KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

Article

記事

2017.04.09

​前回の記事につづいてリスボン市電をば。今回は路線についてご紹介しよう。

X60851.jpg

リスボン市電 577&567
2016.2.13/**

▲アルファマ地区を走るリスボン市電28系統

​2017年現在、リスボンで運行されている路面電車は12、15、18、25、28の5系統1)。系統番号の数字が飛び飛びになっているあたりで察しがつくと思われるが、リスボンでは1960年代から70年代にかけてと、90年代に段階的に路線が大幅に削減された過去があり、それの生き残りである。いわゆるモータリゼーションの波はリスボンでも例外でなく、そのほとんどは路線バスに転換された。最盛期には27もの系統が運行されていて、市内を縦横無尽に電車が走っていたという。今の路線網からはちょっと想像できないが、市電が走っていた通りではどういうわけか今でも軌道が剥がされずに残っている箇所がところどころ存在しているので、廃止された区間でも路面電車が走っていた頃の面影をなんとなくは感じることはできる。

​現行の5つの路線の中でも何と言っても有名なのは28系統。28系統はMartim MonizとCampo Ourique (Prazeres)を結ぶ路線で、現行5路線の中では最長の距離を走る系統でもある。リスボンを東西に横断する28系統は、特にその東側、バイシャ〜アルファマ〜グラサの区間で旧市街のど真ん中を抜けていくこともあって、沿線には観光地も多数存在。リスボン観光には欠かせない存在になっている。大聖堂を背景にして走るリスボン市電・・・という市電が走る風景としておそらく最も多く撮られているであろう風景もこの区間。観光客で四六時中混雑しているのもこの区間である。そして、私が以前ネット動画で見た市電が市街地の中のどエラい狭いところを抜けていくというのもこの区間なのあった。丘の上につくられた都市を走るだけあって路線のアップダウンも激しく、市電に乗るのならこの28系統がダントツで楽しいと思う。リスボンに来て何をしようか迷った際には、とりあえずこの市電の28系統に乗っておくことを強くオススメしておく。いや、乗ってくださいマジで。

X60775.jpg

リスボン市電 567
2016.2.13/**

▲極めつけはここの勾配。パーミルで表すとどれくらいあるのやら(パーセントが必要か?)・・・。車両が機器更新で新性能化される前は暴走しないように手ブレーキを併用して坂を登り降りしていたとのこと

また、フィゲイラ広場を起点にして時計回りで循環する12系統も面白かった。28系統ほどの華やかさは無いが、こちらも狭隘な旧市街を走っていくのでなかなかの乗り応えがある。循環路線なので、元の場所に戻ってくるのも安心だろうかと思う2)。20分程度で一周するので、暇つぶし(?)にはちょうどいいかもしれない。

X60740.jpg

リスボン市電 562
2016.2.13/**

▲狭隘路を走る12系統。現在は時計回りの片方向循環だが、かつては反対回りも走っていたようで、使われていない軌道がところどころで剥がされずに残っている
X60753.jpg

リスボン市電 552
2016.2.13/**

▲車両が小さいのでこんな交差点も曲がれますよっと

さて、​環境意識の高まり等から路面電車が復権してきて久しい昨今、ここリスボンでもそれに同調する動きが出てきているようである。1990年代に廃止となった路線の一部、具体的にはかつて走っていた24系統を2017年あるいは18年を目標に復活させようとする動きがある模様。関係者いわく「今思えば1990年代の路線削減はちょっとやりすぎだったから、一部の区間を復活させたるわ」とのこと。その24系統が走っていたルートをグーグル・ストリートビューでたどってみると、軌道どころか架線もほぼそのままの形で残されており、あたかも現役で市電が走っているかのような雰囲気。もちろんこの路線の復活にあたっては多少の設備の改修は必要であると思われるが、新規にレールを敷くよりハードルははるかに低いだろうから、その実現には大いに期待が持てるところである。

  • 1)​正式には番号に後ろにElétricos(電車)を表すEが付いており、時刻表などでは12E、15E、18E、25E、28Eというように案内されている。
  • 2)ただし、系統の起終点になっているフィゲイラ広場を越えて乗車することはできない。

関連記事

ポルトガル周遊の記 17 - リスボン市電28系統、狭隘路を走る

ポルトガルの首都、リスボンを走るリスボン市電。最後に、28系統の狭隘区間を見に行ってみた。リスボンを東西に走る28系統はところどころに狭い路地を走る区間が存在している。特に狭いのがアルファマ地区...

ポルトガル周遊の記 17 - リスボン市電28系統、狭隘路を走る
ポルトガル周遊の記 15 - リスボン市電あれこれ(車両篇)

ポルトガルの旅もそろそろ終盤である。これまでポルトガルにおける様々な公共交通をご紹介してきたが、満を持して(?)リスボンの路面電車を取り上げる。​リスボン市電の存在を知ったのは、初めて海外に...

ポルトガル周遊の記 15 - リスボン市電あれこれ(車両篇)
ポルトガル周遊の記 14 - リスボンのケーブルカー グロリア線

リスボンを走るケーブルカー、ビッカ線に続いてグロリア線をば。リスボンの中心に位置するレスタウラドーレス広場の脇から、丘の上のバイロ・アルト地区へとあがっていくのがグロリア線のケーブルカーである...

ポルトガル周遊の記 14 - リスボンのケーブルカー グロリア線
ポルトガル周遊の記 13 - リスボンのケーブルカー ビッカ線

リスボンを走るケーブルカー、ビッカ線に乗る。ケーブルカーというと山の中を走っていて、山麓から山の中のある程度のところまで運んでくれる楽ちんな乗りものという印象があるが、リスボンのケーブルカーは...

ポルトガル周遊の記 13 - リスボンのケーブルカー ビッカ線
ポルトガル周遊の記 12 - リスボン市バスあれこれ

リスボンの公共交通あれこれ、地下鉄に続いては市バスを取り上げよう。リスボンの市バスはCarrisという公営企業体によって運営されている。車体は同じくCarrisによって運営されている路面電車と...

ポルトガル周遊の記 12 - リスボン市バスあれこれ

最新記事

2025.03.12

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

京急600形と2100形、側面の行先表示器がLEDになる。京急600形と2100形で、側面の行先表示器のLED化が進んでいる。2024年10月下旬にLEDとなった602編成と607編成、2157...

京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化

2025.03.07

京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編

京成バスおよびグループ各社では、車両に対して数字や英字を用いた番号を漏れなく付しており、これを車両番号(社番)として各車両の管理に使用している。当Webサイトでは2017年8月にも「京成バス...

京成バス 車両番号の基礎知識 - 分離子会社編

2025.03.02

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥

京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 下 - 京成立石〜青砥

2025.02.25

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石

京成電鉄では、押上線四ツ木〜京成立石〜青砥で実施している連続立体交差事業において、下り線の仮線への切り替えを実施した。切り替えは2024年11月29日の終電後〜翌30日未明に実施され、同日の始発...

京成押上線 四ツ木〜青砥間の下り線を仮線に切り替え 上 - 四ツ木〜京成立石

2025.02.20

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス

モン・サン・ミッシェルで一風変わったバスに出会う。フランス北西部、ノルマンディー地方はサン・マロ湾に浮かぶモン・サン・ミッシェル。周囲約900mの小さな島の上に何世紀にもかかってつくられた修道院...

フランス モン・サン・ミッシェルを走る両運バス