2024.07.10
都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。
列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で案内を行う路線は少なくなっている。自動放送で案内を行うことのメリットは、アナウンサーや声優など声のプロを活用することで一定の品質が常に保たれることや、英語や中国語、韓国語など多言語に対応できる点などがある。後者は特に、訪日外国人旅行者(インバウンド)が隆盛を極める昨今において、より重要性を増している。
そんな中、現在においても車掌の肉声によるアナウンスを行っているのが都営浅草線である。同線で自動放送を行っているのは、都営に所属する5500形のみ。直通してくる京成電鉄や京急電鉄、北総鉄道などの車両は同線の自動放送に対応しておらず、案内は車掌の肉声に頼るしかなくなっている。よりによって、浅草や銀座といった東京の主要エリアを結び、成田と羽田という首都圏の2つの国際空港へのアクセスを担う都営浅草線がこうした状況では、ちょっと困ってしまう。
都営浅草線で自動放送が不十分なのは、直通系統全体で自動放送について2つの方式が混在しているのが原因だ。都営では1991年に導入した5300形で自動放送装置を採用し、自動放送の使用を開始。5500形においても引き続き同じ方式で自動放送を行っている。対して、直通先の京成線と京急線、北総線では、一部の線区1)を除いて乗務員が携帯するタブレット端末を活用した方式をそれぞれ採用した2)。これら直通各社ではそれぞれの線区で車両の所属を問わずに全ての列車で自動放送が行えるようになった一方、自動放送では先行していたはずの浅草線だけが方式の違いで逆に取り残されてしまったのである。
それでは、都営浅草線は自動放送をどうするのか。2つの解決策が考えうる。すなわち、直通してくる他社の車両に都営浅草線内の案内内容を含んだ自動放送装置を搭載してもらうか、浅草線もタブレット端末を活用した自動放送を導入するか、である。
まずは前者だが、自動放送装置の搭載を直通各社にお願いしたとしても、確実に嫌がられることだろう。京成と京急、北総にとって、自動放送はタブレット端末の方式を導入した時点で終わった話だからである。その上で、どうしても自動放送装置が欲しいのであれば、その費用は都営が負担しなければならなくなる可能性が生じるものと思われるが、高価な自動放送装置や搭載・改造費用が各社の直通車両分だけ必要になることを考えると、これはなかなか厳しい選択肢となる。
そうすると、より現実的なのは都営もタブレット端末の方式を導入することになる。車両はすでにタブレット端末の受け入れ体制が整っているし、実は都営浅草線でも啓発放送を流す用としてすでにタブレット端末の活用が行われている。このタブレットに自動放送の内容が追加できれば、現在肉声での案内を行っている他社の車両においても、5500形と同様の自動放送を行うことができるものと考えられる。
いずれにせよ、出費が伴うという点で都営としては頭の痛い問題である。とはいえ、ここは首都東京のど真ん中を都営浅草線であり、案内の質も求められる。自動放送どうするの問題は、やはり遅かれ早かれなんとかしないといけない問題と思われる。
- 1)京成成田スカイアクセス線では、一部の車両(※)で自動放送装置を使用した自動放送を行っている。※京成3100形と3000形、3700形、都営5500形。自動放送装置を有しない京急車はタブレット端末による自動放送を行う。
- 2)タブレット端末による自動放送を行うにあたり、タブレットから出力された音声を車両側の放送回路に接続できるようにする小改造が各車両で実施されている。
- 東京都交通局
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