2020.04.05
京成線に自動放送がやってきた。
3月29日より、京成線で自動放送の使用が始まった。対象となるのは従来より自動放送を実施している成田スカイアクセス線のアクセス特急1)を除く京成本線や千葉・千原線などを走る全ての一般列車・全区間で、京成の乗務員が担当する芝山鉄道線東成田〜芝山千代田間を含む。自動放送は日本語のほかに英語でのアナウンス(一部、中国語と韓国語)を行っており、同社が取り組んでいる情報提供手段の拡充の一環として多言語対応を推進するものとなっている。
今回導入された自動放送は、乗務員が携帯するタブレット端末を活用したものになっていることが大きな特徴。自動放送というと車両に搭載した自動放送装置などにより行う事例が一般的だが、京成では乗務員がタブレット端末にインストールされた専用のアプリを操作し、その時々のアナウンスを選択して車内に流すという方式を採用した2)。この方式のメリットは、車両に大がかりな改造を必要とせずにアナウンスを自動化することが可能な点で、後述するように車両を限定することなく導入開始日よりほぼ全ての列車で自動放送を行うことができている。
自動放送はタブレット端末から出力した音声を車両側の放送回路に載せる格好で車内に流されるが、タブレット端末と車両側の放送機器を繋ぐものとして従来より使用されてきたICレコーダー接続箱が活用されている。
ICレコーダー接続箱は2006年にICレコーダーを活用した多言語の注意啓蒙放送を開始した際に車両に設置されたもので、当初は8両編成のみだった設置も次第に4両編成や6両編成、他社局の車両にも展開。これにより、3500形や3600形といった古参車両から都営車や京急車など他社局の直通車両まで、車種を問わずに自動放送を行うことが可能になっている。したがって、今回のタブレット端末を活用した自動放送は、従来のICレコーダーによる多言語の注意啓発放送を大幅にアップデートしたものとも言える。
逆に、現時点で自動放送ができないのは、京急車のアクセス特急と新京成車による京成千葉線列車のみとなる。前者はアクセス特急用の自動放送装置を搭載していないかつアクセス特急が今回のタブレット端末を活用した自動放送の対象外であるため、後者は車両にICレコーダー接続箱が設置されていないためである。
◆ ◆ ◆
それでは、実際に流れている自動放送を聴いてみよう。放送は大きく分けて始発駅停車中、駅発車後、駅到着前の3つのタイミングで流される。それぞれについて、いくつかの事例を掲載する。
駅に停車している時の自動放送
【普通京成上野行】京成臼井停車中
始発駅のみ、停車中に流すための放送が用意されている。種別と行先、停車駅を案内する。駅名は、京成xxの駅は京成を省略せずに正式名称で案内するようになっている。
【快速西馬込行】京成佐倉停車中
優等列車の場合。
駅を発車した後の自動放送
【快速西馬込行】実籾発車後
基本形。次の駅と開くドアの方向を案内する。
【快速西馬込行】船橋競馬場発車後
優等列車の場合、次の停車駅に加えてその次の停車駅の案内が入る。次が乗換駅の場合はさらに乗換えの案内が加わる。
【快速特急京成上野行】京成成田発車後
始発駅と一部の主要駅の発車後の放送では種別行先と停車駅の案内が入る。京成佐倉のように副本線があって列車によってドアの開く方向が異なる駅は、ドアが開く方向の案内がない。
【快速西馬込行】青砥発車後(優先席の案内を追加)
都営浅草線直通列車の場合、青砥発車後にその旨の案内が入る。なお、自動放送を流すにあたり、注意啓蒙など任意の内容をトッピングのように追加して放送するという機能がある模様で、基本の次駅案内の直後に追加した内容の放送が流れる。
【快速西馬込行】京成臼井発車後(ドアが開く方向を追加)
この例ではドアが開く方向の案内を追加している。この場合、上記の実籾発車後の放送と放送内容の順序が異なることに注意。
駅に到着する前の自動放送
【快速西馬込行】京成大久保到着前
基本形。駅名の案内のみ。
【快速西馬込行】京成船橋到着前
優等列車の場合、その次の停車駅の案内も入る。一部の駅では足元にご注意くださいという案内が入る。
【快速特急京成成田行】京成成田到着前(ドアが開く方向を追加)
次が終着駅の場合、最後に「京成電鉄をご利用いただきありがとうございました」。この部分の英語がKeisei Lineではなく、Keisei Railwayなのが特徴。
【普通芝山千代田行】芝山千代田到着前
自動放送は京成の乗務員が担当する芝山鉄道線にも対応している。が、「京成電鉄をご利用いただき・・・」と言ってしまう4)。いいのか・・・?
【普通京成臼井行】京成大久保到着前
英語部分をカットし、日本語だけを流すこともできる模様。どうでもいいけど3500形はタブレット端末との相性が悪いのか、自動放送を流す際に大きなノイズが乗ってしまう例が散見される。
◆ ◆ ◆
肉声によるアナウンスも内容が変化
自動放送に導入に合わせて、肉声によるアナウンスにも変化が生じている。最大の変化は正式名称で京成を冠する駅をきちんと「京成xx」と呼称するようになったことで、ここ最近行先表示や路線図などで起きていた変化がアナウンスにも波及したことになる。
このほか、「各駅停車」と呼称していた普通列車を種別名の通り「普通」と言うようになったり、例えば京成津田沼における乗り換えの案内が「幕張、稲毛、千葉、ちはら台方面と新京成線は乗換え」から「千葉・千原線、新京成線は乗換え」という言い方に変わったりするなど、自動放送に合わせたとみられる言い回しに変更されているところがある。
- 1)アクセス特急は従来より使用されている、車両側に搭載された自動放送装置により自動放送が行われる。
- 2)なので、厳密に言えば自動放送ではないのだが・・・。
- 3)車内放送装置(多言語対応) - 近鉄車両エンジニアリング
- 4)芝山鉄道は京成に運転業務を委託しているものの、れっきとした第一種鉄道事業者である。大げさに言えば、京急線の三崎口到着時に「京成電鉄をご利用いただき・・・」と言っているのと同じである。
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