KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

パリ地下鉄10号線 ミラボー駅

2024.12.22

パリ地下鉄の変な駅を紹介しよう。

D71906.jpg

パリ地下鉄 ミラボー駅
2024.9.11/**

▲パリ地下鉄10号線、ミラボー駅のホーム。なんだかよくわからない構造をしている

フランスの首都パリの地下を縦横無尽に走るパリ地下鉄は、1900年7月に運行を開始した世界でも有数の歴史を持つ地下鉄である。2024年12月現在、16の路線で320駅1)を営業。一部の路線はパリの市域を越えて周辺の自治体まで及んでおり、パリジャンの足として親しまれている。

歴史のあるものには、その過程で生じた変なものが残っているのが世の常。パリ地下鉄で随一の変な駅と言えるのが、セーヌ川の右岸、パリ16区に位置する10号線のミラボー駅である。秋にパリを訪れた際、この駅に立ち寄ってみたので、紹介しよう。

ミラボー駅の何が変なのか、冒頭の写真を見ていただければ一目瞭然であろう。ホームが片側にしかないのである。このホームは、10号線東行き電車のホームである。反対側の、勾配のついている線路を走る西行きの電車は、この駅を通過してしまう。

D71910.jpg

パリ地下鉄 ミラボー駅
2024.9.11/**

▲奥のトンネルから走ってきた西行きの電車。轟音とともにこの駅を通過していく
D71904.jpg

パリ地下鉄 ミラボー駅
2024.9.11/**

▲反対側から見る。奥のトンネルのすぐ先で10号線は分岐し、西行き電車と東行き電車は互いに異なる経路を走る
Z00020.jpg

パリ地下鉄10号線 路線図

▲10号線、西側末端部の路線図。図の通り、西行きと東行きで互いに異なる経路をとる一方通行区間が存在する。右を流れるのがセーヌ川で、ミラボー駅はセーヌ川のすぐ西側にある。なお、中央下部に見えるスタジアムはパリを本拠地とするプロサッカーチーム、パリ・サンジェルマンFCのホームスタジアムであるパルク・デ・プランスで、その500mほど北にはテニスの全仏オープンが開催されるスタッド・ローラン・ギャロスがある。左上で見切れているのは、競馬で有名なロンシャン競馬場だ(筆者作成)

ミラボー駅は、1913年に8号線の駅として開業2)。当初、このミラボー駅を含む区間はループ状に運行しており、東方面からやってきた電車は、エグリーズ・ドートゥイユ駅→ポルト・ドートゥイユ駅→ミラボー駅と反時計回りに走って、東方面に戻っていた。現在の西側終点であるポン・ド・サン・クルまで延伸したのは1980〜81年にかけてのことで、ループ区間の西側に新たな線路を付け足したため、10号線は路線の一部に一方通行区間のある不自然な線形となった。

したがって、一方向にしか乗車できない駅はミラボー駅を含めて6駅あるわけだが、ミラボー駅を面白くしているのは、やはりホームの眼の前で轟音を立てながら電車が通過していく西行き線の存在だ。なぜミラボー駅はこのような構造になったのだろうか。

地図を見てみると、特にセーヌ川の左岸(地図の右側)からやってきた西行き電車は、右に左に蛇行しながら進んでいく。まっすぐ走ることができればそれに越したことはないが、セーヌ川と直交する必要や、周辺の建物の基礎を避ける必要があったため、一方通行区間(開業当初はループ区間)の分岐をミラボー駅を超えた地点にせざるを得なかったようだ。

また、10号線はセーヌ川を地下で渡河するが、この部分はトンネルを地下の比較的深いところに構築しなければならなかった。この結果、西行き電車はセーヌ川付近から地表近くにあるエグリーズ・ドートゥイユ駅まで、上り勾配が続く形となった。かくして、ミラボー駅は片側にしかないホームから上り坂を駆け上がっていく電車が見られるという、パリ地下鉄の中でも稀に見る特徴を持つ駅となったのである。

動画

【変な駅】パリ地下鉄10号線 ミラボー駅

  • 1)2つの支線を含む。
  • 2)この区間が10号線となったのは、1937年のことである。

関連記事

2025.02.20

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス

モン・サン・ミッシェルで一風変わったバスに出会う。フランス北西部、ノルマンディー地方はサン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。周囲約900mの小さな島の上に何世紀にもかかってつくられた修道院...

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス

2024.06.16

タイ国鉄メークロン線 コロナ禍後のメークロン線路市場

コロナ禍後のメークロン線路市場を訪ねる。乗るはずだったバスが路線ごと廃止になっていることを知ったのは、朝7時のバスターミナルであった。この時点でこの日の旅程は崩壊。案内係のおばちゃんに近くまで...

タイ国鉄メークロン線 コロナ禍後のメークロン線路市場

2024.04.10

タイ国鉄 フアランポーン駅の現在

クルンテープ・アピワット中央駅に続いて、かつての中央駅、フワランポーン駅も訪ねてみた。2023年1月にバンコクの中央駅の地位をクルンテープ・アピワット中央駅に譲ったフアランポーン駅。中央駅の移転...

タイ国鉄 フアランポーン駅の現在

最新記事

2026.10.09

北総7800形 「松代うさぎ×白井まきのコラボレーション@鉄道むすめ」ヘッドマーク

松代うさぎと白井まきののコラボレーションが実現! 北総鉄道では、9月24日より「松代うさぎ×白井まきのコラボレーション@鉄道むすめ」ヘッドマークの掲出を行っている。ともに会社名に「北」を冠する...

北総7800形 「松代うさぎ×白井まきのコラボレーション@鉄道むすめ」ヘッドマーク

2026.10.04

京成本線 東中山駅の配線変更

京成本線東中山駅の構内配線に変化が発生。東中山は、千葉県船橋市にある京成本線の駅である。1日あたりの乗降客数は7,000人ほどの小駅だが、2面4線の設備を有する当駅では1日を通して緩急接続または...

京成本線 東中山駅の配線変更

2026.09.19

北総7500形 「北総線沿線活性化トレイン」運転(2026年)

北総線沿線の魅力がぎゅっと詰まった電車。北総鉄道では、7月16日より「北総線沿線活性化トレイン」の運転を行っている。同企画は、北総線沿線地域の更なる活性化を資することを目的に、北総と沿線自治体...

北総7500形 「北総線沿線活性化トレイン」運転(2026年)

2026.09.12

京成3500形 3508編成が営業運転終了

京成3500形3508編成が廃車に。3200形(3224編成・3228編成)に導入に伴い、3500形に廃車が発生している。廃車となったのは3508編成で、9月10日までに全4両が解体に向けて宗吾...

  • 京成
  • タグはありません
京成3500形 3508編成が営業運転終了

2026.09.06

京成3200形 3224編成・3228編成が登場

京成3200形3224編成と3228編成が登場。京成電鉄では、2026年度に新造が予定されている3200形42両のうち、8両分となる3224編成(3224〜3221)と3228編成(3228〜...

  • 京成
  • タグはありません
京成3200形 3224編成・3228編成が登場