になった。
- 2)ただし、「成田山号」については2015年2月に3300形のさよなら運転で上野始発の列車として運転されている。
- 3)京成3000形が表示可能な行先の中で、最も使用される可能性が低い金町が選ばれたものとみられる。今回の臨時列車で使用された3038編成のほか、予備として3037編成と3036編成も同様の改修が実施されている。
- 4)3000形の行先表示は、このほかに表示制御器と呼ばれる機器により設定が可能である(いわゆる強制表示)。こちらはより直接的に行先を表示させる格好となり、車内のLCD案内表示機は動作しない。
- 5)3050形3051編成が三崎口まで1往復した。
- 6)各日における97H運行の充当車は次のよう。7月7日:1105編成、8日:1089編成、8月18日:1713編成、19日:1089編成。
関連記事
京急線・都営浅草線・京成線・北総線「相互直通運転30周年記念」ヘッドマーク
祝・相互直通運転30周年。都営浅草線を介して直通運転を行う東京都交通局と京成電鉄、京急電鉄、北総鉄道では、2021年3月31日に相互直通運転開始から30周年を迎えることを記念してヘッドマーク電車...
京急・都営・京成「相互直通50周年記念」ヘッドマーク
京急電鉄と東京都交通局、京成電鉄では、2018年6月に三社局の相互直通運転50周年を迎えたことからこれを記念したキャンペーンを実施しているところである。昨年7月と8月に臨時列車「成田山号」と...
京急線・都営浅草線相互直通50周年 1500形「花電車」を展示
祝・京急線の都心乗入れ50周年。今年で創業120周年を迎える京急電鉄。1世紀以上ものあいだ鉄道事業を行ってきた京急において、特にエポックメイキングなできごととは何だろうか。少なくとも...
京急×都営地下鉄×京成×北総 相互直通25周年ヘッドマーク
25周年オメデトウ。京浜急行および東京都交通局、京成電鉄、北総鉄道の4社局では、2016年3月31日に4社局の相互直通運転25周年を迎えたことを記念して、4月25日よりヘッドマークを掲出している...
最新記事
最新記事
四直珍列車研究 134 - 平日 1681K
京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...
京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)
空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...
都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える
都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で...
船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」
「ふなっしー」なバスが走る。船橋新京成バス2741号車が特別仕様「ふなっしー号」として走ってる。「ふなっしー」といえば千葉県船橋市を中心に暴れている同市で人気の非公認キャラクターだが、2023年...
北総車の京急線内特急運転が復活
約19年ぶりに復活した北総車の京急線内特急運転を見る。京急線に大きな変化をもたらした2022年11月ダイヤ改正。京急自ら「23年ぶりの大改正」としたこのダイヤ改正では、特に日中時間帯の運行...