KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

オランダ 少しだけアムステルダム 3 - ライツェ通りのトランジットモール

2017.09.09

​アムステルダム駆け足訪問記の第3回。アムステルダム中央駅から市内を散策し、ライツェ通りという通りに行き着いた。この通りはトランジットモールになっており、その様子を少しばかり観察してみた。

X60968.jpg

アムステルダム市電
2016.2.14/**

▲ライツェ通りを行くアムステルダム市電。歩行者専用道路を示す標識があるように、ここは歩行者と路面電車だけの空間である

国土交通省によれば、トランジットモールとは、都心部において自動車の通行を制限して歩行者と公共交通機関による空間を創出し、歩行者の安全性や都心商業地の魅力向上などを図る歩行者空間のことをいう。日本においては、姫路駅北口の駅前広場ならびに大手前通りが再開発に合わせてバスとタクシーのみ通行可のトランジットモールとなったほか、一部の自治体のコミュニティバスが歩行者空間になっている商店街に乗入れるといった形態のトランジットモールが見られるが、これらはいずれもバスである。路面電車によるトランジットモールは、福井や岐阜でトランジットモールの実現に向けた社会実験がなされたものの、本格的な運用には至っていない。

ライツェ通りは、アムステルダム中央駅から南西方向に約1.5kmに位置する長さ約500mの商店街である。前述のようにトランジットモールとなっており、一般の車両の通行が規制された、歩行者と路面電車だけの空間になっている。幅員約10mほどの通りの真ん中に軌道が敷設されており、ここをアムステルダム交通局の路面電車が行き交っている。

X60955.jpg

アムステルダム市電
2016.2.14/**

▲3つの系統が重複している区間であり、電車はかなりの頻度でやってくる

ここの区間を走る路面電車は、いずれもアムステルダム中央駅を起点として走る1系統と2系統、5系統の3つ。1系統は6分間隔、2系統と5系統はそれぞれ7〜8分間隔での運行になっているので、これらの系統が輻輳しているライツェ通りはかなりの頻度で電車が走ってくる。そんな状態でも軌道敷には特にこれといった柵などは設けられておらず、なんなら歩行者が自由に歩ける空間の一部にすらなっている。この区間の運転にあたり、電車は歩行者に対してフートゴング1)で注意を促しながら徐行で通過するという原始的な方法が採られているが、電車が無防備な歩行者の至近を通過していく様子はなかなかスリリング。よく成り立っているものだと思う。

路面電車と歩行者が共存する面白い空間になっているとは感じるものの、日本でこれと同じことをするのは、事故時における責任などを考えると難しいのではないかと思う。乗務員にしたって、できることならこんな危なっかしい区間の運転は避けたいはずである。他方、アムステルダム中央駅前の電停においても、電車が駅前広場の雑踏をかきわけながら発車していくのを見るにつけ、基本的に電車と人の距離感がとても近いのだと思う。この距離感がライツェ通りのようなトランジットモールを成り立たせているのかもしれない。

X60947.jpg

アムステルダム市電
2016.2.14/**

▲レールに注目。よく見ると、複線のレールが交わっているようで交わっていないガントレットになっている
Z02929.jpg

アムステルダム市電 ライツェ通り付近の配線図

▲ライツェ通り付近の配線図を描いてみたなど。約150mに1か所の割合で電停を兼ねた交換箇所が設けられており、電車どうしは互いに行き違いしながら進んでいく

一見すると単線に見える軌道だが、よく見ると複線のレールがわずかに交わっておらず、ガントレットになっている。ガントレットについてはリスボン市電の記事でも触れたが、ライツェ通りのガントレットも単純に分岐器の使用を避けるためのものとみられる。ライツェ通りの約500mにわたる区間が全てガントレットによる実質的な単線区間になっているかというと、そうではない。運河の上に幅員に余裕のある橋がいくつか架かっており、そこの部分だけ通常の複線軌道になっている。電停にもなっている複線部分で電車の行き違いを行いながら、路面電車はライツェ通りの区間を進んでいく。

前述のようにこの区間は3つの系統が重複している区間なので、電車は前からも後からもどんどんやってくる。ところがこれがなんとも不思議で、ガントレットの実質単線区間には特にこれといった信号機は設置されておらず、乗務員が無線などでやりとりしている様子もない。まさか運転士どうしがアイコンタクトをしているわけではあるまいし、それでいてガントレット区間で電車どうしがお見合いすることなくスムーズな運行ができているのは少しばかり謎であった。この区間の運行について、なにか知っている人がいたら教えて下され・・・。

X60951.jpg

アムステルダム市電
2016.2.14/**

▲運河に架かる橋の上で行き違いするアムステルダム市電

こうして急ぎ足ながらアムステルダムを堪能した後、国立美術館の前から197番の空港バスに乗ってスキポール空港へと帰還。日本に帰ったのであった。

(完)

  • 1)カンカンと鳴る、鐘のような音の警笛のこと。

関連記事

2017.08.11

オランダ 少しだけアムステルダム 2 - アムステルダム市電

ってことで、アムステルダム駆け足訪問記の第2回。アムステルダム市電を少しだけ。アムステルダムも路面電車の走る街である。路線網は特にアムステルダム中央駅を中心とした旧市街を中心に展開しており...

オランダ 少しだけアムステルダム 2 - アムステルダム市電

2017.07.17

オランダ 少しだけアムステルダム 1 - アムステルダム中央駅

さて、ポルトガル旅行の様子をだらだらと書き綴ってきたが、これには少しばかりの続きがござる。リスボンへの飛行機がオランダのアムステルダムで乗換えだったので、ついでにアムステルダムにも行ってきました...

オランダ 少しだけアムステルダム 1 - アムステルダム中央駅

2017.05.30

ポルトガル周遊の記 番外編 - リスボン市電のすごい配線

狭い街区の中をちょこまかと走るリスボン市電はその配線もすごい! ってことで、Twitterに掲載したらなかなか好評だったので、こちらにも改めて掲載したく思う。ちょっとだけ強引に敷かれたリスボン...

ポルトガル周遊の記 番外編 - リスボン市電のすごい配線

2017.05.02

ポルトガル周遊の記 17 - リスボン市電28系統、狭隘路を走る

ポルトガルの首都、リスボンを走るリスボン市電。最後に、28系統の狭隘区間を見に行ってみた。リスボンを東西に走る28系統はところどころに狭い路地を走る区間が存在している。特に狭いのがアルファマ地区...

ポルトガル周遊の記 17 - リスボン市電28系統、狭隘路を走る

2017.04.09

ポルトガル周遊の記 16 - リスボン市電あれこれ(路線篇)

前回の記事につづいてリスボン市電をば。今回は路線についてご紹介しよう。​2017年現在、リスボンで運行されている路面電車は12、15、18、25、28の5系統。系統番号の数字が飛び飛びになって...

ポルトガル周遊の記 16 - リスボン市電あれこれ(路線篇)

最新記事

2026.01.19

ベトナム 首都ハノイを走る路線バス - 車両編

2025年秋にベトナムを訪れた際に、首都ハノイの路線バスを利用する機会があったので、レポートしよう。その1は車両編。ベトナムの首都ハノイの公共交通の主役は路線バスである。ハノイ市内では2021年...

ベトナム 首都ハノイを走る路線バス - 車両編

2026.01.12

京成3500形 ワンマン対応編成が6両編成に

京成3500形のワンマン対応編成が6両編成として走る。1月6〜9日、京成3500形のワンマン運転対応編成(3508編成、3516編成、3544編成)が編成組み換えによって6両編成となり、運用に...

  • 京成
  • タグはありません
京成3500形 ワンマン対応編成が6両編成に

2026.01.06

都営浅草線 日中時間帯に押上発着の列車を増発

都営浅草線、日中時間帯に西馬込〜押上を走る列車を増発。都営浅草線では、2025年12月ダイヤ改正において、日中時間帯に西馬込〜押上を走る列車の増発を実施した。この列車がどういったものなのか、見て...

都営浅草線 日中時間帯に押上発着の列車を増発

2025.12.31

2025年 四直界隈10大ニュース

2025年がまもなく終わろうとしている。というわけで、「2025年 四直界隈10大ニュース」と題して、この1年に都営浅草線を筆頭とした京成線、京急線、北総線のいわゆる四直界隈で起こったできごとを...

2025年 四直界隈10大ニュース

2025.12.26

京急久里浜線 京急久里浜駅の配線変更

京急久里浜線京急久里浜駅の配線に変化。京急久里浜線の主要駅、京急久里浜。北久里浜〜京急久里浜にある車両管理区(車両基地)の最寄り駅として、また輸送力の境界として当駅を起終点とする列車が多く設定...

京急久里浜線 京急久里浜駅の配線変更