2017.10.23
昨年の秋に訪れたバンコクで開通したばかりのMRTパープルライン1)に乗ってきてみたので、そこらへんのことをレポートしたいと思う。
2016年8月6日に開通したパープルラインは、MRTとしてはブルーラインに次いで2つ目の路線となるものである。今回新しく開通したのはタオプーン~クロンバンパイ間の16駅20.9kmで、バンコクの縁から郊外方面に向かって走っていくような区間。そのため、路線のほとんどは実はバンコクではなく、バンコクの北西に隣接するノンタブリーというところを走る。路線の建設には日本のODAによる資金援助がなされているほか、日本の企業連合(丸紅、東芝、JR東日本)が車両を含めた鉄道システム一式を受注。日本が海外における鉄道システムを丸ごと納入するのは初めての事例になるそうだ。このように日本が大きく関わっているところがこの路線の見どころのひとつであろう。
前述のように車両も日本製で、JR東日本傘下の総合車両製作所が製造を担当。車体は総合車両製作所が得意とするステンレス製で、同社で展開している「sustina」ブランドの車両としては海外向けの第一号になった。バンコクの都市鉄道(BTS、MRT、ARL)でステンレスの車両が導入されるのは初めてで、運行開始間もないピカピカでギラギラのステンレス車がパープルラインの高々架を行く姿は何となくバンコクの都市交通における新時代の幕開けを感じさせる。車両の製造には鉄道車両のデザインでおなじみのGKインダストリアルデザインも参画しており、車体にその旨の表記(Designed by GK Industrial Design)が入る。
車両はMc-T-Mcという3両編成2)で、全部で21本が在籍している。制御装置には東芝製のVVVFインバーター(1C2M×2群)が採用され、各Mc車に搭載。車両はいちおうE231系をベースにしているということだが、VVVFインバーターを始めとした走行に必要な機器類の配置も台車の形状も見た目も全然違うし、実車からするとE231系をベースにしたという話がにわかには信じられないくらいである。総合車両製作所によれば、E231系をベースにしながらも、車体のサイズがそもそもE231系より一回り大きい上に、現地の各種基準をクリアするための大幅な変更や新規設計部分もかなりあったようで、非常に苦労されたという。ここらへんは「sustina」の海外向けの第一号ならではの逸話になりそうだ。
片側4ドアのステンレス車両と書くと日本ではおなじみの仕様のように見えるが、車両の規格は現地で既に走っているBTSやMRTブルーラインのものに合わせたのか確かにやや大ぶりで、車内の空間は日本の通勤型車両よりも気持ち広めという印象。側扉は外吊り式で、見た目の印象も日本の通勤型車両とはだいぶ異なる。さらに、座席を含めていたるところにFRP製のパーツが多用されており、全体的に日本製という雰囲気はあまり感じられなかった。日本製なのに日本っぽくない、何とも不思議な車両である。
◆ ◆ ◆
パープルラインの開業から遅れること1年、2017年8月11日にブルーラインがバンスー駅からタオプーンまで1駅だけ延伸してパープルラインと接続するようになったが、私が訪れた2016年10月の時点ではブルーラインはバンスーまでで、パープルラインは孤立した路線であった。そんな状態のパープルラインでは、伝わってくるのはガラガラだとか閑古鳥が鳴いているだとかあまりよろしくない情報ばかり・・・。はたして本当にそうなのか? 私は真実を確かめるべく、バンスー駅からシャトルバスに乗ってパープルラインのタオプーン駅へ向かったのであった。
(つづく)
- 1)パープルラインの正式名称はチャローン・ラチャタム線。ブルーラインはチャルーム・ラチャモンコン線。
- 2)車両番号はタオプーン側より1000(奇数)-3000-1000(偶数)というふうに振られている(例:1001-3001-1002)が、この付番法則はブルーラインの車両と全く同じで、MRTとしてこれらをどのように管理しているのか謎。
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