2014.10.09
当サイトとしては3本目の海外特集(?)である韓国ソウル篇が進んでいるが、並行してスペイン・バルセロナの様子も紹介したい。
バルセロナの交通事情
バルセロナはスペインの北東部、地中海に面する都市で、カタルーニャ州の州都である。バルセロナと言えば、100年以上工事が続いているアントニ・ガウディのサグラダ・ファミリアやサッカーの強豪チームFCバルセロナ(通称:バルサ)あたりが有名だろうか。もちろんサグラダ・ファミリアやバルサの試合も見に行ったが、そんなことは一般的な旅行ブログを見てほしい。ここで紹介するのはやはりその交通事情である。
バルセロナは人口160万を擁するスペイン第2の都市ということもあって、公共交通がよく発達している。1924年に開業した地下鉄は現在11路線が運行中であり、19世紀の都市計画によって整備された碁盤目状の通りにはバスが闊歩する。さらに、バルセロナとその都市近郊を走る近郊列車や、都市間を結ぶ特急列車ももちろんバルセロナに乗り入れているので、移動に関して困るということはないだろう。
バルセロナ市内の地下鉄やバスといった公共交通はバルセロナ交通局が、近郊列車や特急列車はスペイン国鉄(Renfe、レンフェ)がそれぞれ主に運行している。このほか、カタルーニャ公営鉄道(FGC)という事業者も近郊列車と一部の路線を地下鉄として運行しているようだ。バスはもちろんのこと、地下鉄や近郊列車にも運行系統番号が付されているのが特徴である。これは事業者関係なしに地下鉄はLxx、近郊列車はRxx(FGCの一部はSxx)というようにアルファベット+数字の組合せで案内されている。都市内の運賃も3つの事業者で共通となっており、利用者が運行事業者の違いを気にしないで済む工夫が凝らされてるのはいかにもヨーロッパの都市交通らしい。
運賃と便利なチケット
バルセロナ交通局、Renfe、FGCという構図は、東京で言うならば東京都交通局、JR、東京メトロというのに似ているが、都市内の運賃は3つの事業者で共通となっているのは前述した通りである(事業者単独のチケットもある)。運賃体系は日本には馴染みの薄いゾーン制となっているが、バルセロナ市内中心部は1 zoneとして地下鉄全線を含んだ設定となっているのでわかりやすい。地下鉄だけを使うのであれば均一運賃だと思えばよい。
最も基本となるチケットは一回乗車券(Single Ticket)だが、これを使う機会は少ないと思う。チケットは様々な種類のものが発売されており、いずれもSingle Ticketよりも割安になるためだ。今回の私のバルセロナ滞在で使ったのはT-DiaとT-10というチケット。T-Diaはいわゆる一日乗車券、1 zone用で6.65ユーロ(2〜6 zones用も設定あり)であった。T-10は10回乗車券で、同じく1 zone用で9.95ユーロ(同)となっている。1 zone用のSingle Ticketが2.15ユーロであることを考えると、これらの乗車券がいかにお得かお分かりいただけると思う。乗るたびにいちいちチケットを買わずに済むという点も大きい。私が観察した範囲では、地元の人々も基本的にはSingle Ticketで乗車するということはなく、こういった類のチケットで公共交通を使っているようだった1)。
面白いのがT-10で、これは複数人で使い回しが可能というルールのチケット。例えばT-10を2人で使うときは、まずは1人目が自動改札を通って2人目にそのチケットを渡し、2人目が続いて自動改札を通るといった感じ。日本でこういった使い方をする乗車券はなかなか無いので、新鮮であった。ただし、チケットは比較的ペラペラの紙なので注意されたし。チケットがくしゃくしゃになるなどして、自動改札等での情報の読み取りがわりとすぐダメになってしまうのはヨーロッパクオリティ。同行人がそれでチケットを買い直すハメになった。嗚呼、割安なチケットを買ったはずだったのに・・・。
Renfeの列車とバルセロナ・サンツ駅
バルセロナ市内を移動するだけならば、地下鉄とバスだけで用が足りるだろうと思う。実際、今回のバルセロナ訪問でRenfeを使ったのは空港〜市内の移動と、タラゴナというバルセロナから1時間ほどで行ける都市を日帰りで旅行した時だけであった。Renfeの列車はほとんどがEMU(電車)で運転されているのが印象的であった。空港から市内への移動で乗った近郊列車R2Nord系統は近郊列車だからEMUでの運転というのはある程度想定していたが、タラゴナに向かう際に乗った快速列車もEMUなのは意外だった。ヨーロッパだから客車列車を期待していたのだが、スペインで客車列車に乗りたくばもっと長距離を運行する列車でないとダメなようだ。
バルセロナの中心駅はサンツという駅(Estació de Barcelona-Sants)。市内の中心部からはやや離れたところに位置しているが、近郊列車のほか特急列車、スペインの高速列車AVEやさらにフランスからTGVの乗入れもあるバルセロナのターミナル駅となっている。空港を発着する近郊列車R2Nord系統もサンツ駅を経由する。地下鉄も2路線乗り入れているので、サンツ駅で地下鉄に乗換えて市内中心部へ向かおうという算段である。
当然、乗換えの際に、AVEやあわよくばフランスからやってきたTGVをお目にかかろうかと目論んでいたが、2004年に首都マドリードで起きた列車爆破テロの余波もあってか、高速列車ホームへの立入りはX線による荷物検査を行うほどの警戒態勢。たかが空港〜市内間のチケットしか持っていない我々が立ち入れるような空気ではなかったので、早々に諦めるハメになった。また、サンツ駅自体も1970年代に作られた比較的新しい駅でホームも全て地下となっており、面白みもあまり感じられない。そんなこともあって、結局サンツ駅での長居はせず、さっさと地下鉄で市内中心部へ向かったのであった。
- 1)地元の人々はT-10なんかではなく、さらに使用可能回数の多いT-50やT-70、有効期間の長いT-Mes(30日券)やT-Trimestre(90日券)を使っていた。
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