2018.08.31
数々の珍列車を紹介してきたシリーズも今回でめでたく100回。第100回記念スペシャルということで、本当に珍しい不定期列車、S57運行の試運転を取り上げてみよう。
- [平日]S57 試運転
- 始発:宗吾参道---- 〜 終着:八千代台----
- ダイヤ:2012.10.26改正
- 備考:不定期列車
S57運行・・・京成線をよく見ている方にとってはお馴染みの番号であるかと思う。全般検査(全検)や重要部検査(重検)に伴う試運転がこの行路にて実施1)されており、Twitterなどでの目撃情報でもよく挙がる、注目度の高い行路だ。以前の記事で、不定期運行を示すSが頭文字となる運行番号のうちS30番台からS40番台にかけては高砂〜宗吾参道間の臨時回送にあらかじめ割り当てられていることをご紹介したが、S40番台からS60番台にかけては宗吾参道を発着する試運転列車として設定されている。S57運行はそのうちの1つとなっており、運転区間は宗吾参道から八千代台までの1往復。昼下がりの八千代台駅1番線に試運転と表示したピカピカな電車が停車していたならば、この列車と思っていただいて間違いない。
そのようなものなので、S57運行には宗吾車両基地にて全検あるいは重検を施工される車両であれば充当される可能性がある。全検・重検を京成に委託している北総車も、京成線内をこのS57運行の試運転で走る姿を見ることができる。このほか芝山鉄道と舞浜リゾートラインの車両も宗吾車両基地で全検・重検を実施しているが、これらは例外。芝山車はこれまでいずれもS57運行ではない行路での試運転となっている。全検あるいは重検に伴う試運転はその車両にとっての自社線内で実施する必要がある2)ようで、芝山鉄道の車両を芝山千代田まで入線させるための措置である。舞浜リゾートラインの車両は・・・これはいちいち説明しなくてもお分かりいただけると思う。
よく出場試運転などと言われるが、この試運転自体が全検あるいは重検の工程における最後の仕上げとなり、これに合格して初めて検査の完成(出場)となる。運行にあたっては検査担当の係員が乗車しており、駅間では急制動の試験をするなど、出場に向けた念入りなチェックが行なわれている様子を見ることができる。したがって、S57運行の試運転で不具合が見つかれば、さらに別の行路にて試運転を追加で実施する場合がある。また、AE形は成田スカイアクセス線内で160km/h運転を行なうゆえにS57運行の試運転だけでは出場とならず、後日に成田スカイアクセス線内でも試運転(AE47運行)を実施している。
なお、全検あるいは重検に伴う試運転は必ずしもS57運行で実施というわけではなく、他の不定期列車と運転日が重なっているという場合には別の行路で試運転を実施することがある。また、2011年3月に発生した東日本大震災では、S57運行の運転区間内であるユーカリが丘〜うすい間の軌道が深刻なダメージを受けたため、しばらくの間、試運転を佐倉〜東成田間という全くの別行路で実施していたことがあった。
以上、S57運行がどのような試運転かを長年の観察に基づいて記してみたが、細かいことを抜きにしても検査上がりたてのピカピカな車両3)を見るのはやはり気持ちが良い。その仕上がりからは宗吾車両基地の係員による懇切丁寧な作業の様子が想像できるというものだ。一方、車両の検査は法令等に則ったものである。そのため、S57運行それ自体は不定期列車だが、長い目で見れば定期的に運転される性格のものとも解釈できる。そういった意味では、将来的に試運転の列車が走らなくなるということはありえない。ダイヤ改正で消滅する危険性を孕んでいる1日数本の定期列車の方がよほどレアになる可能性がある。
- 1)S57運行は平日ダイヤの番号。土休日ダイヤの日に実施した場合、同様の行路は現行ダイヤではS53運行として運転される。
- 2)これは北総車も同様だが、後日に北総線内の試運転も実施している。
- 3)2014年度より一部の車両を対象に新重検という新しい検査が実施されているが、この場合はあまりピカピカではない。
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