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2024.12.31

2024年がまもなく終わろうとしている。というわけで、「2024年 四直界隈10大ニュース」と題して、この1年に都営浅草線を筆頭とした京成線、京急線、北総線のいわゆる四直界隈で起こったできごとを、当Webサイトで扱いきれなかったものも含めてまとめてみた。なお、ニュースの選定は、筆者の趣味や嗜好、独断、偏見に満ち溢れているが、異論はいっさい受け付けませんっ(ぉ

スカイライナーが京成本線経由で迂回運転(1月)

元日に発生した能登地方での大地震や、羽田空港での航空事故発生などで波乱の幕開けとなった2024年。1月12日には、早朝に成田湯川駅で停電が発生し、成田スカイアクセス線が印旛日本医大〜空港第2ビル間で運転を見合わせた。この影響で、スカイライナーは所定の運行ができなくなり、京成本線経由での迂回運転を実施した。スカイライナーが京成本線経由で走ったのは、2010年7月の成田スカイアクセス線開業から初めてとなる事態である。

迂回運転を行ったのは、京成上野5時40分発(1号)から6時40分(7号)の4本だった模様。この4本の列車については、1号と3号が京成上野停泊の編成、5号は宗吾車両基地からの回送車、7号は高砂検車区からの回送車がそれぞれ充当しており、いずれも早朝より車庫から出庫している状態だったため、運転せざるを得なくなったものとみられる。

このほか、アクセス特急成田空港行1本も、京成本線経由の快速特急成田空港行として迂回運転。いずれも京成本線の所定のダイヤに無理やりねじ込むような格好での運転になったものの、運休になるよりはマシであり、きわめて臨機応変な対応であった。

京成3000形と3700形が京急線三崎口に入線(2月)

2月10〜12日、京成3000形と3700形が京急線の三崎口まで入線した。京成側で京急1000形を使用した何かを実施していた模様で、京成車は高砂車庫に入庫した編成の代走として運用に入った。代走は1152H特急三崎口行から開始され、折返し青砥行、さらに京急久里浜行、その折返しとなる京成高砂行まで実施。10日:3848編成、11日:3056編成、12日:3001編成がそれぞれ代走した。

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京成3000形 3056編成
2024.2.11/八 広

▲京急車の代走で普通京急久里浜行として走る3050形。京成車の普通京急久里浜行が走ったのは今回が初めて

現在、京成車は平日夜間に京急久里浜までの定期運用があるものの、アクセス車の運用ということで通常は3100形が充当される。普段は京急線の末端部分まで乗り入れない3000形と3700形が連休中に三崎口まで連日走るという、そういった内容のイベントが実施されたかのようなできごとであった。

北総線でタブレット端末を活用した自動放送始まる(2月)

2月16日より、北総線で列車内の自動放送が始まった。京成や京急と同じくタブレット端末を活用した方式が採用され、乗務員が専用のアプリを操作して案内の音声を車内に流している。

自動放送は、日本語部分を中矢由紀氏、英語部分をダヴィーナ・ロビンソン氏がそれぞれ担当。また、同線ではイベントの案内を行うための自社で収録したスポット放送を実施するなど、直通他社局では見られない臨機応変な対応が特徴となっている。

京成3700形に機器更新車が登場(3月)

3月上旬、3700形に機器更新車が登場した。12月より宗吾車両基地に入場していた3788編成が制御装置などを更新。3100形に準じていると思われるハイブリッドSiC-VVVFインバーターを搭載して営業運転に入っている。多く鉄道事業者で実施されているVVVFインバーター装置の換装だが、京成では試験的に実施されたものを除いて初めての事例である。

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京成3700形 3758編成
2024.2.11/大佐倉〜京成酒々井

▲2023年度より機器更新が始まった京成3700形。2023年度の3788編成に続き、写真の3758編成もここのところ機器更新と思われる動きがある模様

さらに、今月に入って、宗吾車両基地で同様の更新工事が行われていると思しき3758編成の姿が目撃されており、3788編成に続く機器更新車第2号が登場しそうな雰囲気。今後も、1年に1編成くらいのペースで機器更新が続いていきそうな感じである。

京成3000形が新京成線に入線(4月)

4月11日の終電後、京成3000形が新京成線新鎌ヶ谷まで入線した。入線したのは3002編成で、同編成のみが搭載している検測機器を使用した上で走行していたことから、新京成線内の架線検測を目的としたものだったとみられる。新京成線は京成千葉線と直通運転を行っているが、新京成車が京成線に入ることはあってもその逆はない。3000形は、新京成線への初入線を果たした。

新京成は2022年9月にも京成の完全子会社化、さらに2025年4月には吸収合併される予定となっており、経営上の動きが活発化している。スケールメリットを活かした経営効率化を行う中で、保線機械や検測機器の共用化が進められていても不思議ではく、今回の3000形の新京成入線もこうした動きのひとつと捉えられよう。だとすれば、3000形の新京成線入線は今後も定期的に見られるものと思われ、「大京成時代」ならではの新しい光景になりそうだ。

京急大師線で大開帳奉修ヘッドマーク(5月)

京急電鉄では、5月1〜31日に川崎大師平間寺で行われた大開帳奉修に合わせて、大師線を中心に走る600形3編成にヘッドマークの掲出を行った。川崎大師の本尊である弘法大師のご開帳は、10年に一度の吉例行事。したがって、大開帳奉修のヘッドマーク掲出も、10年に一度しかお目にかかれないめでたい行事である。

10年前に1500形で実施したラッピング電車「大師線赤札号」に比べると派手さはないものの、川崎大師の象徴であるだるま柄のヘッドマークは、川崎大師への参拝輸送からスタートした京急大師線を走る電車の証。なお、同様のことが実施されるとすれば、当然ながら10年後のことなる。

新京成電鉄、復刻塗装を連発(7月〜)
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新京成N800形 N838編成
2024.12.27/京成幕張本郷

▲7年ぶりにオリジナルのストライプカラーが復活したN800形N838編成。さらに、8800形8808編成と8813編成も復刻塗装となった

新京成電鉄では、7月中旬より N800形N838編成で、9月下旬より8800形8808編成で、11月下旬より同8808編成で復刻塗装を実施している。 N838編成と8808編成がそれぞれ登場時のオリジナル塗装、8813編成が京成線直通のストライプデザインとなっている。2014年よりジェントルピンク塗装への切り替えを進めてきた新京成で、復刻塗装が一挙に3編成も登場する前代未聞の事態だ。

前述のとおり、新京成は京成に合併され、新京成線は京成の松戸線となることが明らかになっている。復刻塗装の連発は、もちろんこのためであろう。NHKによれば、新京成車は順次、京成のカラーに塗り替えられる予定という。したがって、復刻塗装を行うのも今がラストチャンス。会社解散を目前に控えた新京成の粋な計らいか、それとも意地か。

モーニングライナーとイブニングライナーの料金を改定(11月)

11月23日、京成電鉄は同日に実施されたダイヤ改正に合わせる格好で、モーニングライナーとイブニングライナーの特急料金を改定した。最も大きく変わったのは、これまでの均一料金から距離に応じて料金の変わる距離制に移行したこと。新たな料金は5つに区分され、250〜950円となった。

モーニングライナーとイブニングライナーは、1980年代に利用が低迷していたスカイライナーの一部列車を活用する格好で登場。当時、全国で広がりつつあった国鉄のライナー列車のような通勤・通学時間帯の着席保証列車として運転された。列車の性格から均一料金を貫いていたが、ここにきて大きな転換点を迎えた。

京急1000形1890番台が都営浅草線に初入線(11月)
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京成3500形 5504編成・京急1000形 1893編成
2024.11.30/馬込車両検修場

▲「都営フェスタ2024 in浅草線」開催に伴い、馬込車両検修場に入線した1000形1890番台。同じく普段は都営浅草線に乗り入れない京成3500形と、初の顔合わせが実現

11月29日、京急1000形1890番台が都営浅草線に初入線した。翌30日に馬込車両検修場で開催された「都営フェスタ2024 in浅草線」での展示のためで、栄えある入線第1号は1893編成となった。1893編成は、品川方(押上方)に1801編成を連結した8両編成として入線。通常の運用範囲である品川の壁を越え、浅草橋→西馬込と走って馬込車両検修場に入った。

西馬込ではホームドア動作試験のようなことが行われるなど、今後に期待をもたせる内容となっているが、今のところその予定はなさそう。四直では1000形1890番台だけが装備するL/C座席を直通先で堪能できる日はやってくるだろうか。

京成3600形3688編成が全検出場(12月)

12月5日、京成3600形3688編成が試運転を実施し、全検出場した。同編成は3600形で唯一残る界磁チョッパ制御の編成で、2020年よりファイヤーオレンジのリバイバルカラーをまとっている。新型車両3200形の導入を目前に控える中で、その動向に注目が集まっていたが、まだまだ元気な姿が見られそうで一安心といったところ。

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京成3600形 3688編成
2024.2.7/国府台

▲2020年7月よりファイヤーオレンジのリバイバルカラーとなっている3600形3688編成。今年度分の3200形導入に伴う廃車候補の筆頭だったが、検査を通過したことでひとまず廃車は回避される公算が大となった

とはいえ、もとはというと3688編成は新型列車無線関連工事の際の予備車。列車無線の更新後はそのまま廃車になる予定だったものと思われ、だからこそリバイバルカラーとなっていたはずだったのである。脱線事故などの紆余曲折があったものの、新型列車無線に対応した上に、もう一度検査を通過をするとは驚くばかりである。

◆ ◆ ◆

以上、2024年を振り返ってみた。特に京急で車両の動きがなかったことから、2023年に続いて比較的まったりとした1年だった印象である。他方、スカイライナーは2019年を超える数字を叩き出しているなど、一時期は世界を支配した新型コロナウイルス感染症の影響はほとんど過去のものになりつつある。コロナ禍後の新しい世界は確実にやってきている。

2025年は、特に京成側で大きな動きが控えている。2月には新型車両3200形がデビュー、4月には新京成の吸収合併が行われる予定で、楽しみなことは尽きない。

2025年もいい年になりますよう。

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