宇都宮ライトレール 2025年夏
2025.08.26
6月末に宇都宮に行く機会があったので、話題の路線、宇都宮ライトレールに乗ってみた。
宇都宮ライトレールHU300形 HU312号車
2025.6.29/宇都宮駅東口〜東宿郷
宇都宮ライトレール 路線図
75年ぶりの新設路面電車
人口減少下の時代に突入した本邦にあって、国内の鉄道事情と言えばやれ減便だの廃線だの何かと暗い話題が先行している今日このごろ。そんな状況で、明るい光を放っているのが2023年8月26日に開業した宇都宮ライトレールだ。国内の新設の路面電車としては75年ぶりに開業すると、利用は順調に推移。開業初年度から黒字化を達成したり、2025年8月19日には利用者数の累計が想定より半年も早く1000万人に達したりするなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの路線なのである。
そんな宇都宮ライトレールに、6月末のある日、乗ってみた。宇都宮駅東口から終点の芳賀・高根沢工業団地まで単純に1往復して、感じたことなどをば。
変化に富む沿線風景
まず、全線を乗り通してみて感じたのは、沿線の多彩な風景である。総延長14.6kmの短い路線ながら、さまざまな表情を見せてくれる。
宇都宮駅東口を出発すると、まずは宇都宮の市街地。鬼怒通りを一般の交通とともに東進していく、純然たる路面電車区間である。県都・宇都宮の市街地だけあって道路は混雑しているが、ライトレールにはお構いなしである。信号がそれなりに多いものの、意外とスムーズに走るので、ストレスはほとんど感じない。むしろ、買い物渋滞の一般車列を電車がぐんぐんと追い抜いていくのは気持ちよさすらある。
宇都宮ライトレールHU300形 HU312号車
2025.6.29/東宿郷
宇都宮ライトレール 車内からの風景
2025.6.29/**
車両基地のある平石を過ぎると車窓は一変、田園風景に突入する。併用軌道はいったん終了し、ここから清陵高校前までは専用軌道となる。特に、鬼怒川を渡河する箇所は高架橋となっており、眼下には青々とした美しい田んぼが広がる。宇都宮ライトレールの車窓的には間違いなくハイライトとなる区間であろう。その先の、台地に上がっていくために発生する激しいアップダウンを伴うダイナミックな線形も印象的だ。
清陵高校前電停を過ぎると、電車は宇都宮清原工業団地へと入っていく。同工業団地内では道路に対して軌道を片側に寄せて敷設するサイドリザベーション区間となっていて、どことなくヨーロッパのトラムっぽさを感じさせる。緩急接続に対応したグリーンスタジアム前電停の構造も興味深い。
続いて、電車は1990年代後半から2010年代にかけて開発されたニュータウン、ゆいの杜へ。軌道は再び道路の中央を走る、路面電車区間となる。しかし、ここはただの路面電車区間ではない。郊外的なニュータウンの中を路面電車が走るというのは新鮮そのもの。特に、いかにも車社会を象徴するようなロードサイド店の並ぶ県道バイパスの中央を路面電車が走るのは革命的なできごとであろう。
電車そのまま工業団地に入っていき、終点の芳賀・高根沢工業団地に至る。宇都宮駅東口から46分、オンタイムで到着。定時運行性もばっちりですばらしい。なお、ここまでの運賃は400円である。
宇都宮ライトレールHU300形 HU304号車
2025.6.29/かしの森公園前〜芳賀・高根沢工業団地
日曜昼下がりの利用状況
乗車したのが日曜日の昼下がりということもあり、利用の中心は宇都宮駅からの市街地区間であった。驚いたのは、宇都宮駅東口出発時点でそこそこの混雑を見せていたこと。宇都宮ライトレールでは土休日ダイヤの日中時間帯も全線で12分間隔という高頻度運転を実現しているが、それにもかかわらずである。利用層は老若男女まんべんなくといった感じだが、自動車での移動を選びがちな若い家族が利用してくれているのは部外者ながらに嬉しくなる。
宇都宮ライトレールHU300形 HU311号車
2025.6.29/宇都宮駅東口
一方、平石以東の利用は比較的少なく、車内はガラガラとまではいかないものの、空席が目立つ状態となった。それならば、半数の列車を平石折返しとし、以西を10分間隔、以東を20分間隔などとするのもアリなのでは・・・と思ったが、ここらへんは全線にわたって利便性が得られるようにフリークエントサービスを提供しているライトレール側の企業努力なのだろう。
終点の芳賀・高根沢工業団地は工業団地のど真ん中。さすがにここまで乗車するのは私のような物好きだけ・・・と思いきや、私のほかにもとりあえず終点まで乗ってみようという人がちらほら見られた。開業から2年経った今でも、当路線に対する関心の高さがうかがうことができた。
当然、工業団地が稼働する平日は利用状況が異なるものである。平日朝の通勤ラッシュ時間帯には一部の電停を通過する快速列車も運転されるので、機会があればこちらの様子も見に行くことができればと思う。
(つづく)
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