2021.09.16
京急線品川駅の整列乗車、難しすぎ・・・?
日本人は並ぶのが好きと言われている。好きと言われても嫌いかもしれないけど、美味しいラーメンを食べるのにやっぱり並んでしまうのだから仕方がない。鉄道においては整列乗車という格好で、乗客同士のトラブル防止とスムーズな乗降による定時運行の確保を図っている。
そんな中、一段と激しい整列乗車を実施しているのが京急線の品川駅、下り列車が発着する1番線である。どういった整列乗車なのか。まずは公式ルールを見てみよう。以下のとおりとなっている。
- 赤枠:【横浜方面】都営線からの快特・特急
- 青枠:【羽田空港行】羽田空港行のすべての列車
- 緑枠:【横浜方面】泉岳寺・品川始発の列車と品川で後ろ4両増結される車両
- 黒枠:普通種別のすべての列車
- 黄●:2ドア車
この整列乗車が始まったのは2017年4月末のこと。それまでも整列乗車をしていなかったわけではないが、列車の停止位置を変更するにあたりルールの大幅な強化が行われた。何と言っても目を引くのは、ホームの床一面に貼られたカラフルな整列乗車用の枠。なんだかツイスターゲームを連想させる。列車の待ち時間もエンターテイメントに昇華させてしまうのはさすが京急だ。
冗談はさて置いておくにしても、いくらなんでもルールが難しすぎぃ! と思ってこの新しい整列乗車が始まる際にTwitterでやや煽ったツイートをしたところ、それが3800RT・2600favとプチバズ。京急さん、ネタを提供してくれてありがとう。
京急品川の4/29からの整列乗車が難易度高すぎで笑うw 乗客にもプロを求める、それが京急クオリティ pic.twitter.com/C1b44bv9YN
— 立花ういんぐ (@KSWeb_org) April 23, 2017
さて、上記のツイートで難易度が高いと書いたが、2つの点で難しさがあると思ったわけである。
ひとつは、単純に整列位置がやたらと細分化されている点。1つの乗車口に対して整列の枠が4つもあるというのはなかなかである。どの枠に並べばよいかは前述のルール通り。自分がこれから乗るのがどういった列車かを認識しないと、どこに並んだらいいか分からないのである。沿線で京急に揉まれたプロ乗客ならまだしも、羽田空港を利用する地方の人たちも多い品川でこれをさせるのかいというのも大きい。
羽田空港行と普通列車はいいとして、横浜方面の特急と快特は始発駅の違いで整列位置が異なるのは凶悪度が高い。着席需要のためにこれらを分ける必要があるにしても、泉岳寺からやってくる同じ表情をした列車に対して泉岳寺始発かどうかも見分けなきゃいけない・・・? そして、よしんば目的の位置に整列できたとしても安心してはいけない。2ドア車というトラップがあるからだ。自分が乗る列車が2100形かどうかも確認しておかないと、品川では生き残ることができない。
第二に、整列位置からの乗車方法である。一般的に列車に乗る際は扉の両脇で降車する人を待ってから乗り込むが、ここはそうではない。整列を崩さずに前から順にそのまま乗り込む。扉に近い位置の青枠と緑枠はまだいいとして、赤枠と黒枠は端から回りこむようにして乗り込む必要がある。いくら訓練された京急のプロ乗客だとしても、さらなる訓練が必要に見えた。
特に、右端から乗車する黒枠の普通は1列ということもあり立場が弱い。左サイドはガラ空き、この状態では相手がクリスティアーノ・ロナウドでなくとも簡単にゴールを決められてしまうことであろう。自分がきちんと並んでいるところに横入りされることほど腹の立つことはない。このあたりが原因となって、かえって乗客同士のトラブルが起きてしまうのではないかという心配もあった。
◆ ◆ ◆
・・・と、整列乗車が始まった頃の印象をごちゃごちゃと書いたが、結果的に前者の心配は杞憂に終わっている。駅の案内表示器を見ればどこに並べばよいか書いてあるし、ホームに立硝している駅係員もしきりに整列位置をアナウンスしている。これらの案内に従えば、まずどこに並べばよいかという問題は比較的簡単にクリアすることができる。
しかし、後者はどうにもなっていない。実施開始から4年を経ての慣れから減っているとは思うものの、事情がよく分かっていない人による横入りが今もしばしば見られる。特に普通。普通は特急や快特の直後に発車することが多いから状況的に起こりやすいとは言え、やはりあまり気持ちがよいものではない。なんとかならないかと思うものの、これ以上なんとかするのも難しそう。
◆ ◆ ◆
そもそもなんでこんな整列乗車を実施しているかというと、京急品川駅特有の事情からである。下り列車においては一部時間帯に3番線からの発車があるものの、終日にわたり使っているのは1番線のみ。ターミナル駅にもかかわらず、ほとんど1面1線で列車をさばいてるということになる。
そんな状態でおのずと削られるのは列車の停車時間。日中時間帯の快特ですら30〜40秒しか停まらないのだから、定時運行をするためにはお客さまにさっさと乗降してもらうしかないのである。やたらと細分化された整列位置は必要に迫られてのこと。京急の提唱するどんどん来る来るは、品川駅の整列乗車によって支えられているといってもよいくらいだ。
そんな京急線の品川駅だが、2020年度から始まった泉岳寺〜新馬場間の連続立体交差化事業により、地平化とともに2面4線化される予定となっている。2線あれば列車の交互発着も可能になるだろうから、停車時間にも多少の余裕を持たせることができるはず。あるいは、横浜方面と羽田空港行で発着ホームを分けるのもアリだろう。品川駅の激しい整列乗車を楽しむことができるのも今のうちである。
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