2015.10.18
タイ国鉄の旅、前回はフワランポーン駅の様子を紹介したが、フワランポーン駅に来たのは他でもない、列車に乗るためである。アユタヤ王朝の遺跡群で有名な、古都アユタヤへ向かう。
ボロの客車列車に後ろ髪を引かれながらも、ここは時間の制約もあって特急列車を選択。バンコク8時30分発のチェンマイ行の9レに乗ることにした。特急9レの車両は韓国大宇(DAEWOO)製のディーゼルカー3両編成で、ディーゼル特急となっている。1990年代にタイ国鉄が飛行機に対抗して導入したものだそうで、愛称は"スプリンター"。さて、その実力はいかほどか。
さてその特急列車だが、時刻は既に8時25分を過ぎているにもかかわらず、列車は入線していない。やや不安になりつつも、待つほかない。発車時刻の8時30分を少し過ぎた頃、ようやく車両がホームに入ってきた。これはすぐに発車するのだろうと思って、乗車。指定された座席につく。ところが、一向に発車する気配がない。何をやってるのやらと思いきや、どうやら車体を洗っているらしい。本当にのんびりとした国である。
車内はいくぶんくたびれている。座席はリクライニングシートとなっているが、座席によってはそれが故障しているようで、私の目の前の乗客がそれで四苦八苦していた。これは韓国製だからではなく、経年による劣化とタイ国鉄のメンテナンスが悪いせいだと思う。そして冷房がキンキンに効いている。外の気温は連日の30度超で蒸し暑いが、こういった列車に乗る際は、冷房対策をきちんとしておいたほうがいいかもしれない。それにしても車内はヨーロッパからの旅行者と思しき人が多い。座席はほとんど西洋人で埋まっていた。
結局、列車は15分遅れくらいでフアランポーン駅を発車。フアランポーン駅を発車した特急だが、もちろん回復運転なんてものがあるわけなく、やけにチンタラと走っている。それどころか、ところどころ駅でないところで停車するというありさま。先行列車でも詰まってるのかと思うものの、タイ国鉄の列車密度からするとそんなわけはあるまい。後から調べてわかったことだが、バンコク都内の道路混雑のため、特にラッシュ時間帯において列車よりも道路交通を優先的に動かしているとのこと。列車が駅でもないところで止まるのは、踏切があったためだったようだ。特急列車ですら踏切で止められてしまうなんて悲しすぎるぞタイ国鉄。
バンコクの都市圏を抜けて郊外に出ると、さすがにスピードが上がってきた。70〜80km/hは出ているだろうか。ここらへんで、アテンダントより軽食のサービス。ソフトドリンクとスナックという簡単なものだが、このようなものがあるとは知らなかったので少し驚く。私はアユタヤで降りてしまったが、その先では昼食のサービスもあるらしい。なるほど確かに飛行機を意識したサービスになっているわけだな。
ちなみに運賃は、フアランポーン~アユタヤ間の2等運賃が35バーツなのに特急料金が310バーツで計345バーツというわけのわからない料金設定。この区間、最も安いエアコン無しの3等客車ならば15バーツで済むので、この列車でタイ人をほとんど見かけずに外国人旅行者だらけなのも妙に納得である。
程なくして、列車はアユタヤに着いた。10時10分、フアランポーン出発時点よりも遅れが増大し、定刻より25分ほど遅れての到着である。なお、タイ国鉄では列車の遅延が日常茶飯事となっており、外国人旅行者に対して帰国日の長距離列車での移動を避けるようアナウンスしているという体たらくぶり(列車が遅れて帰りの飛行機に乗り遅れる可能性があるため)。そんなんだから、飛行機に対抗して登場した特急"スプリンター"も実態は飛行機に惨敗となっているようである。そもそも1時間強のフライトで済むバンコク〜チェンマイ間に対して、乗車時間12時間の座席特急では勝負する前から勝敗は見えていた気もしないではないが。アユタヤ時点で25分遅れとなっている9レ、この先はたしてどれくらい遅れたのやら。
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