2024.06.20
5月20日付けのプレスリリース1)でついにベールを脱いだ京成電鉄の新型車両、3200形。これまでに明らかになっている情報を基に、3200形がどういった車両なのか、また3200形の導入で起こりうる車両の動きなどを考えてみよう。
まずは、京成の発表で明らかになったことをまとめておこう。
- コンセプトは「人や環境にやさしいフレキシブルな車両」
- 2両単位でフレキシブルに編成車両数が変更可能
- 車体は3000形と3100形に引き続き日車式ブロック工法を採用
- 京成車両伝統の赤と青のカラーリングを踏襲したデザイン
- 先頭車の正面中央に貫通扉に配置し、連結運転時に常時通り抜け可能とする
- 制御装置には最新の半導体を使用したSiC-VVVFを採用
- 先頭車に車椅子スペース、中間車にフリースペースを配置
- 3100形と同様に各ドア上に17インチLCD案内表示器を2画面設置
- 非常通話装置と連動可能な防犯カメラを1両あたり3台設置
- 2025年冬の導入を目指す
また、交通系ネットメディアの取材などで次のようなことも明らかになっている。
- 2両単位で編成組み換えの2両とは、「先頭車+中間車」を指す
- 京成各線のほか、直通各社局線も走行可能とする
- 3100形は導入終了
「人や環境にやさしいフレキシブルな車両」
1972年デビューの3500形以来、実に半世紀ぶりに編成車両数が変更可能な仕様の車両として登場する3200形。そのコンセプトはズバリ「人や環境にやさしいフレキシブルな車両」。編成の組み換えができることを第一とした車両であることがコンセプトからもうかがえる。
編成は4両編成を基本としており、こちらも3500形以来となる4両編成の新車ということにもなっている。編成組み換えは「先頭車+中間車」の2両単位で行うとされ、通り抜けが可能な前面貫通扉の採用と合わせれば、要するに3500形と同じことをできるようにしたということのよう。
京成では3600形と3700形から6両編成と8両編成で固定編成化が進み、編成組み換えが可能な3500形も現在はワンマン運転やデジタル無線の関係で事実上の固定編成となっている。すなわち、単に車両を置き換えるだけなら4両編成と6両編成、8両編成をそれぞれ導入すれば足りるわけであるが、ここに編成組み換えという仕様が加わるのは、やはり4両と6両、8両の共通予備的に使用できる便利な存在がほしいということだろうか。
車両番号は3000形と3100形で採用したハイフン付きのものから、3700形以前の4桁の方式に戻った。今回公開されたイメージ図より、最初の4両は3204〜3201となる模様。編成の組み換えを伴う上で、編成番号が前に出るハイフン付きの番号は合わないという判断であろう。次の4両が3208〜3205になるか3214〜3211になるかどうかは今のところわからない。
4両編成の新車ということで、現在4両編成の一部列車で実施されているワンマン運転にも対応しているものと思われる。車両側面、乗務員室扉の後方上部に見える謎の出っ張りは車外カメラの取付台座だろうか。仮にここにカメラを設置するならば、将来的にワンマン列車の駅発着時における駅係員の立ち会いが解消される可能性がある。
デビューは2025年冬を目指すとし、第1陣となる今年度は6両を導入するという。6両なので編成の形態は4+2あるいは2+4になるものと思われるが、導入においても4両単位ではなく2両単位で必要な分だけできるという、3200形のフレキシビリティがさっそく発揮される格好。なお、最初の6両は日本車両製であることがメディアの取材で明らかになっている。また、3100形は成田スカイアクセス線仕様の50番台7編成をもって導入終了になる模様だ。
外観
車体は日車式ブロック構法を用いた構造のものを採用。前面は貫通型ながら、3100形と同品とみられる急行灯・尾灯のライトユニットや帯の入れ方などから、どことなく3100形を意識させる見た目となった。外観だけで言えば、3100形の前面貫通型バージョンといった感じである。
カラーリングは京成本線用ということで京成伝統の赤(ヒューマンレッド)と青(フューチャーブルー)が用いられているが、腰の帯を赤のみ、屋根肩の帯を青のみとするこれまでにないパターンとなっているのが大きな特徴である。京成の赤と青は現在のカラーリングが採用されてから必ずセットで用いられていたので、既存の車両との大きな違いとなる。特に前面は青い部分が赤い部分より広く、なんだか別の会社2)の車両のような印象すら受ける。
このほか外観で目立つのは、先頭車両の連結器であろう。京成では従来より自動連結器を使用しているが、3200形では分割・併合を行うことから電気連結器付きの密着連結器を採用した。かつての「開運号」用の車両だった1500形が中間車に電気詮付きの連結器を使っていたというが、電気連結器の採用はそれ以来になるだろうか。少なくとも先頭車への採用は初めてのこととなる。京成では分割・併合は必ず車庫内で行われるため、単純に作業の簡略化を狙ったものと思われる。
車内
車内については、基本的に3100形の色違いとなるようである。イメージ中に見える座席袖仕切りやドア上に2枚設置される17インチLCDは3100形のまさにそれ、ドット模様の床材や桜の花をデザインに用いたシートモケットも3100形の色違いだ。気になるのはロングシートの形状。3100形のようなハイバックシートとはならなかったものの、3000形とも形状の異なる座席のように見える。
1両あたり3台設置される車内の防犯カメラについては、非常通話装置との連動により乗務員室内からリアルタイムで映像が確認できる機能を追加。ここのところ相次いでいる鉄道車両内での襲撃事件を受けたセキュリティ強化も盛り込まれた。
床下機器類について
床下の機器類については、制御装置に最新の半導体を使用したSiC-VVVFインバーターが採用されることが明らかにされている。そのほかのことはイメージで床下を簡素に表現していることもあって詳細は不明。
ただし、2両単位で組成変更可能な3200形の機器配置は、6両編成と8両編成を組むことを前提とした3100形までとは全く異なるものになるだろうことは容易に想像できる。4両編成において上野方から1両目と3両目に1基ずつ配置されているパンタグラフはその象徴だ。3200形は見た目こそ3100形に寄せているが、床下機器類の配置は3100形との大きな違いになるはずである。
3200形が置き換える車両は?
最後に、3200形によって置き換えられる車両を予想してみよう。
・3500形
これは確定。3200形の仕様や消費電力について3500形との比較に触れていることからしても、そもそも3200形が3500形の置き換えを目的とした車両であることは明らか。車齢50年を超えた老兵も、いよいよ終わりが見えてきた。
・3600形3668編成
3600形では唯一のVVVFインバーター車となっている3668編成も、4両編成ということで置き換えになる可能性が高い。4両編成の新車が入るこのタイミングで置き換えておかないと、次のタイミングがいつやってくるかわからないからだ。
なお、3668編成を置き換えるにあたって3668編成が担っていた牽引車の役をどうするかという問題が生じるが、このあたりは特に考慮する必要はないものと思われる。確かに3668編成のような存在は便利だが、なければないで別の方法を採るだけである。例えば、新京成電鉄ではN800形を80000形搬入の牽引車に使っていたわけだし。
・3600形3688編成
2020年7月よりリバイバルカラーとして走っている3688編成もまた、3200形によって置き換えられる可能性がきわめて高いと言える。2回にわたる脱線事故やデジタル無線の関係で車両の動きが少し見えにくくなっているが、3688編成は基本的には2021年度に廃車となった3500形3520編成(3520〜17+50-49)の代わりに生き延びている編成だからである。
・3400形3448編成
3688編成と同じく本来であれば既に廃車になっていたはずの3448編成だが、3688編成と事情が大きく異なるのは、3448編成は脱線事故で廃車となった3700形の代わりに生き延びているという点である。3200形が3500形と3600形3668編成の置き換えだけを想定した車両だったならば、3448編成を置き換えるために3200形を当初予定よりも多く製造する必要が生じることになる。仮に3200形で3448編成を置き換えるとすると8両組成の3200形が登場するだろう点においても、3448編成をどうするかという問題は注目される。
・3700形
3500形と3600形、3400形がいなくなれば、次は3700形の番となる。はたして固定編成の3700形が3200形による置き換え対象となるかどうかは、その時点での京成の車両に対する考え方次第であろう。すなわち、固定編成ではなく組成変更可能なフレキシブルな車両を増やしていく方針を採るなら、3200形の製造を継続し、3700形も3200形で置き換えられていく可能性がある。
・3000形
え、3000形も3200形で置き換えるんですかって?? いやほら、3000形だって20年近く製造が続いたじゃんか。3200形も3000形のようなロングセラーになったとしたら、3200形で3000形を置き換えるという未来があるかもネ。
- 1)2025年冬に「3200形」を導入します[PDF](pdf) - 京成電鉄の2024年5月20日付プレスリリース
- 2)かつて千葉市中心部と市原市のニュータウンを結んでいたナントカ急行電鉄??
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