京成成田スカイアクセス線 祝・開業15周年と将来展望
2025.07.17
成田スカイアクセス線、祝・開業15周年。

京成AE形 AE3編成
2021.11.5/白井〜小室
7月17日、京成成田スカイアクセス線は開業から15周年を迎えた。同線を走るスカイライナーは、2020年より新型コロナウイルス感染症の世界的流行により利用が一時的に大きく落ち込んだものの、現在は政府のインバウンド(訪日外国人旅行者)回復戦略や歴史的な円安の影響もあって絶好調。2024年度におけるスカイライナーの利用者数は過去最高となる840万人となり、2014年度(330万人)と比べると10年間で約2.6倍の伸びを見せている。
そんな成田スカイアクセス線の課題は、ズバリ輸送力の増強だ。国や千葉県、成田空港会社などが推進している成田空港の更なる機能強化により、2010年度において20万回だった成田空港の航空機の年間発着回数は、2028年度には30万回を超え、2040年代後半には50万回に達すると予測されている。空港利用者における鉄道利用者数は、2035年度には2023年度の約1.6倍、2042年度には約1.8倍となる見込みで、空港へのアクセスを担う成田スカイアクセス線やそこを走るスカイライナーについても、輸送力の増強は避けて通れない道となっている。
こうした中、京成は5月に2025年度〜2027年度に適用される中期経営計画「D2プラン」を公表した1)。この中において、京成はグループとして成田空港の機能強化を支えるための空港アクセス強化を推進していく考えを示している。キーワードとなるのは、「押上〜成田空港間有料特急」、「次期スカイライナー車両」、「成田スカイアクセス線完全複線化」の3つ。「D2プラン」や現在までに出てきている情報を整理しながら、これらのキーワードを軸に同線の将来を展望してみよう。

京成電鉄 空港アクセス強化の推進
押上〜成田空港間有料特急
まずは、押上〜成田空港間有料特急(以下、押上線直通有料特急)について展望してみよう。「D2プラン」で初めて明らかにされたもので、成田空港B・C滑走路供用開始などに伴う利用者増に対応するための輸送力増強とサービス向上を図るべく、2028年度に運行開始を予定しているという。従来のスカイライナーが発着する京成上野ではなく押上発着なのは、京成グループが運行する路線バスや運営するホテルなどとのエリア価値向上や、各事業へのシナジー効果が期待できるためと説明している。いずれにしても、京成が成田空港輸送として提供するスカイライナー、アクセス特急、京成本線経由一般列車に、新たな選択肢が加わる格好だ。

京成電鉄 新型有料特急イメージ
現時点で車両の設計に着手しているとのことで、イメージも公表されている。地下鉄規格の押上に乗り入れるため、前面は貫通扉付き。AE形と同じく先頭車にパンタグラフを搭載していることから、160km/hの高速運転にも対応している?? なお、6月27日に公表された有価証券報告書2)によれば、この新しい車両は56両の導入を予定しているとのことで、8両編成7本の陣容になるものと思われる。これらはスカイライナーとは別系統の有料特急用車両となることから純増になるとみられるにしても、一挙56両とはなかなかに攻めている。
気になるのは、この新しい有料特急がどの程度の本数運行されるかどうかであろう。まず鉄道施設について言えば、この列車が走り出す2028年度までに成田スカイアクセス線が大きく変わる(改良される)とも思えないので、ほぼほぼ現在の設備で運行開始を迎える可能性が高い。ということは、まずは現在の余力でもってこの列車を走らせることになる。
成田スカイアクセス線の現行の設備は、スカイライナー毎時3本・一般列車毎時3本という当初の運行計画によるものである。成田湯川から先の単線区間についても、根古屋信号所を適切な位置に設けることによって、スカイライナーと一般列車がそれぞれ20分間隔で運転することを可能としている。
これに対して、現状ではスカイライナーが毎時3本(20分間隔)、アクセス特急が毎時1.5本(40分間隔)の運転となっている。すなわち、ダイヤ上はアクセス特急のスジの裏にあたる40分毎のところが空いている状況で、現行ダイヤをベースとするならば、押上線直通有料特急はこの部分を活用するのではないかという予想が立てられる。そうすると、1日の運転本数もアクセス特急と同程度になるものと考えられ、新造される予定の車両数がアクセス特急で使われる3100形と同数であることにもなんとなく繋がってくる。

京成3100形 3151編成
2023.12.19/大 町
他方、運行区間も気になるところ。現状で明らかになっているのは押上〜成田空港を運行するということだけだが、実際に押上発着となるのかどうか。確かに京成の路線としては押上までだが、線路はその先、都営浅草線や京急線に繋がっている。押上の数駅先には東京を代表する観光地・浅草が、さらに走れば繁華街・銀座、東京のもう一つの国際空港である羽田空港もある。こうした状況からすれば、押上で折返すのはあまりにもったいなさすぎる。仮に押上発着の列車からスタートしたとしても、将来的にはぜひとも押上から先への運転の実現を望みたいところだ。
(つづく)
- 1)京成グループ中期経営計画「D2プラン」 - 2025年5月21日公表。
- 2)有価証券報告書 - 第182期(2024年4月1日〜2025年3月31日)
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