2024.07.10
都営浅草線の自動放送どうするの問題を考える。

都営5500形 5512編成
2022.8.5/船橋競馬場
列車内における案内として重要なアナウンス。アナウンスでは列車の種別行先や次駅の案内が行われるが、昨今では自動放送が主流となっており、車掌が自らの肉声で案内を行う路線は少なくなっている。自動放送で案内を行うことのメリットは、アナウンサーや声優など声のプロを活用することで一定の品質が常に保たれることや、英語や中国語、韓国語など多言語に対応できる点などがある。後者は特に、訪日外国人旅行者(インバウンド)が隆盛を極める昨今において、より重要性を増している。
そんな中、現在においても車掌の肉声によるアナウンスを行っているのが都営浅草線である。同線で自動放送を行っているのは、都営に所属する5500形のみ。直通してくる京成電鉄や京急電鉄、北総鉄道などの車両は同線の自動放送に対応しておらず、案内は車掌の肉声に頼るしかなくなっている。よりによって、浅草や銀座といった東京の主要エリアを結び、成田と羽田という首都圏の2つの国際空港へのアクセスを担う都営浅草線がこうした状況では、ちょっと困ってしまう。
都営浅草線で自動放送が不十分なのは、直通系統全体で自動放送について2つの方式が混在しているのが原因だ。都営では1991年に導入した5300形で自動放送装置を採用し、自動放送の使用を開始。5500形においても引き続き同じ方式で自動放送を行っている。対して、直通先の京成線と京急線、北総線では、一部の線区1)を除いて乗務員が携帯するタブレット端末を活用した方式をそれぞれ採用した2)。これら直通各社ではそれぞれの線区で車両の所属を問わずに全ての列車で自動放送が行えるようになった一方、自動放送では先行していたはずの浅草線だけが方式の違いで逆に取り残されてしまったのである。

京急電鉄 乗務員用タブレット端末
2022.2.14/**
それでは、都営浅草線は自動放送をどうするのか。2つの解決策が考えうる。すなわち、直通してくる他社の車両に都営浅草線内の案内内容を含んだ自動放送装置を搭載してもらうか、浅草線もタブレット端末を活用した自動放送を導入するか、である。
まずは前者だが、自動放送装置の搭載を直通各社にお願いしたとしても、確実に嫌がられることだろう。京成と京急、北総にとって、自動放送はタブレット端末の方式を導入した時点で終わった話だからである。その上で、どうしても自動放送装置が欲しいのであれば、その費用は都営が負担しなければならなくなる可能性が生じるものと思われるが、高価な自動放送装置や搭載・改造費用が各社の直通車両分だけ必要になることを考えると、これはなかなか厳しい選択肢となる。
そうすると、より現実的なのは都営もタブレット端末の方式を導入することになる。車両はすでにタブレット端末の受け入れ体制が整っているし、実は都営浅草線でも啓発放送を流す用としてすでにタブレット端末の活用が行われている。このタブレットに自動放送の内容が追加できれば、現在肉声での案内を行っている他社の車両においても、5500形と同様の自動放送を行うことができるものと考えられる。
いずれにせよ、出費が伴うという点で都営としては頭の痛い問題である。とはいえ、ここは首都東京のど真ん中を都営浅草線であり、案内の質も求められる。自動放送どうするの問題は、やはり遅かれ早かれなんとかしないといけない問題と思われる。
- 1)京成成田スカイアクセス線では、一部の車両(※)で自動放送装置を使用した自動放送を行っている。※京成3100形と3000形、3700形、都営5500形。自動放送装置を有しない京急車はタブレット端末による自動放送を行う。
- 2)タブレット端末による自動放送を行うにあたり、タブレットから出力された音声を車両側の放送回路に接続できるようにする小改造が各車両で実施されている。
- 東京都交通局
- タグはありません
関連記事
北総線 タブレット端末を活用した自動放送を導入
北総線で自動放送始まる。北総鉄道では、2月16日より列車内における自動放送の使用を開始した。対象となるのは、他社局線からの直通車両を含む北総線の全ての列車となっている。京成線と京急線で実施して...
京急線 タブレット端末を活用した自動放送を導入
京急線で自動放送始まる。京急電鉄では、2023年11月ダイヤ改正より列車内における自動放送の使用を開始した。対象となるのは、他社局線からの直通車両を含む京急線を走る全ての列車。日本語のほかに英語...
都営5500形 アクセス特急の運行開始
都営5500形のアクセス特急が運行開始。都営浅草線を始めとした四直各線では、2月26日にダイヤ改正を実施した。このダイヤ改正において都営車のアクセス特急が新規に設定され、5500形が京成成田...
都営5500形 行先表示に小変化
都営5500形、行先表示に小変化。2月上旬より、都営5500形の行先表示が改修されている。今回の行先表示の改修で最も大きな変化は、京成線で「京成」を冠する駅名についてその冠称を含めた正式名称を...
京成線 タブレット端末を活用した自動放送始まる
京成線に自動放送がやってきた。3月29日より、京成線で自動放送の使用が始まった。対象となるのは従来より自動放送を実施している成田スカイアクセス線のアクセス特急を除く京成本線や千葉・千原線など...
最新記事
2025.03.31
新京成線 新津田沼駅の0キロポスト
歴史の証人。まもなく終わりを迎える新京成線。そんな同線の歴史を開業から見守り続けてきたものがある。新津田沼駅に設置されている、0キロポストだ。新京成線の距離上の起点が、ここ新津田沼にあることを...
2025.03.28
京成3500形 3556編成など6両が営業運転終了
京成3500形に廃車が発生。新型車両3200形の導入に伴い、3500形に廃車が発生している。廃車となったのは、3556〜3553と3552、3551で、導入された3200形と同数となる6両...
- 京成
- タグはありません
2025.03.24
京成3200形 営業運転開始
まさに「令和の赤電」。2月22日、京成電鉄の新型車両3200形デビューした。2024年度導入分の6両が、3204+06-05という編成を組んで6両編成として運用に入っている。遅ればせながら...
2025.03.17
さようなら JR東日本E217系
さようなら、E217系。3月15日、JR各社を始めとした3月の全国的なダイヤ改正が実施された。列車や車両が新しく生まれ、または消えていく。そんな季節が今年もやってきた。JR東日本の横須賀・総武...
2025.03.12
京急600形・2100形 側面の行先表示器をLED化
京急600形と2100形、側面の行先表示器がLEDになる。京急600形と2100形で、側面の行先表示器のLED化が進んでいる。2024年10月下旬にLEDとなった602編成と607編成、2157...