2024.04.10
クルンテープ・アピワット中央駅に続いて、かつての中央駅、フワランポーン駅も訪ねてみた。
2023年1月にバンコクの中央駅の地位をクルンテープ・アピワット中央駅に譲ったフアランポーン駅。中央駅の移転にまつわる顛末はクルンテープ・アピワット中央駅の記事に記しているので割愛するが、フアランポーン駅は現在、バンスーとの間に残された地上区間のためにわずかな本数の列車が発着するローカルなターミナル駅となっている。長距離を走る優等列車の発着はなく、出入りするのはバンコク近郊を結ぶ普通列車のみ。多くの旅行者で溢れる光景や喧騒は過去のものとなり、広い駅構内には静かな時間が流れている。
列車の発着が少なくなったとは言え、ドイツのフランクフルト中央駅を模したと言われる威風堂々とした駅舎や、ドーム型屋根の大きな空間は健在だ。現在の駅舎は1916年から使われているとのことだから、御年108才。多少年季の入った柱や壁、床などは、この駅が長い間多くの人に愛されてきた証である。同駅にとって今の状態は、まさしく余生だ。
そんな駅構内を彩っているのは、かつてタイ国鉄で活躍していた往年の機関車たち。列車の発着が減少して持て余しているホームを活用する格好で、蒸気機関車とディーゼル機関車の展示が行われている。廃止後の同駅を鉄道博物館とする計画があることを意識してのことだろうか。これらにカメラを向けている人も多く、評判はよさそう。あるいは、列車を待つ時間の暇つぶしにちょうどよいのかもしれない。
駅構内を小一時間うろうろしていると、ちょうどよい時間に発車する列車があるというので、それに乗って駅を後にすることにした。14時10分発北本線ナコーンサワン行207レ、バンスーまでのショートトリップである。列車はGE製の4500形ディーゼル機関車を先頭に、3等客車5両という構成。発車間際の車内は1つのボックス席につき1〜2名が埋まっているという程度で、地元の人のほか、私のような外国人旅行者のちょこっと乗車も多いような印象。なお、フアランポーンからバンスーまでの運賃は2バーツ、日本円にしてわずか約8円・・・バグかよ。
駅を出発した列車は、ガシャガシャと音を立てながら駅に隣接する操車場をゆっくりと進み、続いて線路際まで迫ったバラック建築が建ち並ぶエリアを抜けていく。ここらへんの風景は往時と変わらず、列車の旅の始まりという雰囲気に満ちている。冷房がないゆえに窓は全開。車内を吹き抜けるバンコクの生暖かい空気もなんだか心地よい。
途中のラマティボディ病院駅とサムセン駅で多少の乗降がありながら、線路際に新しい高架橋が見え始めてきたらバンスーはまもなく。列車は巨大なクルンテープ・アピワット中央駅を尻目に旧来の地上線に到着する。フワランポーン駅からかかった時間は22分だが、わずか7km程度の距離にそれだけ時間がかかっていることを踏まえると、地上区間の立ち位置が見えてくるものである。
タイ政府の計画によれば、フアランポーン〜バンスー(クルンテープ・アピワット中央)の区間はダークレッドラインの延伸によって代替されることになっている模様だが、工事が進んでいる様子は全く見られず、したがってフアランポーン駅の先行きも不透明な状況となっている。タイのことだから、急に駅を廃止すると言い出す可能性も否定できないのが怖いところだ。可能であれば、フアランポーン駅が駅であるうちにまた訪れたい。
関連記事
タイ国鉄メークロン線 コロナ禍後のメークロン線路市場
コロナ禍後のメークロン線路市場を訪ねる。乗るはずだったバスが路線ごと廃止になっていることを知ったのは、朝7時のバスターミナルであった。この時点でこの日の旅程は崩壊。案内係のおばちゃんに近くまで...
タイ国鉄 動き始めたクルンテープ・アピワット中央駅
タイの首都バンコクにおける新たな中央駅、クルンテープ・アピワット中央駅を訪ねてみた。バンコクの交通事情において、近年最も大きなできごとは中央駅の移転であろう。クルンテープ・アピワット中央駅と...
タイ国鉄 レッドラインに乗る
タイの首都バンコクで2021年11月に開業したレッドラインに乗ってみた。タイの首都バンコクでは、ここのところ鉄道路線網が急速に拡大している。ここ5年だけでもBTSスクンヴィット線やMRTブルー...
国鉄型車両を訪ねて 25 - タイ国鉄キハ183系
国鉄型車両を訪ねて、初めての海外編はタイを走るキハ183系をば。2023年春のダイヤ改正で定期運用を終了したJR北海道のキハ183系。その一部がタイ国鉄へ譲渡され、熱帯の気候の中を走っていること...
タイ バンコク交通見聞 2016年秋 6 - 14系・24系改造の豪華車両
バンコクのフアランポーン駅。14系・24系客車が留置されているホームにてさらに歩を進めると、なにやら凄い雰囲気の客車がいるではないかっ。14系・24系を改造した豪華車両である。JR西日本より...
最新記事
最新記事
四直珍列車研究 134 - 平日 1681K
京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...
京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)
空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...
都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える
都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で...
船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」
「ふなっしー」なバスが走る。船橋新京成バス2741号車が特別仕様「ふなっしー号」として走ってる。「ふなっしー」といえば千葉県船橋市を中心に暴れている同市で人気の非公認キャラクターだが、2023年...
北総車の京急線内特急運転が復活
約19年ぶりに復活した北総車の京急線内特急運転を見る。京急線に大きな変化をもたらした2022年11月ダイヤ改正。京急自ら「23年ぶりの大改正」としたこのダイヤ改正では、特に日中時間帯の運行...