2020.08.23
祝・成田スカイアクセス線10周年。
7月17日に成田スカイアクセス線は開業10周年を迎えた。これを記念して、過去2回の記事でスカイライナーとアクセス特急について開業からの10年間を振り返ってみたつもりであるが、将来のことも見てみよう。各所から公開されている計画や資料などを基に、成田スカイアクセス線が今後どうなっていくのかを考える。
成田空港の機能強化
まずは成田空港の今後の機能強化・拡張計画について確認しておこう。2019年10月、国土交通省は成田国際空港株式会社法に基づく成田空港の基本計画を53年ぶりに改定した。成田空港に関する四者協議会1)の合意を受けたもので、B滑走路の延長やC滑走路の新設を行うことが盛り込まれている。これにより、年間で50万回の航空機発着が実現されるという。
2020年3月には、同協議会より基本計画の内容を具体的に進めるための実施プランが発表されている。実施プランでは、2028年度までに新滑走路の供用開始、2030年代に新ターミナルや貨物施設を建設する計画とされた。成田空港の年間の旅客数は、2030年代には現在の約1.5倍にあたる6000万人に、2040年代には約2倍にあたる7500万人になることが見込まれており、計画通りに行けば成田空港は今後20〜30年で現在のほぼ2倍の規模になる。
成田スカイアクセス線の将来像
成田空港輸送を担う京成としても、成田空港の動きを黙って見ているわけにはいかないだろう。成田空港の機能が強化されるということは、それだけ空港へアクセスする人も増えるということ。スカイライナーは2019年10月ダイヤ改正で終日20分間隔での運転が実現されたが、旅客数が倍増している2040年代には10分間隔で運転している・・・なんてのも夢ではないのだ。
成田スカイアクセス線の将来像については、京成が現在取り組んでいる中期経営計画「E4プラン」の中に言及がある。2022年度以降に実施される「ポストEプラン」を見据えた長期的な課題として、成田スカイアクセス線の輸送力増強を検討するとしている。その中で挙げられているのは、成田スカイアクセス線の設備改良、車両基地の機能強化、車両・駅等のあり方の3項目。それぞれについて細かく見てみよう。
成田スカイアクセス線の設備改良
成田スカイアクセス線の設備改良では、さらなる輸送力増強に向けてボトルネック解消を検討するとしている。同線におけるボトルネックと言えば、まず思い浮かぶのは成田湯川〜成田空港の単線区間。成田スカイアクセス線の現行の設備は、スカイライナー毎時3本・一般特急毎時3本という当初の運行計画によるもので、当該の区間が単線になっているのはそれで事足りるためだった。スカイライナーは前述のとおり2019年10月に当初の計画通り毎時3本の運行となったわけだが、逆に言えばスカイライナーに関しては設備的に目いっぱいの運転本数に達したとも言える。スカイライナーをさらに走らせるためには、この区間の抜本的な改良が必要となる。具体的には、複線化などが考えられるだろうか。
また、現在事業化に向けて計画が進められている京成高砂駅の高架化も、成田スカイアクセス線の設備を改良するひとつの機会と捉えられよう。現在の京成高砂駅は、成田スカイアクセス線の開業に先立ち金町線を高架化したほかは、従前のまま。同駅で京成本線から北総線方面に転線するスカイライナーは減速運転を強いられる。開かずの踏切の問題もある。高架化に合わせて駅をスカイライナーの運行に最適化した構造にすることができれば、成田空港までの所要時間短縮が図られるなどの競争力の強化が期待できる。
宗吾車両基地の拡張と高砂検車区の移転
車両基地の機能強化については、宗吾車両基地の拡張が計画されている。京成の2020年3月期の決算資料によれば、現在のところ車両基地拡張に向けた土地買収が進められている状況のよう。また、酒々井町議会において、車両基地は現在の敷地の南側に拡張され、線路の増設による車両の留置能力の向上や基地内の施設の更新を行う計画2)であることが明らかになっている。
スカイライナーの輸送力を増強するためには、運行本数を増やすか車両の増結(10両編成化)が考えられるが、いずれにおいても車両基地の機能強化が課題であると言える。宗吾車両基地は既に容量ギリギリに使われている状態だし、10両編成にも対応していない。将来的にスカイライナーの輸送力を増強するためには、宗吾車両基地の抜本的改良は避けて通れない道となっている。
また、先に挙げた京成高砂駅の高架化では、京成本線の高架化に伴って高砂検車区(高砂車庫)が現在の場所から京成本線海側の都営高砂団地の跡地に移転する見込みとなっている3)。宗吾車両基地の拡張は、この高砂検車区の移転におけるバックアップ役も兼ねているものとみられ、この先10〜20年かけて宗吾車両基地と高砂検車区という京成線の二大運行拠点が再編されることになる。
将来のスカイライナーのあり方
具体的に輸送力の増強が実施されていくのは、新滑走路が供用開始されて航空機の発着回数が増加し、旅客数が増えてくる2028年以降になると思われる。そして、その頃にはAE形をどうするの、という問題が生じてくる。現行のスカイライナーであるAE形は2010年7月のデビューから10年を迎えており、先代のAE形やAE100形の例からすると大規模修繕等がなければ2030年代には置換えのタイミングを迎えるだろうからだ。
検討の項目として挙げられている車両・駅等のあり方は、まさにスカイライナーの将来そのものを考えるということであろう。その中には、AE形をどうするかということが含まれているものとみられる。選択肢としては、現行車両の継続使用、10両編成化、次世代車両の開発などいろいろなことが考えられるが、いずれにせよ今後のスカイライナーのあり方の根幹となる重要な項目である。
スカイライナーの停車駅については、今後、運行本数が増えるなら、停車駅違いの便を設定する余地が生まれてくる。その中で、南海電鉄のラピートα・βの関係のような準速達便があってもよいのかもしれない。また、次世代車両は必ずしも現行AE形のコンセプトを踏襲しなくてもよく、AE100形よろしく都営浅草線直通対応の車両として導入すれば、押上線や都営浅草線方面にスカイライナー停車駅ができることも考えられる。なんなら、線内用と浅草線直通用で2種類の車両を作ってもいいのかもしれない。
◆ ◆ ◆
新型コロナウィルス感染症の影響
以上、成田スカイアクセス線の将来について勝手なことをズラズラと書いてみた。いかんせんまだ検討段階のものが多く、ふわっとした内容になってしまったことは否めないが、成田スカイアクセス線が今後どのように成長していくかの大まかなイメージはつかんでいただけたかと思う。成田空港の機能強化とそれに伴う成田スカイアクセス線の輸送力増強は、京成にとって明るい未来である・・・はずだった。
目下、新型コロナウィルス感染症が世界的な流行を見せている。悲しいかな、参照している資料・データはいずれも新型コロナウィルスの流行前のもの。人々の移動が制限される中、航空や鉄道を始めとした運輸業は大打撃を受けており、この先どうなるかの見通しは立っていない。なにせ、毎年恒例の鉄道事業設備設備計画も未だ発表されていないのだから。
特に、国際線が多く発着する成田空港の状況は厳しい。国内の移動もままならない中で、国際的な移動はより長期的な影響を受けることが予想されるためだ。こうした影響が続けば、成田空港の将来的な需要予測も下方修正は免れないだろうし、それを前提とした空港の機能強化も計画通りに進むかどうかはわからない。スカイライナーも現在は40分間隔に間引いての運転となっているし、成田スカイアクセス線の輸送力増強もはたして・・・。
- 1)国、千葉県、空港周辺9市町、成田空港で構成される協議会。
- 2)酒々井町 令和元年9月定例会(第5回)9月24日一般質問
- 3)葛飾区 高砂駅周辺地区まちづくりガイドプラン
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