2012.10.15
京成電鉄では10月21日にダイヤ改正を行う。成田スカイアクセス線の日中におけるパターンダイヤの見直しが主な内容である。成田スカイアクセス線が開業してから初めてとなる今回のダイヤ改正は、同線が開業してから2年経って見えてきた問題点を修正するようなものとなっている。
今回のダイヤ改正におけるトピックをいくつか拾って、新ダイヤを考察してみよう。
0.シティライナーの本数を大幅削減
2010年7月のダイヤ改正で従来のスカイライナーに代わって設定されたシティライナーだが、今回のダイヤ改正で定期列車は午前中の下り1本と午後の上り1本のみの設定となり、上野〜成田間だけの運転となる。2011年3月11日の東日本大震災以降、既に大幅に本数を削減して運転されていたシティライナーが、いよいよ本格的に1往復のみとなってしまった。廃止を免れた理由として、AE100形を正月の成田山輸送に使うためにとって置くためでは、と思われるのだが、いずれにせよ京成のイメージリーダーだったAE100形が今やほとんど空気しか運んでないというのはいささか残念である。
成田スカイアクセス線関連が主な内容のダイヤ改正の中で最初にこれを挙げたのは、日中時間帯に走るシティライナーが無くなったことでダイヤの自由度が増し(特に成田〜成田空港間)、各方面に影響を及ぼしているためである。
1.スカイライナー関係
上野を5時58分に出発する早朝便を設定するほか、14〜16時台の20分間隔化を行う。プレスリリースや駅のポスター等では増発などと謳っているが、改正前と後のスカイライナー時刻表で号数だけを見比べると分かるように、全体の本数は変わっていない。すなわち、この2年の実績を元に、利用が少ない時間帯で本数を減らし、利用が多い時間帯に運転本数を集中させた格好になっている。
現行ダイヤにおけるスカイライナーの20分と40分の不均等な間隔は、空港第2ビル〜成田空港間でシティライナーのスジを入れているためであったが、シティライナーがいなくなったことでこの制約も無くなり、20分間隔での運転が可能になったということも大きく関わっている。
2.日中時間帯におけるアクセス特急の所要時間短縮
日中時間帯におけるアクセス特急の所要時間の短縮を行う。日中時間帯の標準的な列車の比較では、羽田空港→成田空港で7分、成田空港→羽田空港で10分の短縮。最速列車では羽田空港→成田空港で8分、成田空港→羽田空港で15分の短縮となっている。これにより羽田空港〜成田空港間は最速で93分(成田→羽田方向)となり、1998年11月の羽田空港駅開業時のダイヤが保持していた102分(京成本線経由)という記録をついに破ることになった。
日中時間帯のパターンダイヤを大きく変更しており、特に根小屋信号所における運転停車が無くなったことが所要時間短縮に大きく寄与している。上り列車より下り列車の方が遅いのは、下り列車だけ東松戸でスカイライナーの待避を行うためである。また、現行ダイヤにおいて、アクセス特急は北総線の普通列車を矢切で追い抜いていたが、新鎌ヶ谷で接続するように改められる。これにより新鎌ヶ谷以東の北総線停車駅対都心方向の利便性が向上するが、その一方で特に下りにおいてスカイライナーとアクセス特急の2本待避を行う北総線列車が多数現れてしまっている(上りの北総線普通列車は東松戸でスカイライナーを待避)。
3.京成本線関連
京成本線においては日中と土休日の夕方〜夜間に変更が見られる。成田スカイアクセス線の日中におけるパターンダイヤ変更に影響される形で、現行ダイヤと比較して約10分のズレが生じる。平日においては朝と夕方〜夜間のダイヤがほぼそのままなので、9時台から少しずつズラしていき、17〜18時台に元に戻すような格好になっている。土休日は日中のパターンがそのまま夕方から夜間にかけてまで引き継がれており、現行ダイヤに対する10分のズレが21時台まで生じている。特筆すべきは土休日夕方〜夜間の都営浅草線からの快速特急が消滅しており、日中のダイヤと同様に本線特急あるいは快速特急と浅草線直通の快速だけで構成されるダイヤになる。
また、日中時間帯における本線特急の上野〜成田空港間の所要時間が短縮されており、現行ダイヤの81分から77分となる。成田における時間調整を解消したためだが、これは下り列車のみで、上り列車は依然として成田で約3分停車するため、その分だけ所要時間が延びている。さらに、日中時間帯からシティライナーがいなくなったので、特急を綺麗な20分間隔の運転にすることができている。
このほか、本線特急に関する大きなトピックとして、アクセス特急に接続するようになることが挙げられる。特に下りは本線特急とアクセス特急が青砥と高砂で相互に乗換えられるようになる(上りはア特→特急が約3分で接続)。現行ダイヤでは、アクセス特急の3分後に本線特急が発着し、僅差で乗換えられないダイヤであったが、これが大きく改善されることになる。青砥〜高砂における本線特急とアクセス特急の並走は、新ダイヤを象徴する一コマになりそうだ。
上りの特急はアクセス特急と接続しない代わりに、従来小岩で追い抜いていた普通と高砂で接続するようになる。菅野〜小岩→日暮里・上野の利便性が向上する。なお、本線特急とアクセス特急の相互乗換えが下りのみとなっているのは、京成本線と(京急線)〜都営浅草線〜成田スカイアクセス線のダイヤが上下線でズレているのが原因となっている(ア特基準で約4分のズレ。下りア特のみ東松戸でスカイライナーの待避があるのも同様の理由。さらに、これが原因で下り快速は高砂にて時間調整を行っている。)。
4.京成押上線・都営浅草線関連
大きな内容として、平日夕方の6連運用の8連化、同じく平日夕方において京急線からの押上行を全て青砥行にする。この文面だけを見れば単純に運行本数・両数の純増に見えるが、都営浅草線では今回のダイヤ改正で夕方ラッシュ時間帯の輸送力の見直しを行なった模様で、平日16時台から20時台にかけて泉岳寺から押上まで走る列車の本数を比較すると、16時台:16本→13本、17時台:21本→18本、18時台:20本→17本、19時台13本→12本、20時台12本→13本、となっており、16〜19時台で一律に本数の減少が見られる。京成車6連と京急線からの押上行が走っていた16〜18時台においては列車の本数が減じた分だけ車両運用に余裕が出ており、これが6連運用の8連化と、押上行の青砥延長を可能にしたものと思われる。なお、都営浅草線を走る京成車6連は、平日7時台に1往復が残る。今回のダイヤ改正では社局間での車両運用の持替えが多数発生しており、特に都営車の動きが大きく変わったという印象である。いくつか例を挙げると、都営車の宗吾車両基地滞泊明けの07Tは、平日は早朝の(飛)快速で出庫していたが、8時台に本線を上る快速で出庫するようになり、土休日に至っては終日入庫の運用(車庫から出ない)となっている。これにより、平日早朝のみ見られる(飛)快速は平日・土休日ともに京成車の運用となった。また、夜間の滞泊場所の交換が京急車と実施されており、都営車の羽田空港滞泊、京急車の浅草橋滞泊が発生している。以前に珍列車としてご紹介した青砥始発浅草橋行の上り終電車は長らく都営車での運転となっていたが、今回のダイヤ改正で京急車の運用となった。さらに、京成本線を走る都営車が大幅減となっており、平日日中で1運用、夕方〜夜間で2運用減っている。その平日日中も宗吾で留置される時間帯があり、京成本線で都営車が全く走らない時間帯が生じてしまうことになる。
5.北総線関連
北総線の列車については、アクセス特急関連の項で挙げた日中におけるアクセス特急やスカイライナーの待避駅の変更のほか、日中時間帯における印西牧の原〜印旛日本医大間の本数増発、平日深夜などに2往復分の増発を実施する。昨今、列車の運行本数を減らすいわゆる"減量ダイヤ"へのダイヤ改正が多く見られる傾向にあるが、北総線の今回のダイヤ改正は全体的に増量となっている。
日中時間帯においては、東松戸や高砂における時間調整の解消、京急線内の快特運転化、印旛日本医大での折り返し時間短縮などで、1往復にかかる時間が大幅に短縮されており、印西牧の原止の印旛日本医大延長を実施したにもかかわらず、羽田空港〜北総線系統の所要運用数を1本減らすことができている(12本→11本)。逆に言えば、1往復にかかる時間が大幅に短縮され運用に余裕がでたため、印西牧の原止を印旛日本医大行にすることができたと言えるのかもしれない。
このほか、平日夕方〜夜間に運転されている下り北総急行の1本が普通列車に格下げとなる。本数が少ない北総線急行の中でも近接して運転されていた急行2本のうちの1本であり、新鎌ヶ谷以東の各駅と新鎌ヶ谷以西の急行通過駅とのバランスを図った格好だ。なお、この消滅となる1本は現行ダイヤで唯一京成線内を普通として運転するイレギュラーな列車でもあるため(と言っても元々は全ての急行が京成線内普通だったのだが)、この列車の格下げによって北総線の急行は全ての列車が京成線内を快速で走ることになり、高砂での種別変更が少しだけ分かりやすくなる。ちなみに、格下げとなる1本は現行ダイヤで唯一京急車で運転される北総線急行であり、この列車の格下げによって京急車の急行は(浅草線内を除いて)一旦見納めになる。
6.京成千葉・千原線、新京成線関連
日中時間帯における京成本線のダイヤが変更されることを受け、新京成線〜京成千葉・千原線においても日中時間帯の時刻変更を行う。京成本線が現行ダイヤと比較して約10分ズレることに対し、新京成線〜京成千葉・千原線のダイヤは約4分ズレることになる。新京成線の変更点はこの日中時間帯における時刻変更のみで、車両の6連化に伴う一部の8連運用が6連運用になったのを除くと、車両の所要数、出入庫時間等に変更はない。このため、新京成では今回の時刻変更をダイヤ改正ではなくダイヤ修正として処理している模様である。
◆ ◆ ◆
以上、10月21日のダイヤ改正をざっくりと概観した。もっと細かい視点で見れば、趣味者がニヤつくような変な列車も多数現れているが、それは珍列車として別途紹介していくことにしよう。
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