2021.05.30
初物づくしの1台。
2020年10月、東京都心と臨海副都心を結ぶ新しい交通機関として東京BRTが開業した。開業時より9台の車両で運行していることは以前の記事でご紹介したとおりだが、ここでは特に現時点で唯一の連節バスである1009号車(いすゞエルガデュオ、LX525Z1)について取り上げてみよう。いろいろと初物づくし、実にめでたい1台なのだ。
国産初の連節バス
いすゞエルガデュオを採用した京成バス1009号車だが、そもそもこのエルガデュオ自体が国産初の連節バスとなっている。海外では日常的に見られる連節バスだが、日本では道路運送車両法に基づく保安基準の適用外1)ということもあり、ほとんど走ってこなかった。このため市場が育たず、連節バスを導入しようとした場合には海外のメーカーに頼るしかなかった。
他方、昨今、バス乗務員が慢性的に不足する中で、大人数を一気に輸送できる連節バスが労働力不足に対する切り札のひとつとして注目が高まっていた。2000年代まで国内を走る連節バスは千葉の幕張や神奈川の湘南台、厚木などかなり限定的なものだったが、こうした背景もあいまって2010年代より徐々に全国的な広がりを見せた。
国内において連節バスの需要が増えてきたことや、バス事業者から国産の連節バスの要望が高まったことから、日野自動車といすゞが連節バスを共同開発。国産初の連節バスとしてブルーリボンハイブリッド連節バス(日野)とエルガデュオ(いすゞ)が2019年5月より発売された。
京成バス初のエルガデュオ
というわけなので、京成バスとしても1009号車のいすゞエルガデュオは初導入の車種となっている。前述のように連節バスは日野からもブルーリボンハイブリッド連節バスが発売されているが、エルガデュオが選択されたのは、いすゞ製の車両を中心に導入している奥戸営業所への投入のためとみられる。東京BRTでは一般的なディーゼル・単車タイプの車両も導入されているが、こちらもいすゞ製である。
エルガデュオ全国第1号車
京成バスにとって初めてのエルガデュオは、いすゞとしてもエルガデュオの栄えある納入第1号車ということのよう。実にめでたい。1009号車は京成バスにとってもいすゞにとっても記念すべき車両になった。
初めての「江東ナンバー」
1009号車は京成バスで初めて江東ナンバーを付けた車両となっている。同車が所属する奥戸営業所東雲車庫の車両はもともと足立ナンバーだったが、2020年5月より江東区を対象としたご当地ナンバー「江東」が誕生。江東区に位置する東雲車庫の車両にはこの江東ナンバーが付けられることになった。1009号車導入と江東ナンバー誕生のタイミングがばっちり合ったことで実現したものだが、偶然とは重なるものである。めでたい。
東京23区内で初導入
全国で徐々に普及しつつある連節バスだが、東京BRTが東京23区内における連節バスの初めての導入事例となった2)。めでたい。現時点でも23区内を走る連節バスは東京BRTだけなので、23区内で乗車可能な連節バスは1009号車だけである。海外の大都市では連節バスを見られるのが当たり前なので、これをきっかけに都内でも連節バスが普及することを願う。
- 1)したがって、連節バスの運行には道路運送法に基づく国土交通省運輸局の特例措置を受ける必要がある。この際、使用路線や回送ルートが制限される。
- 2)東京都下では神奈川中央交通が2012年5月より町田バスセンター〜山崎団地にてメルセデス・ベンツ・シターロG「ツインライナー」を運行している。
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