2020.09.30
私たちの頭上でやさしく微笑む彼らのお話。
世の中にはさまざまなキャラクターが溢れているが、京成線におけるキャラクターをひとつご紹介しよう。キャラクターと言っても、現在進行形で調子こいてるパンダや、2010年ごろから行方がわからなくなっているスカイくんとライナちゃんではないぞ。私たちの頭上でやさしく微笑んでいる彼らである。
京成線の一部の車両には、座席定員を示す着席ステッカーが貼られている。そこに描かれているタマゴのようなキャラクターが彼らである。長らく京成線を利用されている方であれば必ず目にしているであろうこのキャラクターたちだが、正式な名前があるのかないのかなど、その正体は謎につつまれている。ここでは勝手に"タマゴくん"と呼ぶことにしよう。
「京成電鉄85年の歩み」によれば、この着席ステッカーが車両に貼られたのは1985年とのこと。京成パンダが2006年生まれ、スカイくんとライナちゃんが1990年度に登場したAE100形をモチーフにしていることを考えると、彼らの先輩にあたる。タマゴくんはキャラクターとして制作されたわけではなく、座席定員を明示するためのイラストにすぎないのだが、そのふんわりとした雰囲気は実に印象的。昨今のキャラクターにありがちなデジタルなイラストではなく、手書きで丁寧に描かれた感じもよい。そんな彼らに思いやりヨロシクとやさしく語りかけられたら、気持よく定員を守って座る気分にもなるものだ。
現存しているステッカーは、8人がけ用、6人がけ用、5人がけ用、3人がけ用の4種類。かつては4人がけ用のものもあったらしい。タマゴくんのイラストは使い回しをせずに、それぞれのステッカーでオリジナルのものが描かれている。
そんなタマゴくんの着席ステッカーだが、残念ながら徐々に数を減らしている。特に2000年代に入ってからは新規で貼られる機会が減少しており、2002年度に登場した3000形以降の車両では最初から着席ステッカーは貼られていない。また、着席ステッカーが貼られていた車両でも、3500形や3700形では検査や車体改修を機に剥がされてしまったものもある。その原因のひとつにバケットシートの普及があろう。バケットシートはそれ自体で着席区分が明確なため、着席定員を改めて表示する必要がなくなっている。
現在、タマゴくんの着席ステッカーが見られるのは3500形の一部と3600形、3400形となっている。しかし、これらの車両はいずれも廃車が進んでおり、これらの車両の淘汰とともに着席ステッカーも自然消滅するものと思われる。タマゴくんたちは消え行く運命にある。
電車内以外の"タマゴくん"たち
着席ステッカーのタマゴくんだが、少しだけ電車の外でも見ることができた。一部の駅の配布用時刻表では、余白の部分にタマゴくんのイラストがあった。上の写真は京成津田沼駅のものだが、5人がけ用のイラストをそのまま転載する格好で掲載されている。このほか、2000年ごろに制作されたマナーポスターでは、明らかにタマゴくんを意識したイラスト1)がデザインされたことがある。
面白いところでは、京成バスの車内でもタマゴくんを見かけることができた。バスの一番うしろの5人がけ座席のところに、電車で使われている着席ステッカーが貼られている車両が存在した。
- 1)京成時刻表Vol.21、P94、P177。
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