2017.08.01
国鉄型車両を訪ねて、その22は583系による寝台急行「きたぐに」。
寝台急行「きたぐに」は、大阪〜新潟を結んでいた夜行列車である。車両は京都総合運転所に所属していた583系の担当で、これは1985年のダイヤ改正からとのこと。もともと特急列車用として製造された583系を急行に使うなんて・・・と当時の人は思ったろうが、走ってくれるだけでありがたいというもの。583系の特急列車としての定期運用は1994年の寝台特急「はくつる」からの撤退で終了、結果的にこの「きたぐに」が583系唯一かつ最後の定期運用になった。
583系の「きたぐに」の素晴らしいところは10両編成だったこと。いくら急行列車と言えども、長大編成で日本中を駆け抜けていた頃の583系に違わぬ姿で走っていたのは頼もしさが感じられた。583系そのものは定期運用のないJR東日本管内でも波動用として残されていたが、晩年は6両編成に短縮されており、JR西日本に在籍する583系とは大きな違いがあった。惜しむらくは最後の最後までJR西日本のオリジナルカラーだったことだろうか。趣味車のわがままと言われればそれまでなのだが、リバイバルカラーになっていたとしたらかなりの注目を集めていたのではないかと思う。
「きたぐに」が定期運行を終えたのは2012年3月ダイヤ改正のこと。その後も臨時列車として細々と走っていたが、これも翌2013年1月分の運行をもって終了。これをもって寝台急行「きたぐに」は廃止になった。廃止の理由は、利用客の低迷に加えて583系の老朽化によるとのこと。何らかの車両でもって運行を継続できなかったのは残念だが、日本における夜行列車を取り巻く状況を如実に現した格好であった。
◆ ◆ ◆
さて、583系についてはJR東日本の秋田車両センターに在籍していた波動用の車両も本年4月のさよなら運転を実施、この車両の引退をもって583系は日本の線路上から姿を消した。そんな中、嬉しい知らせが舞い込んできた。台湾メディアの報道によれば、現在旧台北機廠に建設中の鉄道博物館の展示用に日本から2両の583系(モハネ583-106、モハネ582-106)が譲渡されるとのこと。昼間は座席に、夜間は寝台になる鉄道史上でも稀有な存在というのが同博物館への収蔵の決め手になったようだ。583系は日本においても民間に譲渡されたものも含めてかなりの数の車両が静態で保存されているが、ここにきて海外に譲渡される車両が出てこようとは思うまい。昼夜を問わず走り続けてきた583系にとって最高のご褒美と言えるだろう。
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