2023.06.15
東京メトロの路線図に生じた大きな変化とは・・・?
毎年春に実施されるダイヤ改正と言えば、その話題は路線の開業や廃止、車両のデビューや引退など枚挙にいとまがない。2023年春のダイヤ改正も全国各地でさまざまなニュースに溢れたところである。その中でもひときわ大きなできごととなったのは、やはり東急新横浜線と相鉄新横浜線開業による両線の相互直通運転の開始であろう。
これにより、相鉄は東急新横浜線と東横線、目黒線を介して東京メトロ副都心線や南北線、都営三田線、埼玉高速鉄道線と繋がり、東京メトロと都営地下鉄を中心とした首都圏の地下鉄ネットワークに組み込まれることとなった。特に、東横線と目黒線が並走する田園調布~日吉の複々線区間で行き交う車両は、実に8社局18車種1)にも及ぶ。今日日、中学生の考える架空鉄道でもそんな設定やらんだろというようなカオスっぷりを呈している。
相鉄との直通運転の開始に伴い、東京メトロでは「メトロネットワーク」と称する自社線の路線図を約3年ぶりに改訂。ダイヤ改正当日より、最新版となる2023年3月版の路線図を公開した。そんな東京メトロの路線図にある大きな変化が生じている。ひとつ古い2020年6月版と見比べてみよう。
何が変わったかといえば、直通線区の案内表記だ。多くの路線と相互直通運転を行っている東京メトロでは直通先の路線も多く路線図に登場しているところだが、2020年6月版までの路線図で直通線区とともに記載されている直通範囲が2023年3月版では消え、路線名の表記だけになってしまったのである(例:東急田園都市線中央林間まで直通運転→東急田園都市線へ直通運転)。
このような変化はどうして生じたのかは、言わずもがな相鉄が「メトロネットワーク」に参戦してきたことによる影響であろう。直通運転があまりに複雑化する中で、その全てを記載するのが困難になったものと思われる。仮に2020年6月版の体裁で副都心線の東急東横線への直通運転を表現するならば、次のようなものになるだろうか。
- 東急東横線経由みなとみらい線元町・中華街・
東急新横浜線・相鉄新横浜線経由相鉄線海老名・
相鉄いずみ野線湘南台まで
直通運転
なんというか・・・わけわからん。元町・中華街の中黒も地味にややこしいし。正しい内容だとしてもスペースに限りのある路線図上にこのような冗長な情報を載せるのははたして適切か、路線図としての見やすさや分かりやすさと天秤にかけた上で出した答えが表記の変更だったわけである。
さて、これがどれくらいの大きな変化なのか。以下、東京メトロの前身、営団地下鉄の1967年9月版の路線図をご覧に入れたい。
営団地下鉄の他社線との相互直通運転は1962年5月の日比谷線と東武伊勢崎線(現・スカイツリーライン)に始まり、1964年8月の同東急東横線、1966年4月の東西線と国鉄(現・JR東日本)中央線と続いていくが、直通運転についての表記を見てほしい。「日吉(東横線)まで直通運転」というように、直通範囲を合わせて記載するのは相互直通運転の黎明期から行われていたことであった。それは路線図のデザインが大きく変わっても、営団地下鉄が東京メトロに変わっても半世紀以上にわたり脈々と続いていたが、2023年3月になってついに変わってしまったのである。
もっとも、直通運転の複雑化は相鉄に係わる副都心線や南北線に限ったことではなく全体的な傾向なので、表記が変更されるのは時間の問題だったものと思われる。いずれにせよ、2023年春のダイヤ改正は東京メトロの路線図にとってたいへん大きなダイヤ改正となった。
- 1)東急3000系、3020系、5050系、5080系、横浜高速Y500系、東京メトロ9000系、10000系、17000系、都営6300形、6500形、東武9000系、9050系、50070系、西武6000系、40000系、埼玉高速2000系、相鉄20000系、21000系。
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