2010.07.24
京成電鉄では、7月17日に成田スカイアクセス線開業に伴うダイヤ改正を行った。今回のダイヤ改正について、京成電鉄と直通各社のプレスリリースや京成時刻表Vol.25(7月17日ダイヤ改正号)を参照しながら、ダイヤ改正の内容をまとめてみよう。
1.成田空港線高砂〜成田空港の開業
京成成田空港線の高砂〜成田空港間、いわゆるBルートなどと呼ばれてきた成田空港アクセス線が新しく開業した。愛称は成田スカイアクセス線となっており、旅客への案内は愛称である成田スカイアクセス線が使用される。京成電鉄としては高砂〜成田空港の全区間に渡り、自社外の線路を借用して列車の運行を行う第二種鉄道事業者となっており1)、特に既に北総線として運行を行っている高砂〜印旛日本医大は京成線でもあり北総線でもある区間になった。
成田スカイアクセス線の途中駅は東松戸、新鎌ヶ谷、千葉ニュータウン中央、印旛日本医大および成田湯川の5駅で、これらが京成線の駅として新しく開業した。ただし、前の4つは北総線として既に営業しているので、完全なる新駅は成田湯川のみである。このほか、成田湯川〜空港第2ビルにおける単線区間の列車交換用として根古屋信号所が設けられている。
2.スカイライナーを成田スカイアクセス線経由に変更
従来の京成本線よりも短絡ルートとなった成田空港線が開業したことから、スカイライナーは全列車が成田スカイアクセス線を経由するようになった。車両も全列車でAE形での運転となっており、印旛日本医大〜空港第2ビル間では在来線で最速となる160km/h運転2)を行う。日暮里〜空港第2ビル間の所要時間は最速で36分となっている。
スカイライナーは午前中のピーク時間帯で成田空港到着列車が1時間あたり3本となるほかは、毎時2本の運転が基本となる。日中時間帯は上野駅で毎時00、40分発として設定されている。運転間隔が40分・20分と少々いびつになっているが、これは高砂でいったん分かれた京成本線が再び合流する空港第2ビル〜成田空港間の単線区間において、線路容量の関係から後述のシティライナーと合わせて毎時20分間隔となるようなダイヤを組まざるを得ないためとみられる。
このほかAE形については、モーニングライナーとイブニングライナーも担当することになり、従来はAE100形がしていた仕事のほとんどがAE形のものとなった。AE形に係わる所要運用数は7本で、予備は1本となっている。これは編成が検査等で1本でも運用を離脱すると予備なしになってしまうことを意味しており、スカイライナーが京成電鉄のフラグシップトレインであることを考えると、もう少し余裕があってもよいように思わなくもない。
3.成田スカイアクセス線経由の一般特急「アクセス特急」の新設
成田スカイアクセス線を走る列車として有料特急であるスカイライナーのほか、特急料金が不要の一般列車としてアクセス特急が新設された。種別を表わす色はオレンジ色。成田空港線内の停車駅は東松戸、新鎌ヶ谷、千葉ニュータウン中央、印旛日本医大、成田湯川、空港第2ビル、成田空港である。このほかは特急停車駅と同じである。見方によっては高砂から成田空港線内各駅停車の種別と言えなくもない。また、上り列車について日中時間帯に押上からエアポート快特となる列車があるために飛行機マーク付の「(飛)アクセス特急」も合わせて設定された。
運転系統は、上野発着のほかに西馬込発着、上野発着が主に設定されている。このほか車両運用の都合で押上や神奈川新町、三崎口を発着する列車もある。日中時間帯は羽田空港発着となっており、これは従来羽田空港〜佐倉の運行系統のうち約半数の都営浅草線内・京急線内エアポート快特運転を行うスジを振替えたもの。このため、2002年10月のダイヤ改正で消滅していた羽田空港〜成田空港の空港間直通特急系統が約8年ぶりに、成田スカイアクセス線経由の運行系統となって復活となった。「成田空港方面佐倉」などというわけのわからない方向幕まで作って羽田空港から成田空港への直通(してない)アピールをしてきた京急にとってはさぞ大喜びに違いないだろう。このほか、朝は主に西馬込発着、夕方以降は主に上野発着となっている。
このように時間帯によって行先が異なるのは、京成本線の列車へ大きな変更を与えないように旧ダイヤのスジが空いているところにしかアクセス特急のスジを引くことができなかったためとみられる。例えば、朝ラッシュ時においては上野線は京成本線からの通勤特急および普通列車で既に満杯だし、夕方以降においては都営浅草線からの優等列車は京成本線方面行で埋まっていた。そのため、アクセス特急に関しては、日中における羽田空港〜佐倉の運転系統が西馬込〜佐倉の運転系統になったこと以外は他の運転系統にあまり影響を与えていない。したがって、時間帯によって上り方の発着駅が異なるのは、ある意味で必然であったと言える。
車両は京成車のほか、京急車も使用される。高砂〜空港第2ビルにおいて120km/h運転を行うため、都営車は入らない。京成車は成田スカイアクセス線開業に合わせて新造された3050形が主に使用されるほか、3000形あるいは3700形が代走として運用されることがある。京急車は京成線内の停車駅予告機能を持った車両に限定されており、旧ダイヤにおける佐倉方面直通と同様に600形あるいは新1000形10次車以降が用いられる。
京成車の成田スカイアクセス線に係わる運用番号は01K〜11Kが新規に割り当てられており、成田スカイアクセス線に関する運用が一般の直通運用とは全く別立てで独立していることが番号から伺わせている。なお、00台Kの使用は2001年9月ダイヤ改正まで羽田空港〜成田空港間の直通特急系統で使用されていた以来の復活であり、かつての「(飛)特急」を思い出される方も多かろう。また、上野発着のアクセス特急は全区間京成線で完結する列車であるにもかかわらず、他社線直通用の事業者符号の付いた01K〜11Kをそのまま使用していることが特筆されるが、これは成田空港線内において北総線の列車も同じ線路を走ることを考慮したものと思われる。
日中のダイヤにおいては6本の編成で運用を回しており、平日ダイヤと土休日ダイヤともに4本が京成車で2本が京急車となっている。京急車は早朝に京急蒲田以南からの列車で成田スカイアクセス線に入ってくるのが特徴で、三崎口始発成田空港行という列車も設定されている。前述のようにアクセス特急は夕方以降に上野発着の列車となるが、2本の京急車は上野行になるということはなく、アクセス特急が上野発着にシフトする前に三崎口行のアクセス特急として京急線方面にきちんと帰っていく。
成田空港線内は単線区間に設置された根古屋信号所を最大限に活用したダイヤが組まれており、特に日中時間帯のアクセス特急は必ず同信号所で列車交換を行うようなダイヤとなっている。これにさらにスカイライナーが加わると、根古屋信号所の2本の線路を使って、上りアクセス特急が到着→下りスカイライナーが通過→下りアクセス特急が到着→上りアクセス特急が発車→上りスカイライナーが通過→下りアクセス特急が発車、といった巧妙なやりくりが行われており、さながら十津川警部の時刻表トリックのようである。一方で、根古屋信号所における運転停車はアクセス特急の所要時間を増大させてしまっており、羽田空港〜成田空港間の最速103分は距離も短く120km/h運転の可能な新線を経由しているのにもかかわらず、2002年まで運転していた京成本線経由の空港間連絡特急の最速列車よりも1分遅くなってしまっている。
4.京成本線経由の有料特急「シティライナー」を新設
京成本線経由で運転されていたスカイライナーが成田スカイアクセス線経由での運転となったため、その代替となる新種別シティライナーが新設された。種別色は赤紫色である。停車駅は上野、日暮里、青砥、船橋、成田、空港第2ビル、成田空港で、従来のスカイライナー停車駅に加えて都営浅草線方面からの接続を考慮して青砥が新しく停車駅となった。
主に日中時間帯の運転で、運転頻度は毎時1本(上野毎時50分発、成田空港同19分発)。成田発着の列車を含めて7往復が設定されている。車両はスカイライナーの任を降ろされたAE100形の担当となっており、全てのモーニングライナーとイブニングライナーもがAE形での運転となってしまった中、これがAE100形に与えられた唯一の仕事となる。
このようにAE100形はAE形と完全に別運用となっているため、新しくAE50番台の運用番号が起こされている。シティライナーに係わる所要運用数は3本で、これに予備として1本を加えた4本があればシティライナーは運転できると思われるので、AE100形の廃車が行われるものとみられる。
5.その他の種別関連
新しい種別として「アクセス特急」や「シティライナー」が登場したほか、従来の種別に関しても一部に変更が生じている。- 快特:快速特急となった。かねてより快速との混同が指摘され、既にアナウンス等では快速特急の呼称が用いられていたが、このたび種別として正式に快速特急となったようである。
- 通勤特急:種別色のオレンジ色がアクセス特急に取られてしまったため、水色に変更となった。
- 快速:千住大橋が新たに停車駅となった。
- 急行:廃止。急行は既に2002年のダイヤ改正で押上線のみの運転となっていたが、全面的に廃止されることとなった。押上線を急行として走っていた列車のうち、引き続き優等列車で走る必要のあるものについては一律に快速に格上げとなっている。このため、平日夕方〜夜に運転される北総線直通の急行は都営浅草線、京成線内快速での運転となっており、北総車の快速が新しく見られるようになった。なお、北総線内は急行運転のままのため、北総線急行は高砂で必ず種別変更を行なうというやや不案内な列車となっている。この際、北総線としても急行を快速に改称するなど、京成と歩調を合わせてもよかったように思われる。
6.京成本線関連
前述のように、また、京成電鉄のダイヤ改正に関するプレスリリースに記載がある通り、従来の列車については、日中の運行パターンを除いてあまり大きな変化のないダイヤ改正となった。逆に、日中の運行パターンについては少なからず変化が見られており、前述のようなアクセス特急の日中の空港間連絡特急系統化やシティライナーの設定を中心に運行パターンが変更となっている。
運行パターンとしては、前述のように羽田空港〜佐倉系統のうち都営浅草線内と京急線内でエアポート快特となっていたスジが羽田空港〜成田空港間の空港間直通特急の運転系統となったことが大きい。このため、従来は羽田空港まで直通していた佐倉発着の快速列車は、西馬込〜佐倉の運転系統となった。京急線に絡まない運行系統となったことで、京急車の佐倉方面乗入れが消滅している。また、羽田空港〜佐倉系統のうちエアポート快特運転を行なわないものは、羽田空港〜高砂という運転系統となった。
また、スカイライナーが成田スカイアクセス線経由となり、毎時1本のシティライナーが新設されたために、待避パターンに若干の変更がみられている。シティライナーは上り下りともに八千代台で先行の特急を追い抜くダイヤとなった。京成本線の特急は、2006年の佐倉〜成田間各駅停車化に伴う所要時間増大を抑えるために途中駅での待避は行なわないようなダイヤとなっていた(それまでは高砂でスカイライナーを待避していた)が、5月のSA線開業準備ダイヤで上り列車でこれが崩れ、いよいよ上り列車においても途中駅での待避が生じるようになってしまった。
7.北総線関連
北総線列車としての運行パターンに大きな変化はないが、同じ線路に京成線列車としてのスカイライナーとアクセス特急が走るようになったための変化は大きい。何と言っても、終日にわたり列車の待避が行なわれるようになったのは、北総線ダイヤ史に残る大きなトピックであると言えよう。
日中において、北総線の普通列車は矢切でアクセス特急を、新鎌ヶ谷でスカイライナーを待避するようなダイヤとなった。しかしながら、スカイライナーは20分・40分間隔の運転、アクセス特急は40分間隔のため、待避パターンとして矢切と新鎌ヶ谷でそれぞれ待避を行なう列車、矢切のみで待避を行なう列車、新鎌ヶ谷のみで待避を行なう列車、待避を全く行なわない列車の4種類全てが出現している。このことは特に新鎌ヶ谷以東にしわ寄せが生じており、従来は綺麗な20分間隔で運転できていた北総線の運転間隔にかなりの歪みが発生してしまっている。
変わり種としては、早朝上りの510K、深夜下りの2205Kb(土休日は2207Kb)という列車が登場している。アクセス特急に係わる運用番号を付けた列車だが、この列車はアクセス特急ではないので、京成の列車ではなく北総の列車として運転される。平日05K、土休日07Kは印西牧の原で一夜を明かして翌510Kに充当という運用の流れになっており、京成車の北総線内滞泊が新たに設定されている。
◆ ◆ ◆
以上、成田スカイアクセス線開業に伴うダイヤ改正について、内容が膨大な量になってしまった。半ばダラダラと書いてきてしまったものの、思いついたままにとりあえずまとめてみた。もっと細かい点に着目すれば、珍列車と言える列車もいくつか登場しているので、それは別途紹介していこうと思う。
- 1)成田空港線高砂〜成田空港における線路の保有者はそれぞれ、高砂〜小室:北総鉄道、小室〜印旛日本医大:千葉ニュータウン鉄道、印旛日本医大〜(土屋付近※):成田高速鉄道アクセス、(土屋付近)〜成田空港:成田空港高速鉄道。北総鉄道が第一種鉄道事業者のほかは全て第三種鉄道事業者。(※JR成田線と合流する地点)
- 2)成田スカイアクセス線のほか、北越急行ほくほく線が特急「はくたか」で在来線における160km/h運転を行なっている。
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