KSWeb

鉄道やバスなど、公共交通に関するディープな話題をお届けしています。

etc...

エトセトラ

2018.08.05

四直における日常の一風景として、京急線内を快特として走る北総車を取り上げてみよう。

D27025.jpg

北総9100形 9118編成
2016.7.5/平和島

▲京急線内を快特として走る北総9100形

様々な列車が行き交う都営浅草線を中心とした直通系統、四直。この中で、北総線方面からやってくる列車は主として羽田空港を発着しており、京急側では都心〜品川〜羽田空港のアクセスとして重要な役割を担っている。印旛沼のほとりに車庫を構える田舎の電車が東京の空の玄関である羽田空港への足になっているというのは直通運転の面白いところだが、2012年10月ダイヤ改正から日中時間帯の列車が京急線内でエアポート急行から快特に格上げされており、北総車の快特が当たり前のように走るようになっている。

北総車の京急線内快特は現行のものを含めて3回設定されている。これらを簡単に振り返ってみよう。

1999年に初登場した北総車の快特1)

北総車の快特の初登場は1999年1月ダイヤ修正における、日中時間帯の羽田空港始発北総線方面行。京急蒲田付近の単線区間のやりくりから、80分に1本の上り列車のみが品川まで快特として走るという、やや変則的なものであった。

当時、日中時間帯の北総線系統列車は基本的に京急線内を特急として走っていたが、このうち80分に1本の列車だけ京急蒲田付近の単線区間でエアポート快特とバッティングしてしまう。1998年11月ダイヤ改正の時点ではこの80分に1本の列車を京急川崎発着として回避していたが、翌1月のダイヤ修正でこれらを羽田空港行発着に変更するにあたり、上り列車を快特として運転することにし、京急蒲田付近の単線区間をうまいこと通過させていたのだった。

あまり綺麗なダイヤと言えるものではなかったため、同年7月に実施されたダイヤ大改正で早々に消滅。ハナから短命なものになるとわかっていたためか北総車では快特の種別幕が用意されず、この半年間の北総車の快特は種別幕を空白にして走るというこれもまた珍妙なものであった。とは言え、京成車の快特が走り出すのは2002年10月ダイヤ改正のことなので、定期列車としての快特デビューは京成車より北総車のほうが早かった2)のである。

2004年に北総車の快特が再登場

北総車の快特の2度目の設定は2004年10月ダイヤ改正。土休日の夜間に羽田空港始発の上り列車の一部が快特に格上げされることになり、この中に北総車の列車が含まれていたことから、北総車の京急線内快特が再登場することになった。この時はダイヤ改正に先立って北総車に快特幕が整備され、北総車もしっかりと快特を表示して走るようになった。

とは言え、せっかくの北総車の快特も22時台の2本のみで、あまり目立つものではなかった。2006年12月ダイヤ改正で消滅。これも結果的には短命なものになった。

3度目の正直。2012年に再々登場した北総車の快特

そして3度目の設定となるのが2012年10月、京急蒲田付近の高架化完成に伴うダイヤ改正で登場した現行のものである。横浜方面エアポート急行の毎時6本化に合わせるような格好で、それまでエアポート急行として運転されていた北総線系統の日中時間帯の列車を全て快特に格上げ。これにより、再び北総車の快特が走るようになった。なにより、今回は1999年の80分に1本のみというわけのわからないものではなく、羽田空港アクセスの広告が謳っていたどんどん来る来るを担う運行系統としての設定。3度目の正直と言わんばかりに、いよいよ北総車の快特が当たり前のように見られる時代が来てしまったのである。

北総車の中には7260形や9000形といった四直の中でも最古参級が混ざっており、これらの車両が日常的に京急の最上位種別である快特で走るようになったのは、趣味的にはたいへん愉快なことであった。反面、運転する側にしてみたら大変だっただろうと思う。北総車の快特の最高速度は110km/hとされており、ダイヤとしてもその前提でスジが引かれているが、車両の性能によりMAX105km/hにおさえられていた7260形や9000形にとってはかなりキツいスジとなっていたはずである。実際、これらの車両の列車だけ遅れてくるなんてのはザラであった。タダでさえ列車が過密な品川〜羽田空港間で、ここの場所なら対向列車に被られないだろうと予測してカメラを構えてみても、いかんせん遅れて走ってくるのでうげげげ対向列車にモロ被り・・・という撮影者泣かせの場面を何度か作ってくれた。

D22544.jpg

北総9000形 9018編成
2014.8.19/平和島

▲9000形の快特羽田空港行。このような古参車両に快特として走る機会を与えてくれた京急には感謝さまさまである
D22994.jpg

北総7260形 7268編成
2014.10.24/平和島

▲7260形も快特として走った。既に晩年の域に入っていた7260形だが、まさしく老体にムチを打ちという感じに・・・
X61746.jpg

北総7500形 行先表示「快特印旛日本医大」
2016.7.5/**

▲北総車の行先表示。京成車が京急線内でも「快速特急」と表示してしまうのに対し、北総車はきちんと「快特」と表示する。同じように見える京成車と北総車の行先表示の中で、異なる仕様のひとつ

◆ ◆ ◆

余談ながら、現行ダイヤにおいて都営浅草線に直通する運行系統の中で最もタイトな走りを要求されるのが、実はこの北総線系統の列車なのではなかろうかと思う。一言で言えば、時間的余裕のなさ。主要駅であり乗降も多くある高砂や押上、品川でも停車時分はそれぞれ30秒しかとられていない。羽田空港国内線ターミナルにおける折返しに至っては、到着してから反対方向に発車するまで2分55秒という鬼畜っぷりだ。

余裕のないダイヤは遅延を引きずりやすい。 羽田空港行の列車が何らかの原因で遅れた場合、折返し北総線方面行の列車は始発の羽田空港国内線ターミナルの時点から遅れてしまう可能性がある。加えて、各駅の停車時分も少ないことから、それを利用して遅延を回復していくのも難しい。北総線→羽田空港→北総線という行程の中のどこか1箇所で遅延が発生した場合、その遅延は復路の北総線内までズルズルと持ち込んでしまう危険性があるということである。

とは言っても大変なのは京急線側、列車本数の少ない北総線内に入れば大丈夫・・・と油断することなかれ(?) 最後にして最大の難関は下りの新鎌ヶ谷である。ここで北総線の列車はスカイライナーの待避を行なうが、列車が新鎌ヶ谷に到着してからスカイライナーが通過するまでの時間はわずか70秒! こんなもん、絶対に遅れてくんなと言っているようなものである。

成田スカイアクセス線・北総線においては天上天下スカイライナー絶対主義であり、後ろから猛烈な勢いで追いかけてくるスカイライナーに迷惑をかけないためにも、なんとしてでも復路の新鎌ヶ谷まで定時でたどり着かなければならない4)。下りスカイライナーを遅れさせてしまった場合、 成田湯川から先の単線区間の関係で上りスカイライナーにも影響を与えてしまう3)。そしてそれは上りの北総線列車にも波及するという地獄ループ・・・。すなわち、北総線系統の列車はほぼ全ての行程でわずかな遅延も許されず、とにかく頑張って走るしかないのである。

8/8多少の訂正と加筆をしました。

  • 1)当時は「快速特急」と称した。
  • 2)ただし京成車は臨時列車として京急線内を快特として走った実績がある。「成田山号」とかあのへん。
  • 3)日中時間帯のスカイライナーは空港第2ビルで行き違いを行なうため。
  • 4)このため、スカイライナーの待避駅が新鎌ヶ谷から東松戸に変更されることがしばしばある。この場合、東松戸でスカイライナーを待避するアクセス特急も待避駅が高砂になるなど遅延時の対応がある程度パターン化されている。

関連記事

北総7800形7828編成 登場

2017年度も年度末に近づくにつれ、京成電鉄や京成グループで車両の動きが出てきている。北総鉄道では、7800形7828編成が登場した。7800形7828編成は京成3700形のリース車両となって...

北総7800形7828編成 登場
北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9800形 登場

​まもなく2017年が終わろうとしている。本年最後の記事として今年に登場したヘンテコ電車の話題を取り上げて、2017年を締めくくろう。春は別れの季節であり、出会いの季節でもある。それは鉄道車両...

北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9800形 登場
北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9000形 営業運転終了

北総9000形が引退へ。北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9000形が営業運転を終了した。定期列車としての最終運行は17日の35N、2334N(印旛日本医大→印西牧の原の入庫回送)であった。また...

北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9000形 営業運転終了
北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9200形 初の重検出場

北総9200形、登場から早くも3年半が経過。11月1日、宗吾工場に入場していた北総9200形9201編成が同所を出場し、試運転を行なった。登場から早3年半、9200形にとっては初めての重要部検査...

北総鉄道(千葉ニュータウン鉄道)9200形 初の重検出場
惜別 北総鉄道7260形

2015年2月をもって廃車となった北総鉄道7260形。そんな7260形を追悼して、7260形の写真特集をお送りする。4直を走る車両の中でも人気が高かったと思われる7260形、1本のみの珍車両...

惜別 北総鉄道7260形

おすすめの記事

2024.07.20

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K

京成車の特急泉岳寺行が登場。平日1681Kレは、京成車で運転される特急泉岳寺行である。2023年11月ダイヤ改正で登場した列車となっている。京成車の泉岳寺行は都営浅草線西馬込始発のものは数多く...

四直珍列車研究 134 - 平日 1681K

2024.07.15

京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)

空とあなたと夏詣。京急電鉄では、6月末より「京急夏詣キャンペーン2024」の実施に合わせて、「京急夏詣号」の運転を行っている。「夏詣」キャンペーンは同社が2019年度より毎年実施しているもので...

京急1000形 「京急夏詣号」運転(2024年)

2024.07.10

都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える

都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で...

  • 東京都交通局
  • タグはありません
都営浅草線 自動放送どうするの問題を考える

2024.07.04

船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」

「ふなっしー」なバスが走る。船橋新京成バス2741号車が特別仕様「ふなっしー号」として走ってる。「ふなっしー」といえば千葉県船橋市を中心に暴れている同市で人気の非公認キャラクターだが、2023年...

船橋新京成バス2741号車 「ふなっしー号」

2024.06.30

北総車の京急線内特急運転が復活

約19年ぶりに復活した北総車の京急線内特急運転を見る。京急線に大きな変化をもたらした2022年11月ダイヤ改正。京急自ら「23年ぶりの大改正」としたこのダイヤ改正では、特に日中時間帯の運行...

北総車の京急線内特急運転が復活