2020.11.16
11月10日、京成電鉄より2020年度の鉄道事業設備投資計画1)が発表された。これを読んで、同社の今後の動きを探ってみよう。
例年より半年遅れの計画発表
例年は5月中旬頃に発表されている京成の鉄道事業設備投資計画だが、今年度は大幅に遅れて異例の11月中の発表となった。世界的に猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症の影響であることは言わずもがなである。最も酷かった時期で有料特急の運賃収入が前年度比で90%減、2021年3月期の連結最終損益も262億円の赤字を予想2)するなど、散々な状態である。今年度の投資額は176億円となっており、2018年度(201億)や昨年度(227億)と比べると大幅な減額。当初計画の見直しを迫られたことは想像に難くない。
車両関連 - 3100形を導入 ほか
車両についての内容は以下のとおりである。
- 3100形を導入(8両編成2本、実施済)
- 車内照明のLED化(AE形2本、3000形6本)
- 通勤型車両に防犯カメラを設置
車両については、今年度は3100形8両編成2本を導入する。既に3153編成と3154編成がともに7月中旬より営業運転を開始しており、設備投資計画では事後報告という形になっている。
なお、京成が6月に開示した有価証券報告書3)によれば、来年度も16両の鉄道車両を新造する予定とのこと。引き続き成田スカイアクセス線仕様の3100形を導入するものとみられ、3155編成と3156編成が製造される見込みである。
このほか、設備投資計画には記載がないものの、3700形の車体改修工事が終盤を迎えている。2011年度の3708編成から始まった車体改修工事は今年7月に3868編成まで完了し、未改修で残るのは北総鉄道にリースしている編成のみ。3700形の車体改修工事が終わり次第、3000形の車体改修工事が実施されていくものと思われる。また、今年でデビューから10年を迎えたAE形についてもそろそろリニューアルのタイミングが近づいていると思われ、来年度あたりからそこらへんの動きがあるのかどうか気になるところ。
駅・設備関連 - 京成西船駅と千葉中央駅をリニューアル ほか
続いて駅・設備関連を見てみよう。
- 駅施設リニューアル(京成西船、千葉中央)
- 耐震改修(京成大久保駅舎、千葉中央〜千葉寺間高架)
- 成田空港駅にホームドアを設置
- 駅構内の行先表示器の多言語化(青砥、京成高砂)
- LCD型行先表示設備の設置(堀切菖蒲園、国府台、志津)
- 多機能トイレ設置(みどり台、千葉寺、おゆみ野)
- デジタル方式の列車無線装置への更新
- 京成立石駅付近の連続立体交差化工事の推進
- など
駅舎のリニューアルについては京成西船が夏ごろに完了しているほか、千葉中央が西口ビルの建替えに合わせて2021年度完了の予定で工事が進められている。京成大久保の駅舎の耐震改修は駅舎丸ごと建替えとなる模様で、現在は仮駅舎の建設が進められている段階。こちらは2022年度完了予定。
成田空港駅にホームドアを設置した。これにより、2020年度までに整備するとしていた日暮里、空港第2ビル、成田空港の3駅へのホームドア設置が完了した。このほか、ホームドアについては東京都「鉄道駅バリアフリーに関する優先整備の考え方」に基づく整備計画4)において、押上(2021〜2023年度予定)と京成立石(未定)の駅名が挙がっている。京成立石は連続立体交差化の最中だが、高架新駅へのホームドア設置が計画されているようだ。
初出なのは液晶ディスプレイ(LCD)型の行先表示設備の設置。今年度は堀切菖蒲園、国府台、志津の3駅に設置される予定となっているが、実は昨年度より登場しており実籾やユーカリが丘では既に稼動しているものが見られる。
2017年度より進められている列車無線更新は、いよいよ2021年3月より運用開始予定。今年度に入ってからSRアンテナを本設した車両がお目見えしているほか、基地局の設置、無線関連とみられる試運転が実施されているなど、準備はたけなわになっている。
- 1)2020年度 鉄道事業設備投資計画[PDF] - 京成電鉄の2020年11月10日付お知らせ
- 2)京成、262億円の赤字に 今期最終 - 日本経済新聞(※有料記事)
- 3)有価証券報告書 - 第177期(2019年4月1日〜2020年3月31日)
- 4)鉄道駅バリアフリーに関する整備計画【都内駅】[PDF] - 2020年3月19日付
関連記事
京成グループ 車両の動き(2020年度)
年度末ということで、京成グループにおける2020年度の車両の動きをまとめてみよう。2020年度、京成電鉄は3100形8両編成2本を導入した。2本はいずれも成田スカイアクセス線仕様の3150番台で...
京成3400形3408編成 営業運転終了
京成3400形に初の廃車が発生。京成電鉄では今年度、新型車両となる3100形を2編成導入する予定となっているところだが、3153編成の導入に伴い3400形3408編成がこのほど運用を離脱、廃車に...
京成3100形3153編成・3154編成 登場
7月上旬より、京成3100形の2次車にあたる3153編成と3154編成がお目見えしている。京成電鉄では、2020年度の予定として3100形8両編成2本の新造を計画していたが、3153編成と...
京成3000形・3700形 デジタルSR無線アンテナの本設始まる
2021年3月に運用開始を予定している京成線のデジタルSR列車無線の導入について、このほど新しい動きがあったので見てみよう。2017年度より進められている京成線の列車無線更新。これに関連して...
京成グループ 車両の動き(2019年度)
年度末ということで、京成グループにおける2019年度の車両の動きをまとめてみよう。2019年度、京成電鉄は3100形8両編成2本(3151編成・3152編成)とAE形8両編成1本(AE9編成)を...
最新記事
北総線 西白井駅で『ウマ娘 プリティーダービー』特別装飾を実施
「ウマ娘」たちが北総線西白井駅を駆ける。北総鉄道では、10月中旬より西白井駅において『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』の特別装飾を実施している。『ウマ娘』とは、株式会社Cygames...
「都営フェスタ2024 in浅草線」開催
5年ぶりの祭典。11月30日、東京都交通局馬込車両検修場で車両基地公開イベント「都営フェスタ2024 in浅草線」が開催された。三田線の志村車両検修場と交互で概ね2年に1度に開催されるイベント...
京成電鉄 モーニングライナー・イブニングライナーの特急料金を改定
京成線、モーニングライナーとイブニングライナーを実質値上げ。11月23日、京成電鉄では京成本線で運行している座席指定制の特急列車モーニングライナーとイブニングライナーの特急料金の改定を実施した...
四直珍列車研究 136 - 平日 720T
唯一、かつ初めての羽田空港行。京成線や北総線、都営浅草線では、23日にダイヤ修正が実施される。ダイヤ修正前日の記事として、今回も消えてしまう珍列車を取り上げてみよう。平日720Tレ特急羽田空港行...
京成線 2024年11月23日ダイヤ修正
京成電鉄では、11月23日にダイヤ修正を行う。今回のダイヤ修正について、プレスリリースや15日発売の京成時刻表Vol.33などで明らかになっている情報を基に、その内容を見てみよう。本稿では...